王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら

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ランドットにて

諍い 2

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 王座についてからここ数年、アルダシールに対してこのように横柄な態度を取る者はいなかった。

 久しぶりの待遇に懐かしさを感じると同時に、周囲の反応には落胆した。

 あれほど威勢のよかった野次馬たちも、シルランの登場とともにすっかり萎縮して鳴りを潜めている。

 ローネッドでさえやれやれと、額に手を当てて首を左右に振るのみだ。

 つまりは、この地域において常にこのような力関係が存在していると考えられる。

 ここでは物質的な力が、権力の比重を占めている。

(ふむ。代表を選出するようになり、平和と公正を目指して住民が統治する集団だと聞いていたが、まだ未成熟なようだ)

「大方そのお綺麗なツラに誑かされたんだろ。男は顔じゃねえ、腕っぷしだ。見てろよ、明日にはその澄まし面、見れねえくらいボコボコにしてやるから。すりゃあエステル、お前のめでたい頭も正気に戻るだろうよ。素直な人形でいたほうがよっぽど幸せになれるって」

 シルランは挑発するように、鼻がスレスレに迫るまでぐいっと顔をアルダシールに近づけた。

「わたしがおめでたいって?」

 むさ苦しい顔面を至近距離で見せつけられて、不愉快極まりない。

 だが、それ以上にエステルに対する侮辱が癇に障った。

「妻に望む女性を人形扱いするとは、貴殿は脳まで筋肉でできているのかな?」

 アルダシールは見事な体幹で、頭部を全く動かさずにスーッと立ち上がる。

「う、な、なにっ!?」

 鼻先が触れんばかりに接近していたから、慌てたのはシルランだ。

 避けようとバランスを崩し、仰け反ってたたらを踏んだ。

 アルダシールも長身だ。

 身長差は、およそ拳一つ分。

 丸太のような腕に太さでは敵わないが、アルダシールも膂力には自身がある。

 国王たる身ではあるが、有事のために常に鍛錬は欠かしていない。

 何よりもアルダシールには身に付いた威厳と覇気がある。

 隠していたものをチラつかせれば、場の空気が凍りつく。

 アルダシールの鋭い眼光と立ち姿にシルランはたじろいだ。

「貴様のような愚昧に、エステル姫は身に余る。天地神明にかけて、彼女は俺が守る」

「は、く、くそ……何だって? ぐまい?」

 気圧されしたのが許せず、シルランはわなわなと唇を戦慄かせた。

 しかし、残念ながら言葉の意味は通じていないようだ。

「侮辱されたのだ。怒れ」

 パクパクと口を動かしてトルファソが、小声で助言する。

「侮辱、だと? ……くっそう、馬鹿にしやがって、この野郎!」

 それを聞いて、カーッと顔に血を上らせる。

 馬鹿を露呈したしたのだから、馬鹿と罵られても文句は言えなかろうに。

 シルランは拳を握り締めてアルダシールに殴りかかろうと、振りかぶる挙動を見せた。

 やり合えば騒ぎに発展する。

 それは望むところではないので、どういなそうか瞬時に頭を巡らす。

 アルダシールはテーブルと長椅子の間に挟まれる立ち位置だ。

 既に腕は離れているものの、すぐ横にはエステルがいる。
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