王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら

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密会

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 アルダシールはサッと部屋を出て、隣室に控えるマクシムに声をかけた。

(何か変な気がするんだけど……気にしすぎかしら……?)

 はっきりしないが、どうにも引っかかる態度だ。

 一人で首を傾げていると、アルダシールはすぐにマクシムを伴って戻った。

 だがーー

「すまない、俺は用事ができた。マクシムと2人で行ってくれ。くれぐれも、一人にはなるなよ」

「えっ?」

 アルダシールはドアの外から、ほとんど顔も見せずに踵を返して去っていった。

 理由を問う間もない。

「アシュレイ様、お気になさらず。アルダシール様はご多忙な方ですから。力不足ではありますが、私に護衛させてください」

「いえ、力不足なんて、謙遜しなくても……」

 マクシムは3年前の内戦で銃弾を受け酷い傷を負ったが、今ではすっかり回復している。

 剣技のほうは最盛期には劣るそうだが、並の剣士よりはずっと卓越した腕前だ。

 それにしても、アラウァリアならともかく、この国セレンティアでどんな用事があるのだろう?

 釈然としないが、そろそろ向かわないと約束の時間に間に合わない。

 疑問は飲み込んで、アシュレイはマクシムと共に、キャヴスと約束した時計台の元へと足を向ける。

 途中で数人の給仕やメイドたちとすれ違ったが、まだ祝宴は続いているため、人影はまばらだ。

 階段を降り、主塔へ続く廊下を途中で右に逸れて、中庭に出る。

 そこから教会の屋根と、背後に聳える時計台が見えた。

「あそこが、時計台ですか? 随分と薄暗い場所ですね」

「人目につきたくないからね。道を抜けてしまえばそれこそ時計台の下は遮るものもないんだけど」

 中庭から時計台への近道は、草こそ刈られて整備されているものの、石畳までは敷かれていない。

 月明かりも左右に茂る木立に遮られて、足元も覚束ない。

「こんなことなら灯りを借りてくるべきでしたね」

「でも灯りを持ってうろついてたら、目立ってしまうわ」

「アシュレイ様は、夜闇が怖くはーーいえ、愚問でしたね」

 マクシムは何かを言いかけて、やめた。

 言わんとした意味が伝わって、アシュレイはふっと微笑する。

 アシュレイは……多分、後天的な意味で夜闇に恐怖を感じない。

 幼い頃ににどうだったかは今では朧だが、千春の記憶が蘇ってからは少なくとも怖くなくなった。

 自衛官には夜間を想定した訓練もあったし、どんな環境でも人間は適応できる。

 精霊や幽霊の類への恐怖は、科学の知識で打ち消せた。

 それにそんなものを恐れていたら、今ここにアシュレイはいなかっただろう。

「可愛げがないわよね。でも、一人だったら心細かったかもね?」

 見えないだろうけれど、アシュレイはマクシムにイタズラっぽく微笑みかけた。
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