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5章 エイリアン・セルフィ―
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「ど、どういう意味ですか、それ?」
「美容整形手術は誰でも理想の顔になれる魔法ではありません。少しばかり、目を大きくしたり、鼻を高くしたり、顔を小さく見せる程度のことしかできないのです。どんな技術にも、限界というものがあるのです。そう、どう顔をいじっても、生身の人間はこんな宇宙人のような顔にはなれないわけなのです」
ウロマは再びノートパソコンを反転させ、画面を萌花に見せた。今度は、表示されているのは、つい先日投稿されたばかりの萌花の自撮り写真のようだった。それはヘッダーの画像に比べると、さらにいっそう目は大きく、肌は白く、アゴは細く小さく修正されていて、不自然さと不気味さがましていた。なるほど、確かに人類よりはリトルグレイに近い。
「人間の顔は写真のように簡単に加工、修正できるものではありません。これがあなたの理想の顔だということはよくわかりますが、美容整形手術でこの顔を手に入れることは無理です。むしろ、本来の顔のバランスが崩れて、ひどい結果になる可能性もあります」
「そんなの、やってみなくちゃわかんないじゃないですか!」
「やってみて、失敗してからでは遅いのですよ? 一度メスを入れてしまったら、もう二度と元の顔には戻れません」
「じゃあ、どうすればいいんですか! 私、ずっとこんな顔でいろっていうんですか! 整形しかないじゃないですか!」
「まあまあ、落ち着いてください。実はここからが本題です」
と、そこでウロマはニヤリと笑った。
「ここだけの話ですが、最近は美容整形手術に頼らないやり方で、顔を変えることも可能なのです。しかも、それは美容整形手術に比べると肉体的な負担は少なく、とても自然に、ごく短時間で顔を変えることができます」
「本当に?、それって、新しいメイクか何かですか?」
「いえ、使うのは化粧品ではありませんよ。これです」
そう言って、ウロマは再び右手を掲げた。今度はそこには肌色の薄いシートのようなものが握られていた。よく見ると顔の形のように、目の部分に二つ、口の部分に一つ、穴が開いている。これはもしや……。
「パックですか?」
「はい。お顔にこう、つけるものです」
萌花にうなずくと、ウロマは一瞬、それを自分の顔のすぐ前で展開した。
「これには特別な美容液をたっぷり浸み込ませてあります。使い方は簡単です。夜、ベッドや布団に入る前にこれを顔につけ、そのまま眠るだけです。それで、朝にはすっかり見違えるような美しい顔になっていることでしょう」
「え? パックで顔が変わるんですか? 一晩で?」
萌花は当然、半信半疑のようだったが、
「もちろん、普通のパックと同じように美肌効果もしっかりあります。肌荒れにもよく効きますよ」
「本当ですか!」
肌によいと聞いたとたん、がっつり食いついてきた。実際、さきほど灯美が見たところ肌が荒れていたし、気にしているのだろう。たかがパックとはいえ、それぐらいの効果ならありそうだし。
「私、それ買います! いくらですか?」
「はは。そうあわてないでください。未成年のあなたに、いきなり何か商品を売りつけようという話ではないのです。まずは、一週間分のサンプルをお試しください」
ウロマは椅子から立ち上がって萌花に近づき、そのひざの上にパックを数枚置いた。
「サンプル? これタダで使っていいんですか?」
「ええ、もちろん。こういうのは人ぞれぞれ、肌に合う、合わないがありますからね。まずは実際に使ってもらうのが一番なのですよ」
「そうなんですか。ありがとうございます!」
萌花は心から感謝しているようだった。完全にウロマの言葉を信用しきっている様子だ……。
やがて、「美容整形のお悩みについては、また一週間後にお話しましょう」ということになって、彼女はそのままカウンセリングルームを出て行った。
「先生、またあんなの押し付けちゃって。どうせ本当は、使ったらひどい顔になるとかなんでしょう」
「いえいえ。僕は嘘はついていませんよ。彼女は間違いなく、あのパックで理想の顔を手に入れられるはずです」
ウロマはお気に入りの錠菓を口に放り込みながら、ニヤリと笑った。
「美容整形手術は誰でも理想の顔になれる魔法ではありません。少しばかり、目を大きくしたり、鼻を高くしたり、顔を小さく見せる程度のことしかできないのです。どんな技術にも、限界というものがあるのです。そう、どう顔をいじっても、生身の人間はこんな宇宙人のような顔にはなれないわけなのです」
ウロマは再びノートパソコンを反転させ、画面を萌花に見せた。今度は、表示されているのは、つい先日投稿されたばかりの萌花の自撮り写真のようだった。それはヘッダーの画像に比べると、さらにいっそう目は大きく、肌は白く、アゴは細く小さく修正されていて、不自然さと不気味さがましていた。なるほど、確かに人類よりはリトルグレイに近い。
「人間の顔は写真のように簡単に加工、修正できるものではありません。これがあなたの理想の顔だということはよくわかりますが、美容整形手術でこの顔を手に入れることは無理です。むしろ、本来の顔のバランスが崩れて、ひどい結果になる可能性もあります」
「そんなの、やってみなくちゃわかんないじゃないですか!」
「やってみて、失敗してからでは遅いのですよ? 一度メスを入れてしまったら、もう二度と元の顔には戻れません」
「じゃあ、どうすればいいんですか! 私、ずっとこんな顔でいろっていうんですか! 整形しかないじゃないですか!」
「まあまあ、落ち着いてください。実はここからが本題です」
と、そこでウロマはニヤリと笑った。
「ここだけの話ですが、最近は美容整形手術に頼らないやり方で、顔を変えることも可能なのです。しかも、それは美容整形手術に比べると肉体的な負担は少なく、とても自然に、ごく短時間で顔を変えることができます」
「本当に?、それって、新しいメイクか何かですか?」
「いえ、使うのは化粧品ではありませんよ。これです」
そう言って、ウロマは再び右手を掲げた。今度はそこには肌色の薄いシートのようなものが握られていた。よく見ると顔の形のように、目の部分に二つ、口の部分に一つ、穴が開いている。これはもしや……。
「パックですか?」
「はい。お顔にこう、つけるものです」
萌花にうなずくと、ウロマは一瞬、それを自分の顔のすぐ前で展開した。
「これには特別な美容液をたっぷり浸み込ませてあります。使い方は簡単です。夜、ベッドや布団に入る前にこれを顔につけ、そのまま眠るだけです。それで、朝にはすっかり見違えるような美しい顔になっていることでしょう」
「え? パックで顔が変わるんですか? 一晩で?」
萌花は当然、半信半疑のようだったが、
「もちろん、普通のパックと同じように美肌効果もしっかりあります。肌荒れにもよく効きますよ」
「本当ですか!」
肌によいと聞いたとたん、がっつり食いついてきた。実際、さきほど灯美が見たところ肌が荒れていたし、気にしているのだろう。たかがパックとはいえ、それぐらいの効果ならありそうだし。
「私、それ買います! いくらですか?」
「はは。そうあわてないでください。未成年のあなたに、いきなり何か商品を売りつけようという話ではないのです。まずは、一週間分のサンプルをお試しください」
ウロマは椅子から立ち上がって萌花に近づき、そのひざの上にパックを数枚置いた。
「サンプル? これタダで使っていいんですか?」
「ええ、もちろん。こういうのは人ぞれぞれ、肌に合う、合わないがありますからね。まずは実際に使ってもらうのが一番なのですよ」
「そうなんですか。ありがとうございます!」
萌花は心から感謝しているようだった。完全にウロマの言葉を信用しきっている様子だ……。
やがて、「美容整形のお悩みについては、また一週間後にお話しましょう」ということになって、彼女はそのままカウンセリングルームを出て行った。
「先生、またあんなの押し付けちゃって。どうせ本当は、使ったらひどい顔になるとかなんでしょう」
「いえいえ。僕は嘘はついていませんよ。彼女は間違いなく、あのパックで理想の顔を手に入れられるはずです」
ウロマはお気に入りの錠菓を口に放り込みながら、ニヤリと笑った。
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