『番』という存在

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本編

理不尽な怒り

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屋敷に帰ると、部屋の前にアナスタシアが待っていた。

「やっと見つけたわ。あんたがアレンジしたドレスがみすぼらしいせいでカイル様に見向きもされなかったじゃないの!どうしてくれるの?」

ずんずんと近づいてきて、扇越しに睨んできた。よくわからないが機嫌がとても悪いみたいなので頭を下げてて謝って過ぎ去るのを待とう。

「申し訳ございませんでした。今後はもっと目を引くようなものにします。」

謝ってもアナスタシアの怒りは収まらないらしく、扇を振り上げて下げていた頭に振り下ろした。

「っつ。申し訳ございません。アナスタシアお嬢様。」

「その汚い口で私の名前を呼ばないでよ。顔を上げて。」

さらに怒りが増していき、逆らうことが出来ずに顔を上げた。
バシッと大きな音を立てて、頬に直撃した。とても痛くて涙目になったが、声を上げることもできず、何度か打たれた。

「はぁ、もういいわ。今日のところろはこれで許してあげるわ、感謝しなさいよ。ふふ、あんたにはその顔の方が顔のほうがお似合いよ。」

満足したように去っていくアナスタシアが見えなくなったところで自分の部屋に入り、ベッドに倒れ込んだ。痛くて、悲しくて、涙が出て来る。

「っふ、ふぇ、痛いよ…、うぇーん…」

枕に顔を沈めて声を押し殺して泣いた。

手を握って痛みを逃がそうとした時に、左手にはまっているあの人からもらった指輪を見て少し気持ちが落ち着いた。とても優しい人だったな。



お母様が亡くなってからもう5年、私を取り巻く環境はガラリと変わった。ドレスを着ることも許されず、お母様の形見も取り上げられどこにあるかわからず、今まで過ごした部屋も奪われて、こんなメイドの仕事をさせられている…

お父様に助けを求めようとしたけど、全然家に帰ってきてくれず事態は悪化するばかりだった。
最初の頃は、私付きのメイドが庇ってくれたりもしたけれど、アナスタシアのメイドにいじめられたり、辞めさせられたりしたら、次第に誰も私に近づかなくなっていた。執事長は、陰ながら支えてくれてるのはわかるけどあまり下手な行動をすると、奥様…お義母様に何されるかわからないからあまり表立って動けない。

私は死ぬまでこうなんだろうか、と思ったこともあったけど、やっと仕事にも慣れてきたから休みの日にお出かけしたり、ポジティブに考えられるようになってきたが、それでも今日みたいなことが起こるととても悲しく、悔しくなる。



でも、今日はそれ以外に楽しかったことも、嬉しかったこともあったから乗り越えていける。
指輪がアナスタシアに見つからなくてよかったわ。これどうしよう、見つからないように閉まっておく…よりは身に付けていた方が安全だわ。これまで取られたら今度こそ立ち直れなくなりそう。裁縫箱の中から良さそうな革紐を見つけたので指輪を通して目立たないように服の中に隠れる長いさにして首から下げた。

「これで大丈夫かな…もし見つかっても安物だと言おう。そうすればそんな安物には興味をなくすはずだ。」

気分が少し良くなったけど、顔の傷の手当てをして早めに寝ないと熱が出そう。
手早く手当をして明日に備えて寝ることにした。



それから、2、3日経ったが、頬の傷はあまり良くなっておらず体調もあまり良くない。だが、今日は客間のセットを完了させたら仕事が終わりだから頑張ろう!

だが、体がうまく動かず仕事が進まない。心なしか熱が上がってきた気がする。早く終わらせないとお客様が来てしまう。でも、終わると同時にあっこれは無理だ、この後すごく怒られるんだろうなと、思いながら意識が遠のいていった。


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