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第6部 俺が『最強』になった理由《ワケ》
第6話 鉄腕チワワ
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人間、『どうしてそうなった?』と、疑ってしまう場面に遭遇することは、人生で数多くあると思う。
例えば放課後。
当たり前のように町を歩いていると、肩から掛けていたバックがスカートの裾に引っかかって、お尻丸出しのまま『これが最新のファッションですよ?』と言わんばかりに毅然とした態度で歩く女子中学生とか、もはや見る者全てに新時代の幕開けを予感させるのは自明の理。
これが女子大生であったのならば、我々は初孫を愛でる老夫婦のように、温かく彼女たちを見守るというのに……世の中、そう上手くは出来ていない。
「――いや、だからって、なんでオイラのパンツをずっと凝視したまま、何も言わなかったんすか!?」
ウガーッ!? と、先ほどまでお尻丸出しどころか、パンツ丸出し状態で街中を歩いていた寅美先輩が、真っ赤な顔をして俺に突っかかってきた。
時刻は午前3時少し過ぎの放課後。
俺たちは無事、駄菓子屋で戦利品を購入し、店の前の公園へとやって来ていたのだが、そこで寅美先輩がパンツ丸出しのまま、学校からここまで歩いて来ていた事を駄菓子屋の婆さんに指摘され、今に至るのであった。
「まぁまぁ、落ち着けよ寅美先輩。『日本昔ばなし』なら1等賞だぞ?」
「だから下手くそぉ!? フォローが下手くそぉっ!?」
誰がお尻を出した子1等賞だ!? と、怒り冷めやらん状態のまま、片手でスカートの裾を抑える寅美先輩(ピンクの水玉)。
彼女の反対の手には、駄菓子がパンパンに詰まった袋が握られていた。
俺は同じく袋にパンパンに詰まった自分用の駄菓子の袋から、ビッグカツを取り出し、ベンチへと腰を下ろした。
「そうカリカリしなさんなって。ほらっ、駄菓子食おうぜ?」
「むぅ……。気づいていたなら、それとなく伝えてくれればいいモノを……」
「それはほら、セクハラになっちゃうし。最近、世間様はそういうのに五月蠅いからさ。特にフェミ団体とか」
そう言って、のらりくらりと寅美先輩の言及を避けるナイスガイ、俺。
これ以上は何を言っても無駄だと悟ったのか、寅美先輩は小さくため息を溢すと、俺の横にちょこんっ! と腰を下ろした。
いやまぁ、寅美先輩の言いたいことも分かるんだけどね。
俺もこの間まで小学生だった女子中学生のパンツを凝視するのは、軽く犯罪行為な気もしなくはなかったが、男とはロマンを追い求める生き物である。
例えソレが間違っていようが、心が真に欲しがるモノであるならば、俺は自分に嘘は吐けない。
人に認めて貰おうとは思わない。
利口だとも思わない。
ただ、自分の心に正直に生きたいだけ。
それだけなんだ。
「えへへ……とうとう駄菓子を買っちゃったべ。それじゃ、さっそく――」
「「――いたただきますっ!」」
ニマニマと笑みを溢す寅美先輩と一緒に、俺は取り出した黄金の衣が眩しいビックカツへと大胆に齧りついた。
途端に口の中に溢れ出る油と、ほんのりとしたカレー風味が鼻を抜けていく。
口の中に広がる旨味の強いソースが、すきっ腹にズガンッ! と広がる。
これが……たまらない。
もちろん本物のトンカツとは明らかに方向性は違うモノの、何故か『俺は今、カツを食っているだ』と確信できるジューシ―さ、この味わい、満足感。
我が姉ともども、小さい頃から大好きな駄菓子の1つである。
この未曾有の不況の昨今、40年間以上変わらず30円でこのクオリティを維持し続ける……いや進化し続けるビックカツには、ほんと頭が上がらない。
ただまぁ、小さい頃は30円というのは子どもにとっては大金だったので、いつも姉ちゃんと金を出し合って、2人で1つのビックカツを買って、分け合ってたっけ。
懐かしいなぁ。
「うっま!? このヨーグルトみたいな駄菓子、美味し過ぎだべ!? なんだべさ、コレ!?」
「あぁ『ヨーグル』ね。分かるわぁ~。ソレ、ちょっとした中毒性があるよな」
「だべっ! これなら一生食べていられるっぺよ!」
俺の隣で、ヨーグルに舌鼓を打っていた寅美先輩が、満面の笑みを浮かべる。
ちなみに『ヨーグル』とは砂糖と香辛料、ショートニングと呼ばれる植物性油脂を合わせてクリーム状にした、ヨーグルト風味の駄菓子である。
こちらもビックカツと同じく、昔ながらの大人気駄菓子の1つで、標準販売価格は20円の、これまた大神姉弟のお気に入りの1品だ。
『これは妖精さんが食べるんだよ?』と言われたら信じてしまいそうな位ちいさい容器に、付属の木ベラで掬って食べる、中々に中毒性が高い駄菓子を、寅美先輩は上機嫌にムシャコラ♪ していく。
「このまったりとした舌ざわり、たまんないべぇ~♪ お兄ちゃんにも、食べさせてあげたいっぺよ」
「なら会いに行く前に、買ってから行くか?」
「だべっ!」
向日葵のようにニッコリ笑って頷く寅美先輩。
だが、すぐさま彼女の笑顔が曇ってしまう。
「どったべ寅美先輩? ヨーグルのおかわりだっぺか? 俺の食うべ?」
「ま、マネするんじゃないっぺ!? ……いや、オイラ、本当にお兄ちゃんに会えるのかなぁ? って思って、ちょっと不安になったべさ」
「大丈夫、大丈夫。今、元気が死ぬ気で探してくれてっから。アイツに任せときゃ、なんとかなる!」
ウハハハハッ! と、ビックカツを咀嚼しながら、あっけらかんと笑ってみせるが、寅美先輩のお顔の曇り予報は一向に晴れない。
ふぅ~む、しょうがない。
アイツを褒めるようで癪に障るが、寅美先輩の笑顔のためだ。
俺は咀嚼していたビックカツを飲み込みながら、暗い顔をする先輩の頭をワシワシと乱暴に撫でまわした。
「うわっぷ!?」
「大丈夫だよ。俺の親友は稀代の大天才だぞ? この世でアイツに出来ないことは、彼女と子作りくらいなモンだ。先輩の兄貴を見つけることくらい、超簡単さ。それこそ、1週間オナ禁するよりも、な」
「シロー君……」
ニカッ! と笑う俺を寅美先輩はマジマジと見つめ。
「『おなきん』って、なんだべさ?」
「おっ、『わさび太郎』買ってんじゃ~ん! 俺の『うまい棒 納豆味』と交換しようぜ、先輩?」
「あぁ~っ!? コラッ、勝手に交換するんやないべさっ! それはオイラの『わさび太郎』さんだべ!?」
ワーキャー言い合いながら、先輩と2人で『もぐもぐタイム』に興じる。
数分後、ひとしきり駄菓子を腹に収めた俺たちは、ベンチに腰を下ろしながら、まったりと春の陽気を全身で味わっていた。
「はぁ~。食った、食ったぁ~」
「うぷっ!? 食い過ぎたべ……。オイラ今日、晩ごはん食べられるのか、心配になってきたべ……」
なんて事を口にしながらも、満足そうに花丸INポイントノートを開き、『駄菓子を買いに行く』と書かれたお題の上に【大変よくできました!】スタンプを押していく寅美先輩。
「昨日、今日でだいぶお題をクリアしたべさ!」
「先輩の兄貴にまた1歩近づいたな。それで? 次のお題はナニよ?」
「ちょっと待つべさ」
寅美先輩は「え~と」と口ごもりながら、次のページをペラッ! と1枚手繰った。
そのページも、相変わらず汚ぇ男の字がミミズみたいにのたくっていて……先輩の兄貴は象形文字が書ける男だったのかな?
「次のお題は……『何か悪いことをする』だそうだべさ」
「おぉ、随分と抽象的な指令ですことね?」
これが社会人の企画者だったら、速攻でお呼び出しを喰らっている所だ。
「う~ん『悪いこと』だべかぁ~……。シロー君、何かやってみたい『悪い事』とかあるべか?」
「急に言われても、パッと思いつかんなぁ。まぁ、そういうのが得意な人間なら思いつくんだが」
「おっ! それは誰だべか?」
あぁ、ソイツは……。
と俺が未来の犯罪者の名前を口にしようとした、その瞬間。
――ブロンッ! ブルルルルルルルルッ!
「見つけたぞ、愚弟ぇぇぇぇぇ――ッッ!!」
突如、まったりとしていた公園内の空気を切り裂くように、バイクの排気音と女性の金切り声が、俺たちの耳朶を激しく叩いた。
俺と寅美先輩は、お股に仕込んだローターを突然ONにされたJKのように、ビックーン!? と身体を震わせながら、弾かれたように声のした方向へと視線を向けた。
そこには1台の燃えるような真っ赤な単車と、学校指定のスカートに、上は『初代 乙女戦線』と書かれた革ジャンという、ファンキーな格好をした紅い髪の女性が、犬歯剥き出しで俺たちの方を睨みつけている姿が目に入った。
「テメェ、あたしの財布からポイントカードを盗みやがったなぁぁぁ~~~ッッ!?!?」
「そうそう、アレアレ。アレが今、俺が紹介しようとした人ね」
「いや、言ってる場合じゃないっぺよ!? あの人、乙女戦線の『鉄腕チワワ』だべよ!? ここら一帯の暴走族を纏めているレディースの総長、鉄腕チワワだべよ!? な、なんでそんなヤバイ女性がこんな場所に!?」
「あぁ、なんだ先輩。姉ちゃんのコト知ってんのか。なら話は早いな」
「に、逃げるっぺよ、シロー君ッ!? ……今、なんて言ったべさ?」
腰を浮かして逃走しようとしていた寅美先輩の身体が、ピタリッ! と停止した。
それはさながら、時間停止モノの大人向けDVDのように、見事な硬直具合だ。
おいおい先輩、急にどうした?
撮影中か?
ちなみに余談だが、時間停止モノは実際には時間は停止していないよ。
止まっているように見せる、女優さんの努力の結晶だね☆
ほんと女優さんには、ムスコ共々頭が下がるよ。
いつもお世話になってます♪
「よっしゃ! 歯ぁ食いしばれ愚弟ぇぇぇぇ――ッッ!!」
「いい機会だ、紹介しよう。今、ゴリラみたいに声を張り上げて、俺たちの方へ急速接近中の、あのアマゾネスの名前は大神千和。私立マリア女学園に通う、華の高校3年生で、我が大神家が誇る偉大なる不良債権」
つまり。
「――俺の姉ちゃんです」
数十秒後、寅美先輩の素っ頓狂な声をBGMに、姉ちゃんの伝家の宝刀、パンツ丸出しドロップキックが俺の顔面を捉えた。
例えば放課後。
当たり前のように町を歩いていると、肩から掛けていたバックがスカートの裾に引っかかって、お尻丸出しのまま『これが最新のファッションですよ?』と言わんばかりに毅然とした態度で歩く女子中学生とか、もはや見る者全てに新時代の幕開けを予感させるのは自明の理。
これが女子大生であったのならば、我々は初孫を愛でる老夫婦のように、温かく彼女たちを見守るというのに……世の中、そう上手くは出来ていない。
「――いや、だからって、なんでオイラのパンツをずっと凝視したまま、何も言わなかったんすか!?」
ウガーッ!? と、先ほどまでお尻丸出しどころか、パンツ丸出し状態で街中を歩いていた寅美先輩が、真っ赤な顔をして俺に突っかかってきた。
時刻は午前3時少し過ぎの放課後。
俺たちは無事、駄菓子屋で戦利品を購入し、店の前の公園へとやって来ていたのだが、そこで寅美先輩がパンツ丸出しのまま、学校からここまで歩いて来ていた事を駄菓子屋の婆さんに指摘され、今に至るのであった。
「まぁまぁ、落ち着けよ寅美先輩。『日本昔ばなし』なら1等賞だぞ?」
「だから下手くそぉ!? フォローが下手くそぉっ!?」
誰がお尻を出した子1等賞だ!? と、怒り冷めやらん状態のまま、片手でスカートの裾を抑える寅美先輩(ピンクの水玉)。
彼女の反対の手には、駄菓子がパンパンに詰まった袋が握られていた。
俺は同じく袋にパンパンに詰まった自分用の駄菓子の袋から、ビッグカツを取り出し、ベンチへと腰を下ろした。
「そうカリカリしなさんなって。ほらっ、駄菓子食おうぜ?」
「むぅ……。気づいていたなら、それとなく伝えてくれればいいモノを……」
「それはほら、セクハラになっちゃうし。最近、世間様はそういうのに五月蠅いからさ。特にフェミ団体とか」
そう言って、のらりくらりと寅美先輩の言及を避けるナイスガイ、俺。
これ以上は何を言っても無駄だと悟ったのか、寅美先輩は小さくため息を溢すと、俺の横にちょこんっ! と腰を下ろした。
いやまぁ、寅美先輩の言いたいことも分かるんだけどね。
俺もこの間まで小学生だった女子中学生のパンツを凝視するのは、軽く犯罪行為な気もしなくはなかったが、男とはロマンを追い求める生き物である。
例えソレが間違っていようが、心が真に欲しがるモノであるならば、俺は自分に嘘は吐けない。
人に認めて貰おうとは思わない。
利口だとも思わない。
ただ、自分の心に正直に生きたいだけ。
それだけなんだ。
「えへへ……とうとう駄菓子を買っちゃったべ。それじゃ、さっそく――」
「「――いたただきますっ!」」
ニマニマと笑みを溢す寅美先輩と一緒に、俺は取り出した黄金の衣が眩しいビックカツへと大胆に齧りついた。
途端に口の中に溢れ出る油と、ほんのりとしたカレー風味が鼻を抜けていく。
口の中に広がる旨味の強いソースが、すきっ腹にズガンッ! と広がる。
これが……たまらない。
もちろん本物のトンカツとは明らかに方向性は違うモノの、何故か『俺は今、カツを食っているだ』と確信できるジューシ―さ、この味わい、満足感。
我が姉ともども、小さい頃から大好きな駄菓子の1つである。
この未曾有の不況の昨今、40年間以上変わらず30円でこのクオリティを維持し続ける……いや進化し続けるビックカツには、ほんと頭が上がらない。
ただまぁ、小さい頃は30円というのは子どもにとっては大金だったので、いつも姉ちゃんと金を出し合って、2人で1つのビックカツを買って、分け合ってたっけ。
懐かしいなぁ。
「うっま!? このヨーグルトみたいな駄菓子、美味し過ぎだべ!? なんだべさ、コレ!?」
「あぁ『ヨーグル』ね。分かるわぁ~。ソレ、ちょっとした中毒性があるよな」
「だべっ! これなら一生食べていられるっぺよ!」
俺の隣で、ヨーグルに舌鼓を打っていた寅美先輩が、満面の笑みを浮かべる。
ちなみに『ヨーグル』とは砂糖と香辛料、ショートニングと呼ばれる植物性油脂を合わせてクリーム状にした、ヨーグルト風味の駄菓子である。
こちらもビックカツと同じく、昔ながらの大人気駄菓子の1つで、標準販売価格は20円の、これまた大神姉弟のお気に入りの1品だ。
『これは妖精さんが食べるんだよ?』と言われたら信じてしまいそうな位ちいさい容器に、付属の木ベラで掬って食べる、中々に中毒性が高い駄菓子を、寅美先輩は上機嫌にムシャコラ♪ していく。
「このまったりとした舌ざわり、たまんないべぇ~♪ お兄ちゃんにも、食べさせてあげたいっぺよ」
「なら会いに行く前に、買ってから行くか?」
「だべっ!」
向日葵のようにニッコリ笑って頷く寅美先輩。
だが、すぐさま彼女の笑顔が曇ってしまう。
「どったべ寅美先輩? ヨーグルのおかわりだっぺか? 俺の食うべ?」
「ま、マネするんじゃないっぺ!? ……いや、オイラ、本当にお兄ちゃんに会えるのかなぁ? って思って、ちょっと不安になったべさ」
「大丈夫、大丈夫。今、元気が死ぬ気で探してくれてっから。アイツに任せときゃ、なんとかなる!」
ウハハハハッ! と、ビックカツを咀嚼しながら、あっけらかんと笑ってみせるが、寅美先輩のお顔の曇り予報は一向に晴れない。
ふぅ~む、しょうがない。
アイツを褒めるようで癪に障るが、寅美先輩の笑顔のためだ。
俺は咀嚼していたビックカツを飲み込みながら、暗い顔をする先輩の頭をワシワシと乱暴に撫でまわした。
「うわっぷ!?」
「大丈夫だよ。俺の親友は稀代の大天才だぞ? この世でアイツに出来ないことは、彼女と子作りくらいなモンだ。先輩の兄貴を見つけることくらい、超簡単さ。それこそ、1週間オナ禁するよりも、な」
「シロー君……」
ニカッ! と笑う俺を寅美先輩はマジマジと見つめ。
「『おなきん』って、なんだべさ?」
「おっ、『わさび太郎』買ってんじゃ~ん! 俺の『うまい棒 納豆味』と交換しようぜ、先輩?」
「あぁ~っ!? コラッ、勝手に交換するんやないべさっ! それはオイラの『わさび太郎』さんだべ!?」
ワーキャー言い合いながら、先輩と2人で『もぐもぐタイム』に興じる。
数分後、ひとしきり駄菓子を腹に収めた俺たちは、ベンチに腰を下ろしながら、まったりと春の陽気を全身で味わっていた。
「はぁ~。食った、食ったぁ~」
「うぷっ!? 食い過ぎたべ……。オイラ今日、晩ごはん食べられるのか、心配になってきたべ……」
なんて事を口にしながらも、満足そうに花丸INポイントノートを開き、『駄菓子を買いに行く』と書かれたお題の上に【大変よくできました!】スタンプを押していく寅美先輩。
「昨日、今日でだいぶお題をクリアしたべさ!」
「先輩の兄貴にまた1歩近づいたな。それで? 次のお題はナニよ?」
「ちょっと待つべさ」
寅美先輩は「え~と」と口ごもりながら、次のページをペラッ! と1枚手繰った。
そのページも、相変わらず汚ぇ男の字がミミズみたいにのたくっていて……先輩の兄貴は象形文字が書ける男だったのかな?
「次のお題は……『何か悪いことをする』だそうだべさ」
「おぉ、随分と抽象的な指令ですことね?」
これが社会人の企画者だったら、速攻でお呼び出しを喰らっている所だ。
「う~ん『悪いこと』だべかぁ~……。シロー君、何かやってみたい『悪い事』とかあるべか?」
「急に言われても、パッと思いつかんなぁ。まぁ、そういうのが得意な人間なら思いつくんだが」
「おっ! それは誰だべか?」
あぁ、ソイツは……。
と俺が未来の犯罪者の名前を口にしようとした、その瞬間。
――ブロンッ! ブルルルルルルルルッ!
「見つけたぞ、愚弟ぇぇぇぇぇ――ッッ!!」
突如、まったりとしていた公園内の空気を切り裂くように、バイクの排気音と女性の金切り声が、俺たちの耳朶を激しく叩いた。
俺と寅美先輩は、お股に仕込んだローターを突然ONにされたJKのように、ビックーン!? と身体を震わせながら、弾かれたように声のした方向へと視線を向けた。
そこには1台の燃えるような真っ赤な単車と、学校指定のスカートに、上は『初代 乙女戦線』と書かれた革ジャンという、ファンキーな格好をした紅い髪の女性が、犬歯剥き出しで俺たちの方を睨みつけている姿が目に入った。
「テメェ、あたしの財布からポイントカードを盗みやがったなぁぁぁ~~~ッッ!?!?」
「そうそう、アレアレ。アレが今、俺が紹介しようとした人ね」
「いや、言ってる場合じゃないっぺよ!? あの人、乙女戦線の『鉄腕チワワ』だべよ!? ここら一帯の暴走族を纏めているレディースの総長、鉄腕チワワだべよ!? な、なんでそんなヤバイ女性がこんな場所に!?」
「あぁ、なんだ先輩。姉ちゃんのコト知ってんのか。なら話は早いな」
「に、逃げるっぺよ、シロー君ッ!? ……今、なんて言ったべさ?」
腰を浮かして逃走しようとしていた寅美先輩の身体が、ピタリッ! と停止した。
それはさながら、時間停止モノの大人向けDVDのように、見事な硬直具合だ。
おいおい先輩、急にどうした?
撮影中か?
ちなみに余談だが、時間停止モノは実際には時間は停止していないよ。
止まっているように見せる、女優さんの努力の結晶だね☆
ほんと女優さんには、ムスコ共々頭が下がるよ。
いつもお世話になってます♪
「よっしゃ! 歯ぁ食いしばれ愚弟ぇぇぇぇ――ッッ!!」
「いい機会だ、紹介しよう。今、ゴリラみたいに声を張り上げて、俺たちの方へ急速接近中の、あのアマゾネスの名前は大神千和。私立マリア女学園に通う、華の高校3年生で、我が大神家が誇る偉大なる不良債権」
つまり。
「――俺の姉ちゃんです」
数十秒後、寅美先輩の素っ頓狂な声をBGMに、姉ちゃんの伝家の宝刀、パンツ丸出しドロップキックが俺の顔面を捉えた。
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