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披露宴会場で……
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「まあ、お姉様ったら! お口がお上手ですこと!」
カリアナは大仰な身振りで、手の甲を口元にかざす。
キューべルルと比べたら可愛いものだが、アルダシールとの距離の詰め方が不愉快だ。
媚びるような仕草も鼻についた。
半分は嫉妬から来るものだから、公私混同は良くないと分かっている。
でも、面白くないので、できるところで牽制しておく。
「お姉様の伴侶であられるのだから、陛下とわたくしも義兄妹。どうぞカリアナとお呼び捨てくださいね。今後も末長くよろしくお願いします……」
「いいや。それは結構。悪いが、私は良く知りもしない連中と馴れ合うつもりはない。今まで通り、国家の交流はシュナイゼル殿下を通す。では、挨拶はこのくらいにして、私たちは失礼する。アシュレイ」
「はい。シュナイゼル、コリーヌ、またね」
アルダシールは強引に話を終わらせると、アシュレイの背に手を回し、会場を出ようと促した。
「お姉様、そんな。同じ妹なのに、あんまりですわ」
手ひどい扱いを受けているのに、表面上は甘ったれた猫撫で声で食い下がるカリアナは逆に不気味だ。
内心では腑が煮え繰り返るほどの屈辱を感じているだろうに。
アシュレイはアルダシールに促されるまま、カリアナを振り返らずに会場を後にした。
「ごめんなさい。私の身内が、ことごとく……」
「アシュレイは悪くない。用も済んだし、もういいだろう」
用とは、シュナイゼルたちへの祝辞だろう。
確かにそれは叶ったが、逆を言えばあの会場でしたのはそれだけだ。
アルダシールは無駄を省くプロだが、徹底した姿勢に舌を巻く。
しかし、あんなに居心地の悪い場所なら長居したくなくて当然だ。
原因はカリアナだし、アシュレイに異論を唱える権利はない。
まだ祝宴が開催されて1時間も経っておらず、大広間を出ると、控えに立っていたマクシムとセレンティアの侍従が慌てて飛んできた。
「いかがなさいました? ご気分でも?」
「広間は人が多すぎて疲れた。部屋で食事を取りたいのだが」
「かしこまりました。すぐに用意いたします」
「ああ、頼む」
アルダシールはマクシムに言付けを頼むと、アシュレイの手を引いてさっさと自室へと戻った。
程なくして部屋に運んでもらった食事を取りながら、ゆったりと過ごしていると、あっという間に時計の短針は20時に接近した。
間もなくキャヴスとの約束の時間だ。
アルダシールは先ほどから言葉数が少なく、あまり機嫌が良くないことが窺える。
”気持ちはわかる”と言ってくれていたが、やっぱり抵抗があるのだろうか。
自分で言うのも何だが、アルダシールはとてもアシュレイを愛してくれているし、独占欲が強い。
他の男性にアシュレイが会いに行く、その構図に抵抗があるのかもしれない。
「疲れた?」
「いや……そうではないのだが」
歯切れが悪いのも珍しい。
アシュレイはアルダシールに身体を寄せると、そっと手を握った。
心配しなくても、アシュレイの心は揺るぎなくアルダシールのものだ。
キャヴスに対して持っているのは、身内に対する親愛の類なのだ。
分かってくれたらいいなと、アルダシールの胸に額をつける。
「……すまない」
アシュレイの内心が伝わったのか。
定かではないが、アルダシールはアシュレイの手を取り、指の付け根を優しく撫でた。
ただ、謝られるのもどこか違う。
不思議に思って顔を上げると、たまたまのタイミングか。
ふっと目を逸らされた気がした。
カリアナは大仰な身振りで、手の甲を口元にかざす。
キューべルルと比べたら可愛いものだが、アルダシールとの距離の詰め方が不愉快だ。
媚びるような仕草も鼻についた。
半分は嫉妬から来るものだから、公私混同は良くないと分かっている。
でも、面白くないので、できるところで牽制しておく。
「お姉様の伴侶であられるのだから、陛下とわたくしも義兄妹。どうぞカリアナとお呼び捨てくださいね。今後も末長くよろしくお願いします……」
「いいや。それは結構。悪いが、私は良く知りもしない連中と馴れ合うつもりはない。今まで通り、国家の交流はシュナイゼル殿下を通す。では、挨拶はこのくらいにして、私たちは失礼する。アシュレイ」
「はい。シュナイゼル、コリーヌ、またね」
アルダシールは強引に話を終わらせると、アシュレイの背に手を回し、会場を出ようと促した。
「お姉様、そんな。同じ妹なのに、あんまりですわ」
手ひどい扱いを受けているのに、表面上は甘ったれた猫撫で声で食い下がるカリアナは逆に不気味だ。
内心では腑が煮え繰り返るほどの屈辱を感じているだろうに。
アシュレイはアルダシールに促されるまま、カリアナを振り返らずに会場を後にした。
「ごめんなさい。私の身内が、ことごとく……」
「アシュレイは悪くない。用も済んだし、もういいだろう」
用とは、シュナイゼルたちへの祝辞だろう。
確かにそれは叶ったが、逆を言えばあの会場でしたのはそれだけだ。
アルダシールは無駄を省くプロだが、徹底した姿勢に舌を巻く。
しかし、あんなに居心地の悪い場所なら長居したくなくて当然だ。
原因はカリアナだし、アシュレイに異論を唱える権利はない。
まだ祝宴が開催されて1時間も経っておらず、大広間を出ると、控えに立っていたマクシムとセレンティアの侍従が慌てて飛んできた。
「いかがなさいました? ご気分でも?」
「広間は人が多すぎて疲れた。部屋で食事を取りたいのだが」
「かしこまりました。すぐに用意いたします」
「ああ、頼む」
アルダシールはマクシムに言付けを頼むと、アシュレイの手を引いてさっさと自室へと戻った。
程なくして部屋に運んでもらった食事を取りながら、ゆったりと過ごしていると、あっという間に時計の短針は20時に接近した。
間もなくキャヴスとの約束の時間だ。
アルダシールは先ほどから言葉数が少なく、あまり機嫌が良くないことが窺える。
”気持ちはわかる”と言ってくれていたが、やっぱり抵抗があるのだろうか。
自分で言うのも何だが、アルダシールはとてもアシュレイを愛してくれているし、独占欲が強い。
他の男性にアシュレイが会いに行く、その構図に抵抗があるのかもしれない。
「疲れた?」
「いや……そうではないのだが」
歯切れが悪いのも珍しい。
アシュレイはアルダシールに身体を寄せると、そっと手を握った。
心配しなくても、アシュレイの心は揺るぎなくアルダシールのものだ。
キャヴスに対して持っているのは、身内に対する親愛の類なのだ。
分かってくれたらいいなと、アルダシールの胸に額をつける。
「……すまない」
アシュレイの内心が伝わったのか。
定かではないが、アルダシールはアシュレイの手を取り、指の付け根を優しく撫でた。
ただ、謝られるのもどこか違う。
不思議に思って顔を上げると、たまたまのタイミングか。
ふっと目を逸らされた気がした。
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