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競い合い
出場者集合
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「アシュレイ様、ま、まさか?」
困惑するのみのユリウスに対し、付き合いの長いマクシムにはアシュレイの意図が伝わったようだ。
「ユリウスさんの名前を借りて、競い合いに参加したいの。アルダの思い通りになんか、絶対にさせない!」
「ええっ???」
今の「ええっ?」では、キャヴスとユリウスが、テノールとアルトを美麗にハモらせた。
マクシムだけが「ああ、やっぱり」と、額に手を当てている。
褒められた行為でないことは承知している。
無論、アルダシール以外の参加者の、妨げになる行動はしない。
「他の人の邪魔はしないわ。目的はそのアルダシールさんを脱落させるだけ。お願いします。ユリウスさんの協力が必要なの……!」
「は? い? ええ?」
アシュレイの懇願を正確に理解できず、ユリウスは翡翠の目を白黒させた。
「実はアルダシールは私の婚約者なの。エステル様は素晴らしい方かもしれないけど、黙って見てるなんてできません。それにユリウスさんだって、婚約者をほっぽってエステル様を得ようとしてる男に、彼女は相応しくないと思うでしょ?」
「それは……。いや、ちょっと、待ってください。善処しますから、初めから話を聞かせてくれませんか?」
人の良さそうなユリウスは、それでも勢いに呑まれなかった。
数世代に一度しか行われない、重要なイベントだ。
ユリウスが詳細を求めるのも当然の話だった。
アイディアこそ思いつきではあったが、願いを聞き入れてもらうべくアシュレイは、順序立てて説明することにした。
***
アルダシールが異変に気づいたのは、会場に到着してしばらく経ってからだった。
競い合いの会場は住宅街とも呼べる居住区から真北へ小一時間ほど入り込んだところにあった。
ぽっかりと円形に広がる空き地はなかなかの広さで、半径は500メートルほどありそうだ。
前日から用意されていた天幕の前で、希望者は競い合いへの参加を申し出る。
アルダシールはエステルに案内され、到着と共に赤のリボンを渡された。
それを左手首に結び、参加の証とする。
ローネッドは他の住民と共に主催者として儀式を差配していた。
ユリウスは朝食を用意してくれたにもかかわらず、いつの間にか姿を消していた。
「アルダシール様、お手を……わたしが結びます」
エステルが手首にリボンを結んでくれる。
「ありがとう。ところで」
睦まじい様子を見せつける2人から、他の参加者や観客は距離をとって遠巻きに観察している。
太陽は森から完全に姿を現し、恵たる陽光を惜しみなく注いでいる。
一時期にゾロゾロと集結していた参加者の波は、収束しつつあった。
ざっと見た限り、手首にリボンを巻いている者は50名ほどだ。
この者たちと、アルダシールは何かしらのお題で競い合う。
周囲におらず、声も届かないと見てとった今は、エステルはアルダシールを呼び捨てにしない。
「約束の情報だが……貴女は既に知っているのか?」
「もちろんです。お約束を果たしてくださった暁には私の知り得る全てをお伝えします」
にっこり笑って、エステルが頷く。
困惑するのみのユリウスに対し、付き合いの長いマクシムにはアシュレイの意図が伝わったようだ。
「ユリウスさんの名前を借りて、競い合いに参加したいの。アルダの思い通りになんか、絶対にさせない!」
「ええっ???」
今の「ええっ?」では、キャヴスとユリウスが、テノールとアルトを美麗にハモらせた。
マクシムだけが「ああ、やっぱり」と、額に手を当てている。
褒められた行為でないことは承知している。
無論、アルダシール以外の参加者の、妨げになる行動はしない。
「他の人の邪魔はしないわ。目的はそのアルダシールさんを脱落させるだけ。お願いします。ユリウスさんの協力が必要なの……!」
「は? い? ええ?」
アシュレイの懇願を正確に理解できず、ユリウスは翡翠の目を白黒させた。
「実はアルダシールは私の婚約者なの。エステル様は素晴らしい方かもしれないけど、黙って見てるなんてできません。それにユリウスさんだって、婚約者をほっぽってエステル様を得ようとしてる男に、彼女は相応しくないと思うでしょ?」
「それは……。いや、ちょっと、待ってください。善処しますから、初めから話を聞かせてくれませんか?」
人の良さそうなユリウスは、それでも勢いに呑まれなかった。
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アイディアこそ思いつきではあったが、願いを聞き入れてもらうべくアシュレイは、順序立てて説明することにした。
***
アルダシールが異変に気づいたのは、会場に到着してしばらく経ってからだった。
競い合いの会場は住宅街とも呼べる居住区から真北へ小一時間ほど入り込んだところにあった。
ぽっかりと円形に広がる空き地はなかなかの広さで、半径は500メートルほどありそうだ。
前日から用意されていた天幕の前で、希望者は競い合いへの参加を申し出る。
アルダシールはエステルに案内され、到着と共に赤のリボンを渡された。
それを左手首に結び、参加の証とする。
ローネッドは他の住民と共に主催者として儀式を差配していた。
ユリウスは朝食を用意してくれたにもかかわらず、いつの間にか姿を消していた。
「アルダシール様、お手を……わたしが結びます」
エステルが手首にリボンを結んでくれる。
「ありがとう。ところで」
睦まじい様子を見せつける2人から、他の参加者や観客は距離をとって遠巻きに観察している。
太陽は森から完全に姿を現し、恵たる陽光を惜しみなく注いでいる。
一時期にゾロゾロと集結していた参加者の波は、収束しつつあった。
ざっと見た限り、手首にリボンを巻いている者は50名ほどだ。
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周囲におらず、声も届かないと見てとった今は、エステルはアルダシールを呼び捨てにしない。
「約束の情報だが……貴女は既に知っているのか?」
「もちろんです。お約束を果たしてくださった暁には私の知り得る全てをお伝えします」
にっこり笑って、エステルが頷く。
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