217 / 223
帰着
新たなる出発
しおりを挟む
諍いの種になるだろうカリアナには、見送りをご遠慮いただいた。
「城をあまり空けてはいられないからな。お気持ちは有り難く頂戴しておこう。よければ近いうちに、貴女たちも是非アラウァリアへ来るといい。身軽なうちにな」
アルダシールが微笑みながら、含みのある物言いをするとコリーヌがぽっと頬を染める。
「ちょっと、結婚したばかりの女性に何を言ってるの。ハラスメントよ、それ」
足首を痛めているのでアシュレイは、軽く腰を支えてもらっていた。
腕は腹と触れ合っているので、肘を曲げてアルダシールの脇をつつく。
「はらすメント? 何だそれは。こちらの方言か?」
「いやっ……方言じゃなくて、人の嫌がることを言ったりしたりしてはいけないってことよ。無神経だわ」
実子を授からなければ養子を取っても良いとは、いつ誰から聞いた台詞だったか。
思い出深い夜をテムズで明かして以来、アルダシールは臆面もなく子供の話題を口に出すようになった。
(本当に授かっているかは、まだ分からないのに……)
初対面の公女から持ちかけられた取引にうっかり応じるくらいには、子を欲していたようだ。
テムズからの帰り道では、後継の教育についてマクシムと熱く話し込んでいた。
その姿はあまりにも嬉しそうだったし、気持ちもわかる。
だから、この件に関してはアシュレイもあまり強く批判できない。
「お誘いをありがとうございます。後学のためにも、是非一度お国を拝見させてください。後日改めて、申し入れをさせて頂きます」
シュナイゼルだけは、変わらず冷静に受け応えをしてくれた。
「ああ、楽しみにしている。では、また」
アルダシールは軽く手を挙げて挨拶すると、アシュレイを抱き上げて馬車に乗り込んだ。
「大丈夫、自分で乗れるから……! 人前でやめて、恥ずかしいわ」
アシュレイが抗議しても、アルダシールは素知らぬ顔だ。
「何を今更。怪我人なのだし、 転びでもしたら大変だ」
もう乗り込んでしまったので、アシュレイは諦めて窓から顔を出す。
「それじゃ、2人ともお元気で。コリーヌ、また会いましょうね」
「はいっ、お姉様。お元気で」
アシュレイが手を振ると、馬車は動き始めた。
先頭には護衛用、その後ろにアシュレイとアルダシールが乗る馬車が続く。
その周囲をカルダンとエッダ、マクシムが騎乗して守りを固める。
帰りは行きと同じ行程で3日をかけてアラウァリアの王都へ帰着する。
「せっかくだからベラミ領にも寄れれば良かったのにね」
「残念だがこれ以上は城を空られない。それに今はアシュレイの体調が第一だ」
シュナイゼルやコリーヌたちの姿が見えなくなるまで進み、頭を引っ込めたところをアルダシールに抱きすくめられる。
「城をあまり空けてはいられないからな。お気持ちは有り難く頂戴しておこう。よければ近いうちに、貴女たちも是非アラウァリアへ来るといい。身軽なうちにな」
アルダシールが微笑みながら、含みのある物言いをするとコリーヌがぽっと頬を染める。
「ちょっと、結婚したばかりの女性に何を言ってるの。ハラスメントよ、それ」
足首を痛めているのでアシュレイは、軽く腰を支えてもらっていた。
腕は腹と触れ合っているので、肘を曲げてアルダシールの脇をつつく。
「はらすメント? 何だそれは。こちらの方言か?」
「いやっ……方言じゃなくて、人の嫌がることを言ったりしたりしてはいけないってことよ。無神経だわ」
実子を授からなければ養子を取っても良いとは、いつ誰から聞いた台詞だったか。
思い出深い夜をテムズで明かして以来、アルダシールは臆面もなく子供の話題を口に出すようになった。
(本当に授かっているかは、まだ分からないのに……)
初対面の公女から持ちかけられた取引にうっかり応じるくらいには、子を欲していたようだ。
テムズからの帰り道では、後継の教育についてマクシムと熱く話し込んでいた。
その姿はあまりにも嬉しそうだったし、気持ちもわかる。
だから、この件に関してはアシュレイもあまり強く批判できない。
「お誘いをありがとうございます。後学のためにも、是非一度お国を拝見させてください。後日改めて、申し入れをさせて頂きます」
シュナイゼルだけは、変わらず冷静に受け応えをしてくれた。
「ああ、楽しみにしている。では、また」
アルダシールは軽く手を挙げて挨拶すると、アシュレイを抱き上げて馬車に乗り込んだ。
「大丈夫、自分で乗れるから……! 人前でやめて、恥ずかしいわ」
アシュレイが抗議しても、アルダシールは素知らぬ顔だ。
「何を今更。怪我人なのだし、 転びでもしたら大変だ」
もう乗り込んでしまったので、アシュレイは諦めて窓から顔を出す。
「それじゃ、2人ともお元気で。コリーヌ、また会いましょうね」
「はいっ、お姉様。お元気で」
アシュレイが手を振ると、馬車は動き始めた。
先頭には護衛用、その後ろにアシュレイとアルダシールが乗る馬車が続く。
その周囲をカルダンとエッダ、マクシムが騎乗して守りを固める。
帰りは行きと同じ行程で3日をかけてアラウァリアの王都へ帰着する。
「せっかくだからベラミ領にも寄れれば良かったのにね」
「残念だがこれ以上は城を空られない。それに今はアシュレイの体調が第一だ」
シュナイゼルやコリーヌたちの姿が見えなくなるまで進み、頭を引っ込めたところをアルダシールに抱きすくめられる。
221
あなたにおすすめの小説
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!
ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。
相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。
結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。
現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう…
その時に前世の記憶を取り戻すのだった…
「悪役令嬢の兄の婚約者って…」
なんとも微妙なポジション。
しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。
【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【だって、私はただのモブですから】
10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした――
※他サイトでも投稿中
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
虐げられていた次期公爵の四歳児の契約母になります!~幼子を幸せにしたいのに、未来の旦那様である王太子が私を溺愛してきます~
八重
恋愛
伯爵令嬢フローラは、公爵令息ディーターの婚約者。
しかし、そんな日々の裏で心を痛めていることが一つあった。
それはディーターの異母弟、四歳のルイトが兄に虐げられていること。
幼い彼を救いたいと思った彼女は、「ある計画」の準備を進めることにする。
それは、ルイトを救い出すための唯一の方法──。
そんな時、フローラはディーターから突然婚約破棄される。
婚約破棄宣言を受けた彼女は「今しかない」と計画を実行した。
彼女の計画、それは自らが代理母となること。
だが、この代理母には国との間で結ばれた「ある契約」が存在して……。
こうして始まったフローラの代理母としての生活。
しかし、ルイトの無邪気な笑顔と可愛さが、フローラの苦労を温かい喜びに変えていく。
さらに、見目麗しいながら策士として有名な第一王子ヴィルが、フローラに興味を持ち始めて……。
ほのぼの心温まる、子育て溺愛ストーリーです。
※ヒロインが序盤くじけがちな部分ありますが、それをバネに強くなります
※「小説家になろう」が先行公開です(第二章開始しました)
プロローグでケリをつけた乙女ゲームに、悪役令嬢は必要ない(と思いたい)
犬野きらり
恋愛
私、ミルフィーナ・ダルンは侯爵令嬢で二年前にこの世界が乙女ゲームと気づき本当にヒロインがいるか確認して、私は覚悟を決めた。
『ヒロインをゲーム本編に出さない。プロローグでケリをつける』
ヒロインは、お父様の再婚相手の連れ子な義妹、特に何もされていないが、今後が大変そうだからひとまず、ごめんなさい。プロローグは肩慣らし程度の攻略対象者の義兄。わかっていれば対応はできます。
まず乙女ゲームって一人の女の子が何人も男性を攻略出来ること自体、あり得ないのよ。ヒロインは天然だから気づかない、嘘、嘘。わかってて敢えてやってるからね、男落とし、それで成り上がってますから。
みんなに現実見せて、納得してもらう。揚げ足、ご都合に変換発言なんて上等!ヒロインと一緒の生活は、少しの発言でも悪役令嬢発言多々ありらしく、私も危ない。ごめんね、ヒロインさん、そんな理由で強制退去です。
でもこのゲーム退屈で途中でやめたから、その続き知りません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる