王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら

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アルダシールの願い 1

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「待てっ、アシュレイ!!」

 咄嗟に声が出た。

 声が出ると、やっと呪縛が解けたように足が一歩先に出た。

 ホッとして、右足に体重を乗せる。そのまま追いかけようと左足を蹴り上げた。

「お待ちを、陛下! 今宵です」

 せっかく踏み出せたのに、エステルに呼び止められる。

 もどかしくなりながらも、何事かと顔だけで振り返った。

「陛下の求めていた、答えです。今宵なのです。明日、明星の輝きが消えるまでにアシュレイ様と愛を交わしてください!」

 エステルは追い縋るように声を張り上げた。

 はぁ? と間の抜けた印象の、マクシムとユリウスの表情が目に映る。

 予備知識のないまま聞かされれば、さっぱりと意味が伝わらないに決まっている。

 まさかそんな情報と引き換えに、俺がエステルの条件を呑んだなど、誰が想像しただろう。

「今宵だと? 今頃急に、遅すぎる!」

「このような時に申し訳ありません!」

 呼びかけなど話半分に、聞き流してアシュレイを追おうとしたが、流せなかった。

 アシュレイを見やり、自分との距離を測る。

 非常にもどかしいところだが、また目をエステルに戻して、足を緩めた。

 せめてもっと早くにわかっていれば、と舌打ちしそうになる。

(今からアシュレイを捕まえて、今日中にだと?)

 文字通り王様気質のアルダシールは、独断的な気質がある。

 その上に大抵の意見は通る立場にあったが、これに関してはどうだろう、と僅かな疑問が頭を過ぎる。

 不可能ではない。

 最適解は既に導き出されていた。

「マクシム、来い! 追いながら伝える」

「えっ、はあっ!?」

 来いと呼ばれれば、習慣だ。

 アシュレイを追うため飛び出していたマクシムは、反射でアルダシールの元に駆けつけた。

 アシュレイを見失わぬようにアルダシールも前進しつつ、マクシムが追いつけるよう微調整する。

 しかし、これは長距離走ではない。

 アシュレイは全力で逃げる気らしく、あっという間に木立に紛れる。

 気を抜いたら、簡単に撒かれる。

「至急だ、馬を一頭外れの小屋に用意して、帰路に宿を手配してくれ。連絡にはセイカーを使え」

 走りながら端的に、希望だけを伝える。

 いつも通りの強引な手法は先刻批判されたばかりだった。

「仰せの通りに。陛下は……」

「アシュレイを連れて合流する。委細は後だ」

「かしこまりました。揃ってのご帰還をお待ちしています」

 今回も 護衛はどうすると、食い下がられてもおかしくない。

 けれど、今回は了承してくれた。

「セイカーに地図を持たせます。出立時には必ずお知らせください。揃ってのご帰還をお待ちしております」

 アシュレイとアルダシール、2人の仲を心から慮った結果だろう。
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