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決着
二人とも 1
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”きちんと”伝わってはいないようだ。やはり、全てを明確に伝える必要がある。
伝聞や意図を交えず、明確に。
アルダシールは制止のために右手をあげたまま、両膝でにじり寄り、有無を言わせぬ力強さでアシュレイの両肩を掴んだ。
「俺が釣られたのは、王子を授かる暦を教えてくれると条件を提示されたからだ。誤解なきよう敢えて言うが、アシュレイと俺の間に生まれる王子の話だぞ。他所の女に子供を産ませる予定もつもりもない」
充分にアシュレイの注意がアルダシールに向くまで待ってから、明言した。
アシュレイは「えっ」と声に出して戸惑った。
間が開いたのは、自らの中で事実と解釈を擦り合わせているためだろう。
次に口を開いた時には、若干頬がには赤みがさしていた。
「嘘だ、そんなことがわかるはずないわ」
首を振って、放たれた言葉は否定だった。
でも、瞳が潤んで、期待している。
「そうだな。俺も半信半疑だったが、駄目で元々だ。競い合いで勝利してセレンティアに帰るまで丸2日。その程度の労力ならば賭ける価値はあると考えた。……それで、マクシムにはアシュレイと共に待つよう手紙を残し、夜中にセレンティアを発った」
初めは半信半疑だった。その言葉に偽りはない。
けれど今では、エステルの能力を信用していた。
現に競い合いはアシュレイの介入によって最良の方向へ展開した。
最も厄介だったシルランは、不正を働いた咎で捕縛してある。
幸いにして、ユリウスを騙って出場したアシュレイの正体は露見していない。
何くわぬ顔で戻れば、勝者をユリウスとして決着することもできる。
後はユリウスとエステル、2人が自由に選択をすればいい。
全てはアシュレイによる功労だ。
エステルはただ ”アルダシールを連れて来た” だけ。
その行為に伴い、アシュレイがランドットまでアルダシールを追って来た。
ユリウスに良く似た容姿で競い合いに参加し、マクシムたちをしてシルランを捕えさせた。
「他言してはならない約束だったため、やむを得なかった。とはいえ。その結果、お前たちを不安にし、アシュレイには怪我まで負わせた。俺が浅はかだったと今では反省している」
エステルがどこまで予想していたのかは知る由もない。
しかし、現状だけ見ればエステルの望みは叶っている。
「……じゃあ、本当なの? そんなことまでわかるの? エッ、エステルさんは、そのう……何て言った?」
嘘だ、と否定しておきながらも、本当かもしれない可能性をアシュレイも信じ始めていた。
今までアルダシールを拒絶していたから、目だけはあらぬ方向を見ている。
アシュレイも気になるんだな。
自分と同じ気持ちだったと分かってほっとする。
それと同時に厄介な躊躇いが生まれた。
エステルの示した暦は今晩だ。
そうと告げればアシュレイは……。
「……知りたいか?」
「そんな、そんなの、当たり前でしょう。だって……」
「だって、何だ?」
アルダシールは、じっと瞳を見つめて問いかけた。
アシュレイの心の底を覗きたい。
今夜だと告げればアシュレイには選択の余地がなくなる。
伝聞や意図を交えず、明確に。
アルダシールは制止のために右手をあげたまま、両膝でにじり寄り、有無を言わせぬ力強さでアシュレイの両肩を掴んだ。
「俺が釣られたのは、王子を授かる暦を教えてくれると条件を提示されたからだ。誤解なきよう敢えて言うが、アシュレイと俺の間に生まれる王子の話だぞ。他所の女に子供を産ませる予定もつもりもない」
充分にアシュレイの注意がアルダシールに向くまで待ってから、明言した。
アシュレイは「えっ」と声に出して戸惑った。
間が開いたのは、自らの中で事実と解釈を擦り合わせているためだろう。
次に口を開いた時には、若干頬がには赤みがさしていた。
「嘘だ、そんなことがわかるはずないわ」
首を振って、放たれた言葉は否定だった。
でも、瞳が潤んで、期待している。
「そうだな。俺も半信半疑だったが、駄目で元々だ。競い合いで勝利してセレンティアに帰るまで丸2日。その程度の労力ならば賭ける価値はあると考えた。……それで、マクシムにはアシュレイと共に待つよう手紙を残し、夜中にセレンティアを発った」
初めは半信半疑だった。その言葉に偽りはない。
けれど今では、エステルの能力を信用していた。
現に競い合いはアシュレイの介入によって最良の方向へ展開した。
最も厄介だったシルランは、不正を働いた咎で捕縛してある。
幸いにして、ユリウスを騙って出場したアシュレイの正体は露見していない。
何くわぬ顔で戻れば、勝者をユリウスとして決着することもできる。
後はユリウスとエステル、2人が自由に選択をすればいい。
全てはアシュレイによる功労だ。
エステルはただ ”アルダシールを連れて来た” だけ。
その行為に伴い、アシュレイがランドットまでアルダシールを追って来た。
ユリウスに良く似た容姿で競い合いに参加し、マクシムたちをしてシルランを捕えさせた。
「他言してはならない約束だったため、やむを得なかった。とはいえ。その結果、お前たちを不安にし、アシュレイには怪我まで負わせた。俺が浅はかだったと今では反省している」
エステルがどこまで予想していたのかは知る由もない。
しかし、現状だけ見ればエステルの望みは叶っている。
「……じゃあ、本当なの? そんなことまでわかるの? エッ、エステルさんは、そのう……何て言った?」
嘘だ、と否定しておきながらも、本当かもしれない可能性をアシュレイも信じ始めていた。
今までアルダシールを拒絶していたから、目だけはあらぬ方向を見ている。
アシュレイも気になるんだな。
自分と同じ気持ちだったと分かってほっとする。
それと同時に厄介な躊躇いが生まれた。
エステルの示した暦は今晩だ。
そうと告げればアシュレイは……。
「……知りたいか?」
「そんな、そんなの、当たり前でしょう。だって……」
「だって、何だ?」
アルダシールは、じっと瞳を見つめて問いかけた。
アシュレイの心の底を覗きたい。
今夜だと告げればアシュレイには選択の余地がなくなる。
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