『番』という存在

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本編

出会い

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ゴーンゴーン

「ん?もう朝?えっ!私あのまま寝ちゃったの!ご飯食べそびれたわ。今日の予定も決めてないし。とりあえず、着替えて市場にでも行こうかしら。」

着替えて部屋を出ると、サンドイッチと皮袋に入ったお金が置いてあった。料理長が置いてくれたのかしら、明日お礼を言わなくちゃね。

ありがたく、サンドイッチとお金を持って市場に向かった。

「いらっしゃい!お嬢ちゃん、うちの焼き串はどうだい?」

「いやいや、お嬢ちゃん。こっちの新鮮な海鮮串はどうだい?」

「ごめんなさーい!もう、ご飯は決まっているのー!」

そんな声を掛け合いながら、噴水のある広場に座って、サンドイッチを食べ始めた。

「う~ん!美味しい!料理長また腕を上げたのね。私も料理長の新作料理を食べたいわ。さて、お腹もいっぱいになったし、ちょっと散策しようかな。」

色々見ていたらあっという間にお昼になり、通りすがりの人が話していたカフェに入ってみたが当たりだった。ご飯もとても美味しくてセットでつけられるデザートがまた格別だったのだ!

満足しながら店を出て、少し散策して日が傾いてきたので帰ろうかと思っていたら、誰かにぶつかってしまった。

「すみません!お怪我はありませんか…」

「ええ、大丈夫です。私こそ申し訳ありませんでした。…どうかしましたか?」

「いえ、なんでもありません。お詫びに何か贈らせてください。」

「え、そんなのいいですよ。私も周りを見ていなかったのでおあいこです!」

「では、少し一緒に街を見て回りませんか?」

ぶつかってしまった人は、フードをかぶっていてよく顔がわからなかったが、声がとても優しくて思わず頷いてしまった。

「あ、でも少しでもいいですか?明日は朝早いので。」

「でしたら、そのまま送りますよ。ではいきましょうか。」

「えっちょっ、」

私の返事も聞かずに、手を握って歩き出してしまった。

思ったより大きい手だな、と少しときめいてしまったが、あわてて首を振って冷静になる。
その時、いつも可愛いなと思っている宝石屋を見つけて声が出てしまった。

「どうかしましたか?あぁ、宝石屋ですか。入ってみます?」

「いえ、いいです。わたしには手が届かないのでガラス越しに見るくらいがちょうどいいんです。」

「なおさら、入りましょう!わたしがいれば見るだけでも大丈夫ですよ。」

「えっ、それはどういう…」

その人はわたしの手を繋いだままお店に入ってしまう。いらっしゃいませ、と店主らしき人が声をかけたがこちらによって来ることなく見ていたので、少しくらいならと少しだけ見ることにした。

「わぁー!すごい綺麗。どれも可愛いな。あ。」

「どうしたの?あ、これ?」

「はい、とても綺麗だなと思って。いつかお金を貯めて買いたいです!」

「じゃあ、さっきぶつかったお礼にこれを送ることにしよう。店主、これをもらえるかい?」

そう言って、わたしが惹かれた指輪を買おうとしている。

「ちょっと待ってください。こんな高価なものはもらえませんよ。大丈夫ですから!」

「そうか、そしたらこれは他の誰かに渡さなきゃいけないな。でもこれ一点物だよね。なくなっちゃうけどいいの?君が素直にもらってくれると私も嬉しいのだけど。」

うーん、言われてみればこんなふうに綺麗に細工された模様に綺麗なダイヤモンドが絶妙にはまっているのはこれくらいしかないと思うが…でも…でも……

「わかりました、謹んでいただきます。」

「そんなに身構えないで、気楽にもらってよ。はい!」

その人は指輪を左手の薬指につけてくれた。とても綺麗で目を奪われる…

「本当にありがとうございます!大切にしますね。」

「うん、そう言ってもらえるのが1番嬉しい。その指輪とても似合っているよ。じゃあ、だいぶ日も暮れてきたから送っていくよ。」

「いえ、大丈夫です。ちょうどこちらの方角ですぐなので!あ!私もお詫びしないと、どうしよう。」

「大丈夫、今度会った時でいいよ。楽しみに待ってるね。」

ちゅっ。っとおでこにキスをして去っていった。フリーズしていた私が動き出した頃には彼の姿は見えなくなっていた。

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