130 / 223
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
4
しおりを挟む
「まあ、やっぱりそうだったわ。あまりに場違いだから、見間違えたかと目を疑ったわ。どうして貴女がこのような場にいるのです? 前国王の後宮はとっくに散じたと聞いているわ」
後半は口元を扇で覆って、アシュレイにだけ聞こえるように耳元で囁く。
リックは”継母”の言葉に、相手の身分を察したらしい。すぐに一歩身を引いた。
今日は親交のある国の要人や貴族が招かれている。
セレンティアの王妃であるキューベルルが居合わせても不思議はない。
「こちらへは、お父様とご一緒に?」
「いいえ、陛下はご多忙でいらっしゃるから、私とシュナイゼルで参りましたのよ。ちょうど今アラウァリア国王にご挨拶申し上げていたの。シュナイゼルは新国王の覚えが良いようで、まだ話し込んでいるのよ」
ほほほ、とキューベルルは声高らかに笑う。
シュナイゼルはキューベルルの長男で、アシュレイの腹違いの弟だ。
「皆様ご健在のようで、ようございました。では、私はこちらの方とお話がありますので、これで……」
「まあ、相変わらず無作法だこと。お待ちなさいな」
キューベルルはアシュレイの行く手を阻むように立ちはだかった。
「私の質問が聞こえなかったのかしら? 先王の妻であった貴女がなぜここにいるかと聞いているのよ。夫が亡くなったのに、王城に居座るなんて、図々しい行いよ。育ちを疑われてしまうわ」
アラウァリア国王の崩御の報せは、内戦収束からほどなく各地へ広まった。
それでもセレンティアからは何の音沙汰もなかったし、当然、アシュレイからも便りを送らなかった。
「事情があり、今はこちらでお世話になっております。お継母様がなさるような心配はありません」
アシュレイはキューベルルの目を避けるようにして、横をすり抜けようとした。
アシュレイの身の振りは、いずれキューベルルも知るところになるだろう。
だが、それをこの場で、弁明の材料にするわけにもいかない。
「お待ちなさいと言ったでしょう。遠路はるばる、祝辞に訪れた賓客を蔑ろにして良いと思っているの? 貴女はもう国王の妻でも王女でもないのよ。立場を弁えなさい」
キューベルルは手を伸ばして、アシュレイの行く手を再び阻んだ。
「……お継母様はいったい、私に何をお望みなのです? 他国に嫁に出した娘など、他人も同然でしょう」
腕を掴まれて、アシュレイはキューベルルをキッと睨んだ。
アラウァリアの客人には違いない。だが、もう今までのように言いなりになる気もない。
キューベルルはアシュレイの言にカチンときたらしく、扇を持つ手に力が籠った。
「久しぶりの再会だと言うのに、憎らしい女ね。萎らしくしていれば、王女の身分に戻してやることも考えてあげるのに」
「戻してやるですって?」
ぞっと怖気が走って、アシュレイは肩を震わせた。
後半は口元を扇で覆って、アシュレイにだけ聞こえるように耳元で囁く。
リックは”継母”の言葉に、相手の身分を察したらしい。すぐに一歩身を引いた。
今日は親交のある国の要人や貴族が招かれている。
セレンティアの王妃であるキューベルルが居合わせても不思議はない。
「こちらへは、お父様とご一緒に?」
「いいえ、陛下はご多忙でいらっしゃるから、私とシュナイゼルで参りましたのよ。ちょうど今アラウァリア国王にご挨拶申し上げていたの。シュナイゼルは新国王の覚えが良いようで、まだ話し込んでいるのよ」
ほほほ、とキューベルルは声高らかに笑う。
シュナイゼルはキューベルルの長男で、アシュレイの腹違いの弟だ。
「皆様ご健在のようで、ようございました。では、私はこちらの方とお話がありますので、これで……」
「まあ、相変わらず無作法だこと。お待ちなさいな」
キューベルルはアシュレイの行く手を阻むように立ちはだかった。
「私の質問が聞こえなかったのかしら? 先王の妻であった貴女がなぜここにいるかと聞いているのよ。夫が亡くなったのに、王城に居座るなんて、図々しい行いよ。育ちを疑われてしまうわ」
アラウァリア国王の崩御の報せは、内戦収束からほどなく各地へ広まった。
それでもセレンティアからは何の音沙汰もなかったし、当然、アシュレイからも便りを送らなかった。
「事情があり、今はこちらでお世話になっております。お継母様がなさるような心配はありません」
アシュレイはキューベルルの目を避けるようにして、横をすり抜けようとした。
アシュレイの身の振りは、いずれキューベルルも知るところになるだろう。
だが、それをこの場で、弁明の材料にするわけにもいかない。
「お待ちなさいと言ったでしょう。遠路はるばる、祝辞に訪れた賓客を蔑ろにして良いと思っているの? 貴女はもう国王の妻でも王女でもないのよ。立場を弁えなさい」
キューベルルは手を伸ばして、アシュレイの行く手を再び阻んだ。
「……お継母様はいったい、私に何をお望みなのです? 他国に嫁に出した娘など、他人も同然でしょう」
腕を掴まれて、アシュレイはキューベルルをキッと睨んだ。
アラウァリアの客人には違いない。だが、もう今までのように言いなりになる気もない。
キューベルルはアシュレイの言にカチンときたらしく、扇を持つ手に力が籠った。
「久しぶりの再会だと言うのに、憎らしい女ね。萎らしくしていれば、王女の身分に戻してやることも考えてあげるのに」
「戻してやるですって?」
ぞっと怖気が走って、アシュレイは肩を震わせた。
489
あなたにおすすめの小説
〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ
ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」
ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。
「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」
何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。
都合のいい女は本日で卒業。
今後は、余暇を楽しむとしましょう。
吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!
ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。
相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。
結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。
現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう…
その時に前世の記憶を取り戻すのだった…
「悪役令嬢の兄の婚約者って…」
なんとも微妙なポジション。
しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。
前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。
外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。
もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。
そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは…
どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。
カクヨムでも同時連載してます。
よろしくお願いします。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる