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決着
始まりの場所 1
しおりを挟む「はい?」
マクシムはアルダシールの答えに、首を捻った。
エステルからの指示はこの木に来た時点で途絶えた。
つまりアルダシールの役割は、ここで終了なのだろう。
この俺をここまで都合良く振り回すとは。エステルも随分と肝の据わった女だ。
(なら、どのように着地するのか。とくとせてもらおうか)
アルダシールは木の葉の隙間から天を仰ぎ、くつくつと笑いを噛み殺した。
***
「ともかく、出立しましょう。まごまごしていては、勝てる勝負も落としかねないわ」
一方のアシュレイは、ユリウスと共に沢へと向かう道を下っていた。
アシュレイは3つ目の課題がスタートした直後、杉に登って森の広範囲を俯瞰した。
山岳地帯で遭難者を探す際に、全体地形の把握は必須だ。
アシュレイの方向感覚は人並だけれど、自身の居所が掴めなくなるようでは話にならない。
地図もコンパスも、土地勘もない森で闇雲に他の参加者の跡をつけるのでは、勝ち目などないに等しい。
それならば敵にリードを許したとしても全容の把握にかけたほうがいい。
そう判断しての行動だった。
目指すは他の参加者とは正反対の方角で、観客やローネッドたちに見咎められる心配もグッと減ったから、コソコソせずに歩ける。
木の上とはいえ、森の全てが見えるほどの高さではない。
けれど、エステルの移動先を推測するには充分な情報が得られた。
崖上から川に飛び込んだ際の川岸で、アシュレイはエステルと顔を合わせている。
エステルはそこから、3つ目の課題の潜伏場所へと移動したことになる。
森は広大だが、森の中には三本の川が流れていた。
一本は遥か彼方より流れる本流。
先ほどユリウスがその本流を「サクレ川」、そこから分岐する2つの支流をゼスト川、サリュ川だと教えてくれた。
サクレ川は飛び込みが可能なだけあり、川幅が広い。
水深が深ければとても徒歩では渡れない。
かと言って、船など用意してあれば一目につく可能性もあるし、協力者はないはずだ。
まず、サクレ川の対岸へは渡るまい、との予想が立った。
もう一つのサリュ川は居住区から見て南東に分岐している。
それだけでエステルの居所は森の3分の1の範囲に絞られた。
「自分で申し上げていて今更なんですが、本当にそこに、エステルがいるんでしょうか」
ザクザクと、足元の土質が程よく水気を含んだ粘土質から、湿地帯に多く見られる砂利へと変化を始めた。
沢はほど近い。
「本当に今更ね。そんなに心配しなくても大丈夫よ」
アシュレイは自信なさげに瞳を揺らすユリウスの発言を一笑に付す。
「あのタイミングでレインツリーに向かったって手遅れだったでしょ? それに、始まりの木はそこかもしれないけど、ヒントは”始まりの場所”だったのだから、充分可能性はあるわ」
「それは、そうでしょうが……僕のせいで足を引っ張ったら」
アシュレイは苦笑しようとしてーー引っ込めた。
このユリウスはアシュレイとよく似た姿形をしている。
だからか、どうにも他人事と思えない。
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