規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ケイソウ

文字の大きさ
18 / 29

17話 遊戯

しおりを挟む


 謎のオネエさんから貰った券をポケットに入れ、クッキーの入った袋を片手に、自警団の皆様からのお礼の言葉を頂戴して、歓声鳴り止まぬ商店街を静かに去る私であった。
 教訓、もう商店街に近づくのはやめよう。

 一通り街を探索して宿へ向かう。そろそろ夕飯時だ、お腹も空いてきた。宿屋の食事はどんな物が出るのかと期待しながら店の前に立つと――

「ハ~イ、お兄さん。フフッ」

 と、背後から聴き覚えのある独特な喋り方をする声に振り向くと、あの交換所にいたオネエさんが立っていた。

「お迎えに参りましたのよ~」

 その不気味な笑顔に私は戸惑う。いや、怖いからやめて。そりゃね、レオにも間違われたよ、そっち系のお兄さんってね。でもさ、まったくの誤解だし、そんなオーラこれっぽっちも出してないよね?
 だからさ、お誘いはちょっとごめんなさい。

「えっと、なんのお誘いかな?」

「あら、とぼけちゃって、優待券よ」

 そっちか、確か裏ダンジョンと書いてあった優待券だ。今から魔獣と戦えとでも言うのだろうか。しかし何故ここが分かったのだろう。

「ああ、券のことで来られたんですか。この裏に書いてある裏ダンジョンとは何んですか? それと、なぜ私の居場所が分かったんですか?」

「フフッ。質問責めね、嫌いじゃないわ。こう見えて私は《ハンター》なの。ダンジョンに挑戦して勝利すれば1つだけ好きな物が与えられる、来れば分かるわ。どう? やってみない?」

「好きな物?」

「あなた、私の勘だと、女性の下着とかに興味があるんじゃない? 違ったかしら?」

 どうしよう、正にその通りなんですけど。あの地団駄を踏んだことで見抜かれた?
 でも、もし話しが本当なら挑戦する価値はある。パンツや新種の魔獣の情報も手に入るかも知れない。行きましょう、パンツ最前線へ!

「分かりました、お供します」

 私はオネエさんと連れ立って、ルナ都市の中心部へやって来た。オネエさんは繁華街の酒場通りを歩いて、ある店の前で足を止めた。
 看板には「カマ・ナイスデイ」と、絶対悪夢にうなされる一日になるであろうディスプレイが、煌々と照らし出されている。
 オネエさんがドアを開けると――

「いらっしゃいませ~! 貴方とワタシのステキな夜にご案内しま~す! ウフフフッ!」

「うげっ……」

 なるほど、謂わゆるオカマバーである。スタイルバッチリなのに青髭が残る濃い化粧が何とも残念。
 そこでオネエさんが笑顔で手招きをする。

「さあ入って。私はここのママでフェアリーベルって言うのよ、ベルママって呼んでね。ウフッ!」

 あのですね、決して貴方を否定するつもりはないのだけれど、妖精が余りにも可哀想なのでぜひ改名をよろしくどうぞ。
 それはともかく、こんな異様なところにダンジョンなどあるのだろうか。確かに魔物はいるけども。

「ほらアナタ達、このお兄さんは私の大切なお客様なんだから、構わないでちょうだい。散って!」

「あら、裏の挑戦者? 頑張ってね~!」

 そう言って呆気なく去って行った。

「さあ、お兄さんこっちよ。早くいらっしゃい」

 ベルママがまた手招きをする。だとすると、ダンジョン会場は別の場所にあるのだろう。
 私はベルママの後に続く――

 カウンター脇のドアをくぐると、地下へ続く階段を下り始めた。湿った空気が体に纏わり付く。
 階段を降り切る前に、ベルママが私に何かを手渡す。見ると、貴族達が舞踏会で正体を隠す為に使うドミノマスクだ。おそらく秘密裡ひみつりに行われる催しと言ったところだろう。
 さっそく私も眼鏡を外しマスクを着ける。

 階段を降りると通路に出た。少し先に開けた場所が見える。そこはまるで、闘牛場を思わせる砂地と、そして観客席にはドミノマスクを着けた人達が大勢いる。身に纏う物からして多分、貴族ではないだろうか。
 

「見ての通り、ドミノマスクを着けている観客は貴族よ。ここは賭けダンジョン、彼らはお兄さんを賭けの対象としてお金を払う、謂わばギャンブラー」

 貴族の道楽か。でもそれにすがる私のような人間もいる、そしてそれを商売にする胴元どうもと
 どの世界にも裏組織は存在するってことだ。

「闘う相手はもちろん魔獣、ルールは簡単。お兄さんの他に後2人登場するわ、最後まで残った者が好きな物を手に出来る勝者。武器はこちらで用意した物を使用、私達も鬼ではないのでギブアップ有りよ。死人は出したくないものねえ。では、挑戦するなら私に券を、辞退するならこの場で破り捨ててちょうだい。何か質問は?」

「魔獣って、まさかダンジョンから?」

「ああ、魔獣と言っても指定害獣よ。どうする?」

「指定害獣がここに?」

「フフッ。詳しく知りたければ先ず勝つことね」
 

 パンツは欲しい、この遊戯ゲームの理由も知りたい、でも競い相手がいる……。

 漫画のファイター達が、死闘を繰り広げる闘牛場のような場所を目の当たりにして、私は特別優待券を、渡すか破り捨てるかの選択を迫られている。
 たかがパンツ、されど綿パンツとこだわり抜いた夢がついえてしまった今、このチャンス到来を諦めたら女がすたるってもんだ。王族ばかりに貴重な綿パンを穿かせてなるものか!

 ということで――

「やるしかないでしょ。はい券です!」

「フフッ、そうこなくっちゃね。ここでは挑戦者をアルファベットで呼ぶのよ。では他の2名を紹介するわ、そちらが"Y"さんよ」

 背後からスッと男がふたり姿を現した。

「俺は他国の人間だ。おそらく君達とは二度と会うことはないだろうから、顔を隠す必要はないだろ、ただのオヤジさ。まあ、よろしく」

 中高年の、少しやさぐれた冒険者崩れといった出立ちで、特に悪い感じは受けない。

「お隣が"X"さん。この中ではいちばん若い子かも知れないわね」

「えっと、戦い方を学びに来ました。顔は出せません、なるべく最後まで残りたいのでよろしく」

 確かに、声の感じからして正義感ダダ漏れの若者といった感じだ。しかしなんだろう、どこかで会ったような気が……。

「そして私がスカウトしたステキな青年"Z"さん。私の勘なんだけど、おそらくいちばんの強者じゃないかしら。まあ、お互い頑張ってちょうだいな」

 何を根拠に私を強者だと思うのだろう。そう言えば、自ら《ハンター》と言っていた、ならばギルドからの情報、もしくは予め知っていたから誘った。
 商店街の出来事を見たからかも知れないが、それだけで判断するのはどうかと思う。
 別に冒険者であることを隠すつもりはないが、何せ、未だFランクなんで恥ずかしいじゃん。

「私も顔出しはNGで。よろしく」

「武器はその机の上にある中から選んでちょうだいね。協力し合うも良し、盾にするも良し、好きに戦って貰って結構よ。さあ、始めましょう!」


 いよいよ裏ダンジョンが始まる。
 私の作戦はモブに徹すること。背景と化し、相手と害獣を戦わせて様子を伺う。ダンジョンの魔獣もこの国の害獣も知らない私の攻略法だ。出る杭は打たれる。大人しく隠れて身を隠すのも作戦のひとつなのだ。だからではないが、離れて攻撃できる槍を選択する。モブ危うきに近寄らずだ。


 モブはね、モブだからさあ……モブるのよ。

 

 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

きっと幸せな異世界生活

スノウ
ファンタジー
   神の手違いで日本人として15年間生きてきた倉本カノン。彼女は暴走トラックに轢かれて生死の境を彷徨い、魂の状態で女神のもとに喚ばれてしまう。女神の説明によれば、カノンは本来異世界レメイアで生まれるはずの魂であり、転生神の手違いで魂が入れ替わってしまっていたのだという。  そして、本来カノンとして日本で生まれるはずだった魂は異世界レメイアで生きており、カノンの事故とほぼ同時刻に真冬の川に転落して流され、仮死状態になっているという。  時を同じくして肉体から魂が離れようとしている2人の少女。2つの魂をあるべき器に戻せるたった一度のチャンスを神は見逃さず、実行に移すべく動き出すのだった。  女神の導きで新生活を送ることになったカノンの未来は…?  毎日12時頃に投稿します。   ─────────────────  いいね、お気に入りをくださった方、どうもありがとうございます。  とても励みになります。

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

【完結】追放された転生聖女は、無手ですべてを粉砕する

ゆきむらちひろ
ファンタジー
「祈るより、殴る方が早いので」 ひとりの脳筋聖女が、本人にまったくその気がないまま、緻密に練られたシリアスな陰謀を片っ端から台無しにしていく痛快無比なアクションコメディ。 ■あらすじ 聖女セレスティアは、その類稀なる聖なる力(物理)ゆえに王都から追放された。 実は彼女には前世の記憶があって、平和な日本で暮らしていたしがないOLだった。 そして今世にて、神に祈りを捧げる乙女として王国に奉仕する聖女に転生。 だがなぜかその身に宿ったのは治癒の奇跡ではなく、岩をも砕く超人的な筋力だった。 儀式はすっぽかす。祈りの言葉は覚えられない。挙句の果てには、神殿に押し入った魔物を祈祷ではなくラリアットで撃退する始末。 そんな彼女に愛想を尽かした王国は、新たに現れた完璧な治癒能力を持つ聖女リリアナを迎え入れ、セレスティアを「偽りの聖女」として追放する。 「まあ、田舎でスローライフも悪くないか」 追放された本人はいたって能天気。行く先も分からぬまま彼女は新天地を求めて旅に出る。 しかし、彼女の行く手には、王国転覆を狙う宰相が仕組んだシリアスな陰謀の影が渦巻いていた。 「お嬢さん、命が惜しければこの密書を……」 「話が長い! 要点は!? ……もういい、面倒だから全員まとめてかかってこい!」 刺客の脅しも、古代遺跡の難解な謎も、国家を揺るがす秘密の会合も、セレスティアはすべてを「考えるのが面倒くさい」の一言で片付け、その剛腕で粉砕していく。 果たしてセレスティアはスローライフを手にすることができるのか……。 ※「小説家になろう」、「カクヨム」、「アルファポリス」に同内容のものを投稿しています。 ※この作品以外にもいろいろと小説を投稿しています。よろしければそちらもご覧ください。

最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
 病弱な僕は病院で息を引き取った  お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった  そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した  魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

天才魔導医の弟子~転生ナースの戦場カルテ~

けろ
ファンタジー
【完結済み】 仕事に生きたベテランナース、異世界で10歳の少女に!? 過労で倒れた先に待っていたのは、魔法と剣、そして規格外の医療が交差する世界だった――。 救急救命の現場で十数年。ベテラン看護師の天木弓束(あまき ゆづか)は、人手不足と激務に心身をすり減らす毎日を送っていた。仕事に全てを捧げるあまり、プライベートは二の次。周囲からの期待もプレッシャーに感じながら、それでも人の命を救うことだけを使命としていた。 しかし、ある日、謎の少女を救えなかったショックで意識を失い、目覚めた場所は……中世ヨーロッパのような異世界の路地裏!? しかも、姿は10歳の少女に若返っていた。 記憶も曖昧なまま、絶望の淵に立たされた弓束。しかし、彼女が唯一失っていなかったもの――それは、現代日本で培った高度な医療知識と技術だった。 偶然出会った獣人冒険者の重度の骨折を、その知識で的確に応急処置したことで、弓束の運命は大きく動き出す。 彼女の異質な才能を見抜いたのは、誰もがその実力を認めながらも距離を置く、孤高の天才魔導医ギルベルトだった。 「お前、弟子になれ。俺の研究の、良い材料になりそうだ」 強引な天才に拾われた弓束は、魔法が存在するこの世界の「医療」が、自分の知るものとは全く違うことに驚愕する。 「菌?感染症?何の話だ?」 滅菌の概念すらない遅れた世界で、弓束の現代知識はまさにチート級! しかし、そんな彼女の常識をさらに覆すのが、師ギルベルトの存在だった。彼が操る、生命の根幹『魔力回路』に干渉する神業のような治療魔法。その理論は、弓束が知る医学の歴史を遥かに超越していた。 規格外の弟子と、人外の師匠。 二人の出会いは、やがて異世界の医療を根底から覆し、多くの命を救う奇跡の始まりとなる。 これは、神のいない手術室で命と向き合い続けた一人の看護師が、新たな世界で自らの知識と魔法を武器に、再び「救う」ことの意味を見つけていく物語。

裏の林にダンジョンが出来ました。~異世界からの転生幼女、もふもふペットと共に~

あかる
ファンタジー
私、異世界から転生してきたみたい? とある田舎町にダンジョンが出来、そこに入った美優は、かつて魔法学校で教師をしていた自分を思い出した。 犬と猫、それと鶏のペットと一緒にダンジョンと、世界の謎に挑みます!

処理中です...