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帰着
蜜月 1
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健気で狂おしい告白を前に、アルダシールはもう黙って待っていられなかった。
それは、アルダシールの望みと寸分の狂いもない。
「アシュレイ、お前は本当に罪作りな女だ」
アルダシールは呟くとアシュレイの身体を引き寄せて、腕の中に閉じ込めた。
そのまま横抱きに抱え上げ、立ち上がる。
「わあっ。分かった? 伝わってるの? 本当に?」
「分かっている。俺も全く同じ気持ちだ。アシュレイが好きだから、俺とお前の、2人の子が欲しい」
素早く頬に口付け、改めて見つめ合うと、涙でキラキラと輝いた瞳が嬉しそうに弧を描いた。
あまりにも綺麗でまた見惚れそうになったところで首に腕を回される。
口付けを強請っているんだと察する前に自らも顔を伏せて、唇を重ねていた。
「ん……」
アシュレイの唇は柔らかく、温かい。
一度触れてしまえば、もう離れがたい。
どうしてこの女は、どこまでもこの俺を夢中にさせるのか。
女に翻弄され国を傾けた父を厭い、アルダシールは常に女性を警戒していた。
国を乱すくらいなら、妻など娶らぬほうがマシとださえ考えていたのに。
一度離れても直ぐにまた恋しくなって、アルダシールはアシュレイを横抱きにしたまま唇を啄み続けた。
それでも一分一秒が惜しく、そのまま歩き始める。
「ちょっ、アルダ……、ん、もうっ」
唇の下からくぐもった笑いが溢れて、アルダシールの口角も自然に上がる。
”危ないわよ”
声になっていなくても、何と注意されているかは明確に伝わった。
アルダシールも”愛してる”と繰り返し囁いて、精霊たちの棲む森を後にする。
ラークの森はどこまでも穏やかに、温かくアルダシールたちを見守っていた。
***
「至急だ、馬を一頭外れの小屋に用意して、帰路に宿を手配してくれ。連絡にはセイカーを」
「仰せの通りに。陛下は……」
「アシュレイを連れて合流する。委細は後だ」
”後で””後で””後で”。
アルダシールが失踪してこちら、マクシムはあらゆる情報から疎外され続けていた。
マクシムだけならまだしも、アシュレイにさえ秘密を貫く姿には憤りを感じていた。
しかしこの時、ようやく光明が差し込んだ。
はっきり言って全く意味は分かっていないが、アルダシールがアシュレイを連れ帰る準備なら喜んで取り掛かろう。
「馬ならすぐに用意できますから。ご案内します」
胸中で意気込んだところを、エステルに呼び止められた。
「お気遣いは有り難いのですが、乗ってきた馬がありますので」
それは、アルダシールの望みと寸分の狂いもない。
「アシュレイ、お前は本当に罪作りな女だ」
アルダシールは呟くとアシュレイの身体を引き寄せて、腕の中に閉じ込めた。
そのまま横抱きに抱え上げ、立ち上がる。
「わあっ。分かった? 伝わってるの? 本当に?」
「分かっている。俺も全く同じ気持ちだ。アシュレイが好きだから、俺とお前の、2人の子が欲しい」
素早く頬に口付け、改めて見つめ合うと、涙でキラキラと輝いた瞳が嬉しそうに弧を描いた。
あまりにも綺麗でまた見惚れそうになったところで首に腕を回される。
口付けを強請っているんだと察する前に自らも顔を伏せて、唇を重ねていた。
「ん……」
アシュレイの唇は柔らかく、温かい。
一度触れてしまえば、もう離れがたい。
どうしてこの女は、どこまでもこの俺を夢中にさせるのか。
女に翻弄され国を傾けた父を厭い、アルダシールは常に女性を警戒していた。
国を乱すくらいなら、妻など娶らぬほうがマシとださえ考えていたのに。
一度離れても直ぐにまた恋しくなって、アルダシールはアシュレイを横抱きにしたまま唇を啄み続けた。
それでも一分一秒が惜しく、そのまま歩き始める。
「ちょっ、アルダ……、ん、もうっ」
唇の下からくぐもった笑いが溢れて、アルダシールの口角も自然に上がる。
”危ないわよ”
声になっていなくても、何と注意されているかは明確に伝わった。
アルダシールも”愛してる”と繰り返し囁いて、精霊たちの棲む森を後にする。
ラークの森はどこまでも穏やかに、温かくアルダシールたちを見守っていた。
***
「至急だ、馬を一頭外れの小屋に用意して、帰路に宿を手配してくれ。連絡にはセイカーを」
「仰せの通りに。陛下は……」
「アシュレイを連れて合流する。委細は後だ」
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マクシムだけならまだしも、アシュレイにさえ秘密を貫く姿には憤りを感じていた。
しかしこの時、ようやく光明が差し込んだ。
はっきり言って全く意味は分かっていないが、アルダシールがアシュレイを連れ帰る準備なら喜んで取り掛かろう。
「馬ならすぐに用意できますから。ご案内します」
胸中で意気込んだところを、エステルに呼び止められた。
「お気遣いは有り難いのですが、乗ってきた馬がありますので」
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