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フィアナ、ダンジョン攻略に挑む
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エリンちゃんの手を引き駆け出した私は、
「…………ところで、どんなクエストなの?」
目的地が分からない、という当然の事実に行き当たります。
「えっと……、ダンジョンに潜って魔石を集めてきて欲しいってクエストですね。魔法工学科からの依頼です」
「魔石って?」
「モンスターを倒すと手に入るエネルギー結晶のことです。ちょっと高度な魔導具を動かすためには重宝するらしいですね」
「あ~、これのこと?」
私はポケットからきらきら輝く石を取り出しました。
王都に向かう途中で倒したグリズリー・ベアから取ったエネルギー結晶です。
「おぉぉ、すっごい大きい。綺麗です!」
目をキラキラさせるエリンちゃん。
「どうやって手に入れたんですか?」
「これは来る途中で倒したモンスターから拾いました!」
「来る、途中で倒した……?」
「私の故郷、随分と田舎なので――」
おっとりと首を傾げていたエリンちゃんでしたが、やがて「そういうこともありますよね」と納得して話を進めます。
「それで目的のダンジョンは、どこにあるの?」
「フィアナちゃん、本当に勢いだけで飛び出したんだね……」
「あはは、面目ない――」
エリンちゃんから、じっとりとした目を向けられ、私は思わず苦笑いします。
「今回の依頼でいくのは、学園ダンジョンです」
「学園ダンジョン?」
「はい。学園でいくつかダンジョンを管理していて、私たち学生のためにトレーニングの場として提供してくれてるんです」
聞けば冒険者ギルドと提携したときに、実践練習の場が必要になったそうです。
教頭のシリウス先生が主導し、いくつかのダンジョンを買い取り、適当なトレーニングの場として使えるように、ダンジョンを"養殖"しているのだそうで、
「そうなんだ。エリンちゃん、物知り!」
「ん……、今日の授業で言ってた」
「そ、そうだっけ?」
(ううっ、エリンちゃんの視線が痛いです……)
座学の半分を、夢の中で過ごしてしまった私です。
「ダンジョンは、定期的にモンスターを倒して数を減らさないと氾濫――スタンピードを起こすことがある。今回の依頼は、その予防も兼ねてるんだと思う」
「げっ、スタンピード……」
(あの時は、大変だったなあ――)
嫌な響きの言葉に、私は故郷での日々を思い出しました。
ルナミリア周辺で3つのダンジョンが同時にスタンピードを起こしたときは、この世の終わりのような景色が見れました。
これぞ、ど田舎クオリティ―……、2度と味わいたくないものです。
「げっ……?」
「いや、ちょっと故郷でスタンピードに巻き込まれたのを思い出して――」
「それは……、大変」
「まあ、すぐに解決したんですけどね!」
ちなみにエルシャお母さんが、火山を大爆発させたのはあの時です。
モンスターの大群が溶岩に押し流され、この世の地獄が拡大しました。
今となっては、いい思い出――こほん。やっぱり、2度と体験したくはありませんね。
「クエストの内容は分かりました。行きましょう、学園ダンジョン!」
そうして私は、エリンちゃんの手を引き、元気良く学園ダンジョンに向かって出発するのでした。
第二・学園ダンジョン――それが、今回のクエストの目的地です。
商業地区の一角に現れたダンジョンであり、材質もサッパリ分からない不思議な建造物が、地下へ地下へと続いているのだそう。
「おさらいすると――敵を倒しながらダンジョンを潜って、第1層のボスを倒して魔石を持ち帰ればクエストクリア。だっけ?」
「はい。といっても私だけだと、ボスまで辿り着けたこともないんだけどね」
エリンちゃんは、頷きながらも浮かない顔をしています。
「大丈夫です! 大船に乗った気で、ドーンと自分を信じてあげて下さい!」
「その大船、たぶん沈むと思います」
「またそんなことを言って――」
私は、説得しようと口を開きかけて、
「論より証拠ですね。行きましょう!」
ダンジョンの扉を開くと、
「たのも~!」
「お、おじゃましまーす……」
ダンジョン――モンスターの領域へと足を踏み入れるのでした。
***
私たちは、ダンジョンの中を進んでいきます。
(おぉぉぉぉ!)
(これが王都クオリティ!)
建造物タイプのダンジョンを見るのは初めてです。
ルナミリアの傍にあったダンジョンは、火山だったり、雪山だったり、はたまた真っ暗な洞窟だったりと、面白みに欠けていたのです。
私は、キョロキョロしながらダンジョンを突き進みます。
「フ、フィアナちゃん? あんまり前に出ないで――」
「わわっ、ごめんなさい」
エリンちゃんに謝りつつ、
(なんだろう、これ?)
視界に入ったのは、まんまるの赤いボタン。
ここまで存在感を放たれると、思わず押してみたくなるのが人情というもの。
(ポチッとな)
私がボタンを押すと、
ブーッ!
何やらけたたましい音で、警報が鳴り始めました。
「エリンちゃん!? どうしよう、なんか鳴りだしました!」
「えっと……、この警報音は――」
慌てた様子で考え込みんだエリンちゃんですが、
パシュッ!
その結論を待つことなく、私めがけて壁から矢が放たれるのでした。
「…………ところで、どんなクエストなの?」
目的地が分からない、という当然の事実に行き当たります。
「えっと……、ダンジョンに潜って魔石を集めてきて欲しいってクエストですね。魔法工学科からの依頼です」
「魔石って?」
「モンスターを倒すと手に入るエネルギー結晶のことです。ちょっと高度な魔導具を動かすためには重宝するらしいですね」
「あ~、これのこと?」
私はポケットからきらきら輝く石を取り出しました。
王都に向かう途中で倒したグリズリー・ベアから取ったエネルギー結晶です。
「おぉぉ、すっごい大きい。綺麗です!」
目をキラキラさせるエリンちゃん。
「どうやって手に入れたんですか?」
「これは来る途中で倒したモンスターから拾いました!」
「来る、途中で倒した……?」
「私の故郷、随分と田舎なので――」
おっとりと首を傾げていたエリンちゃんでしたが、やがて「そういうこともありますよね」と納得して話を進めます。
「それで目的のダンジョンは、どこにあるの?」
「フィアナちゃん、本当に勢いだけで飛び出したんだね……」
「あはは、面目ない――」
エリンちゃんから、じっとりとした目を向けられ、私は思わず苦笑いします。
「今回の依頼でいくのは、学園ダンジョンです」
「学園ダンジョン?」
「はい。学園でいくつかダンジョンを管理していて、私たち学生のためにトレーニングの場として提供してくれてるんです」
聞けば冒険者ギルドと提携したときに、実践練習の場が必要になったそうです。
教頭のシリウス先生が主導し、いくつかのダンジョンを買い取り、適当なトレーニングの場として使えるように、ダンジョンを"養殖"しているのだそうで、
「そうなんだ。エリンちゃん、物知り!」
「ん……、今日の授業で言ってた」
「そ、そうだっけ?」
(ううっ、エリンちゃんの視線が痛いです……)
座学の半分を、夢の中で過ごしてしまった私です。
「ダンジョンは、定期的にモンスターを倒して数を減らさないと氾濫――スタンピードを起こすことがある。今回の依頼は、その予防も兼ねてるんだと思う」
「げっ、スタンピード……」
(あの時は、大変だったなあ――)
嫌な響きの言葉に、私は故郷での日々を思い出しました。
ルナミリア周辺で3つのダンジョンが同時にスタンピードを起こしたときは、この世の終わりのような景色が見れました。
これぞ、ど田舎クオリティ―……、2度と味わいたくないものです。
「げっ……?」
「いや、ちょっと故郷でスタンピードに巻き込まれたのを思い出して――」
「それは……、大変」
「まあ、すぐに解決したんですけどね!」
ちなみにエルシャお母さんが、火山を大爆発させたのはあの時です。
モンスターの大群が溶岩に押し流され、この世の地獄が拡大しました。
今となっては、いい思い出――こほん。やっぱり、2度と体験したくはありませんね。
「クエストの内容は分かりました。行きましょう、学園ダンジョン!」
そうして私は、エリンちゃんの手を引き、元気良く学園ダンジョンに向かって出発するのでした。
第二・学園ダンジョン――それが、今回のクエストの目的地です。
商業地区の一角に現れたダンジョンであり、材質もサッパリ分からない不思議な建造物が、地下へ地下へと続いているのだそう。
「おさらいすると――敵を倒しながらダンジョンを潜って、第1層のボスを倒して魔石を持ち帰ればクエストクリア。だっけ?」
「はい。といっても私だけだと、ボスまで辿り着けたこともないんだけどね」
エリンちゃんは、頷きながらも浮かない顔をしています。
「大丈夫です! 大船に乗った気で、ドーンと自分を信じてあげて下さい!」
「その大船、たぶん沈むと思います」
「またそんなことを言って――」
私は、説得しようと口を開きかけて、
「論より証拠ですね。行きましょう!」
ダンジョンの扉を開くと、
「たのも~!」
「お、おじゃましまーす……」
ダンジョン――モンスターの領域へと足を踏み入れるのでした。
***
私たちは、ダンジョンの中を進んでいきます。
(おぉぉぉぉ!)
(これが王都クオリティ!)
建造物タイプのダンジョンを見るのは初めてです。
ルナミリアの傍にあったダンジョンは、火山だったり、雪山だったり、はたまた真っ暗な洞窟だったりと、面白みに欠けていたのです。
私は、キョロキョロしながらダンジョンを突き進みます。
「フ、フィアナちゃん? あんまり前に出ないで――」
「わわっ、ごめんなさい」
エリンちゃんに謝りつつ、
(なんだろう、これ?)
視界に入ったのは、まんまるの赤いボタン。
ここまで存在感を放たれると、思わず押してみたくなるのが人情というもの。
(ポチッとな)
私がボタンを押すと、
ブーッ!
何やらけたたましい音で、警報が鳴り始めました。
「エリンちゃん!? どうしよう、なんか鳴りだしました!」
「えっと……、この警報音は――」
慌てた様子で考え込みんだエリンちゃんですが、
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