病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

アトハ

文字の大きさ
17 / 47

フィアナ、ダンジョン攻略に挑む

しおりを挟む
 エリンちゃんの手を引き駆け出した私は、


「…………ところで、どんなクエストなの?」

 目的地が分からない、という当然の事実に行き当たります。

「えっと……、ダンジョンに潜って魔石を集めてきて欲しいってクエストですね。魔法工学科からの依頼です」
「魔石って?」

「モンスターを倒すと手に入るエネルギー結晶のことです。ちょっと高度な魔導具を動かすためには重宝するらしいですね」
「あ~、これのこと?」

 私はポケットからきらきら輝く石を取り出しました。
 王都に向かう途中で倒したグリズリー・ベアから取ったエネルギー結晶です。

「おぉぉ、すっごい大きい。綺麗です!」

 目をキラキラさせるエリンちゃん。

「どうやって手に入れたんですか?」
「これは来る途中で倒したモンスターから拾いました!」

「来る、途中で倒した……?」
「私の故郷、随分と田舎なので――」

 おっとりと首を傾げていたエリンちゃんでしたが、やがて「そういうこともありますよね」と納得して話を進めます。


「それで目的のダンジョンは、どこにあるの?」
「フィアナちゃん、本当に勢いだけで飛び出したんだね……」
「あはは、面目ない――」

 エリンちゃんから、じっとりとした目を向けられ、私は思わず苦笑いします。

「今回の依頼でいくのは、学園ダンジョンです」
「学園ダンジョン?」
「はい。学園でいくつかダンジョンを管理していて、私たち学生のためにトレーニングの場として提供してくれてるんです」

 聞けば冒険者ギルドと提携したときに、実践練習の場が必要になったそうです。
 教頭のシリウス先生が主導し、いくつかのダンジョンを買い取り、適当なトレーニングの場として使えるように、ダンジョンを"養殖"しているのだそうで、

「そうなんだ。エリンちゃん、物知り!」
「ん……、今日の授業で言ってた」
「そ、そうだっけ?」

(ううっ、エリンちゃんの視線が痛いです……)

 座学の半分を、夢の中で過ごしてしまった私です。

「ダンジョンは、定期的にモンスターを倒して数を減らさないと氾濫――スタンピードを起こすことがある。今回の依頼は、その予防も兼ねてるんだと思う」
「げっ、スタンピード……」

(あの時は、大変だったなあ――)


 嫌な響きの言葉に、私は故郷での日々を思い出しました。
 ルナミリア周辺で3つのダンジョンが同時にスタンピードを起こしたときは、この世の終わりのような景色が見れました。
 これぞ、ど田舎クオリティ―……、2度と味わいたくないものです。

「げっ……?」
「いや、ちょっと故郷でスタンピードに巻き込まれたのを思い出して――」

「それは……、大変」
「まあ、すぐに解決したんですけどね!」

 ちなみにエルシャお母さんが、火山を大爆発させたのはあの時です。
 モンスターの大群が溶岩に押し流され、この世の地獄が拡大しました。
 今となっては、いい思い出――こほん。やっぱり、2度と体験したくはありませんね。

「クエストの内容は分かりました。行きましょう、学園ダンジョン!」
 そうして私は、エリンちゃんの手を引き、元気良く学園ダンジョンに向かって出発するのでした。

 
 第二・学園ダンジョン――それが、今回のクエストの目的地です。
 商業地区の一角に現れたダンジョンであり、材質もサッパリ分からない不思議な建造物が、地下へ地下へと続いているのだそう。

「おさらいすると――敵を倒しながらダンジョンを潜って、第1層のボスを倒して魔石を持ち帰ればクエストクリア。だっけ?」
「はい。といっても私だけだと、ボスまで辿り着けたこともないんだけどね」

 エリンちゃんは、頷きながらも浮かない顔をしています。

「大丈夫です! 大船に乗った気で、ドーンと自分を信じてあげて下さい!」
「その大船、たぶん沈むと思います」
「またそんなことを言って――」

 私は、説得しようと口を開きかけて、

「論より証拠ですね。行きましょう!」

 ダンジョンの扉を開くと、

「たのも~!」
「お、おじゃましまーす……」

 ダンジョン――モンスターの領域へと足を踏み入れるのでした。


 
***
 
 私たちは、ダンジョンの中を進んでいきます。

(おぉぉぉぉ!)
(これが王都クオリティ!)

 建造物タイプのダンジョンを見るのは初めてです。
 ルナミリアの傍にあったダンジョンは、火山だったり、雪山だったり、はたまた真っ暗な洞窟だったりと、面白みに欠けていたのです。

 私は、キョロキョロしながらダンジョンを突き進みます。

「フ、フィアナちゃん? あんまり前に出ないで――」
「わわっ、ごめんなさい」

 エリンちゃんに謝りつつ、

(なんだろう、これ?)

 視界に入ったのは、まんまるの赤いボタン。
 ここまで存在感を放たれると、思わず押してみたくなるのが人情というもの。


(ポチッとな)

 私がボタンを押すと、

 ブーッ!
 何やらけたたましい音で、警報が鳴り始めました。

「エリンちゃん!? どうしよう、なんか鳴りだしました!」
「えっと……、この警報音は――」

 慌てた様子で考え込みんだエリンちゃんですが、


パシュッ!
 その結論を待つことなく、私めがけて壁から矢が放たれるのでした。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、ひょんなことで死亡した僕、シアンは異世界にいつの間にか転生していた。 とは言え、赤子からではなくある程度成長した肉体だったので、のんびり過ごすために自給自足の生活をしていたのだが、そんな生活の最中で、あるメイドゴーレムを拾った。 …‥‥でもね、なんだろうこのメイド、チートすぎるというか、スペックがヤヴァイ。 「これもご主人様のためなのデス」「いや、やり過ぎだからね!?」 これは、そんな大変な毎日を送る羽目になってしまった後悔の話でもある‥‥‥いやまぁ、別に良いんだけどね(諦め) 小説家になろう様でも投稿しています。感想・ご指摘も受け付けますので、どうぞお楽しみに。

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

竜皇女と呼ばれた娘

Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ 国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……

処理中です...