王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら

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ランドットにて

諍い 1

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 ローネッドが手を挙げて場を鎮める仕草をする。

 しかしその時、分厚い扉がドン、と大きく叩かれる音が響いた。

「おい、エステルが男を連れ帰ったってのは本当か!?」

 勢いよく開いた扉に、慌てて周囲の野次馬が避ける。

 現れたのは、やたらと声の大きい男だ。

「シルラン、危ないだろう」

「うるせえ、これしきでギャァギャア喚くな。おや、どうやら本当らしいな」

 ローネッドやトルファソがそうであるように、シルランと呼ばれた男は筋骨逞しく、野生味に溢れる外見だった。

 頭髪は茶色の縮れっ毛で、揉み上げから顎まで髭が覆っている。

 濃い眉毛は太く、ぎょろついた三白眼にやや離れ気味の眉は、お世辞にも目付きが良いとは言えない。

 しかしこの部屋中で誰よりも巨大な体躯を持っていて、横柄な態度はそれなりの位置付けを窺わせる。

 シルランは室内をぐるりと見回し、アルダシールに焦点を合わせると、ズカズカと接近する。

「お前か。エステルを狙ってるってぇ、よそモンはよ。悪いこた言わねぇ。怪我しねえうちに、さっさと帰りな。ここはお前みたいなお上品な野郎が来る場所じゃねえ」

 シルランはアルダシールの座る長椅子の正面まで迫ると、見下すような態度で言い放った。

 威嚇のつもりか。

 アルダシールは座ったままシルランを見上げる。

「これ、よさぬか、シルラン。異国からの客人だ。怯えさせてどうする」

 ニヤリと、口元を歪めて立ち上がったのはトルファソだ。

 なるほど、笑い方がそっくりなので、2人は親子だとすぐにわかる。

 シルランの名はエステルから聞いていた。

 今回の競い合いにおける最も有力な候補者だと。

 エステルを妻に得て、次の実権を握ろうと目論んでいる。

 無論、現代表の娘と結婚したからと言って代表の座を世襲できると決まってはいない。

 だが、エステルを得れば限りなくその座に近づける。

 エステルはそれほどに特別な女性だ。

「親父は黙っててくれ。これしきでビビるような男じゃあとても競い合いには勝てねえよ。しかしな、エステル。俺は傷ついたぜ。いよいよ明日にはお前を妻にできると楽しみにしていたってのに、水を差すような真似をして」

 シルランは続けて威圧するように上から見下ろしたが、フイとその矛先をエステルに向けた。

「気の強い女は嫌いじゃねえが、もう少しいい顔をしておいたほうが自分のためだ。なあ、未来の旦那だぞ」

「掟なら従うしかないけれど、お人形とは違うもの。私にも意思があるのよ」

 エステルはさりげなく、アルダシールの右腕に自分の腕を絡ませて主張した。
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