王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら

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帰着

蜜月 2

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 馬は元々、川縁にあった小屋に繋いである。

 それよりも前にキャヴスにランドットを発つ旨を伝えなければ。

 キャヴスはまだ、あの窪地で待機しているはずだ。

「ところで、つかぬことをお伺いしますがエステル様はユリウス殿と?」

 マクシムが尋ねれば、エステルは薄く微笑んで頭を下げる。

 アルダシールはレインツリーの足元で”エステルに振られた”と嘯いていた。

 それはこういう意味だったのか。

(すると真実、陛下とエステル姫は始めから協力関係にあっただけなのだな)

 ”宵から明日、明星の輝きが消えるまでにアシュレイ様と愛を交わしてください”

 成り行きも理由も解説を頑なに拒まれたが、細切れの情報をつなぎ合わせると全容がぼんやりと浮き上がる。

 アルダシールがエステルに振り回されてまで欲しがった情報とやらがそれだ。

 それで宿をと命じられたのなら、マクシムは意地でも国王夫妻が一夜を過ごすに相応しい宿泊先を選出せねば。

「すみませんでした。僕がしっかりしていないせいで、皆さんには多大なご迷惑をおかけしました。馬がご不要であれば、宿の手配は僕が」

 エステルの影から飛び出したユリウスが改めて謝罪する。

 控えめな性格に見えたのに自ら先んじて声を上げるとは、この僅かな時間が彼に変化をもたらした証拠だろう。

「いいえ、ユリウス殿。陛下が何もかもを承知の上でなさった事ですから、詫びる必要はありません。しかしもしも、何らかの形で報いたいと思ってくださるのでしたら、ぜひエステル姫を伴って競い合いの席に戻ってください」

 兎にも角にも、急がねば。

 今の時期の明星はおおよそ夜明けの1時間前には消える。

 アルダシールの見立て通り、セレンティアまで戻る時間はないし、アシュレイの説得にどれくらいの時間がかかるかも知れない。

「あ、可能ならあともう一つ、頼まれてくれませんか? ここより2キロほど離れた低木の一帯にキャヴス卿がいるのですが、私たちはこのままランドットを発つので、用事が済んだら追って来て欲しいと伝えてください」

「待ってください」と反駁しかけたユリウスをマクシムは遮る。

「キャヴス卿は、恐れ多くも国王陛下を狙撃した悪漢とその一味を捕らえています。目的は競い合いの妨害に過ぎなかったのでしょうが、連れ帰り我が国の法に照らし合わせれば間違いなく死罪です。急ぎこの地を発つため処断は貴方がたに一任しますので、煮るなり焼くなり、お好きなようにしてください。キャヴス卿に証人として立ってもらっても良いでしょう」

「伝言は当然、お引き受けします。けれど実は僕たちはこの森を……」

「勿論、ご伝言いただいた後はご自由にしていただいて構いませんよ。しかしその必要はないのではありませんか? このまま戻れば勝者はユリウス殿、貴方です」

 先を急ぎたい気持ちもあるが、マクシムは老婆心から続けた。

「良心にもとるとお考えでしょう? しかし、与えられた機会を溝に捨てることもまた罪深い行いです。せっかく陛下と王妃がここまでお膳立てをしてくださったのです。無碍にするのもいかがなものでしょうか」
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