『出来損ない』と言われた私は姉や両親から見下されますが、あやかしに求婚されました

宵原リク

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第15話覚醒の椿、そして決着

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 姉が去っていった翌日。
 屋敷の庭には、まだ昨夜の戦いの名残が残っていた。
 吹き荒れた風の跡、焦げた土、式神が散った痕――全部が夢のようで、でも確かにそこにあった。

 私は縁側に座り、胸に手を当てる。
 そこには、まだあの白い光の余韻が残っていた。

「……これが、私の力……」

 ずっと出来損ないと言われてきた。
 それを信じていた。
 本当は、力があったのに――封じられていたなんて。

 悔しい。
 悲しい。
 でも、今はそれ以上に――怖くない。

 政宗さんがそばにいてくれるから。

『椿様』

 振り向くと、政宗さんが静かに歩いてくる。
 私の隣に座り、庭を見つめながら言った。

『今日、来ます』

「……お姉さまが?」

『はい。昨夜の反応を見る限り、椿様の力を扱えるうちに取り戻すつもりでしょう』

 政宗さんの声は落ち着いていた。
 けれどその瞳は鋭く、どこか悲しげだった。

『本当は……戦わせたくありません。
 椿様は、戦うために生きているわけではないのですから』

「戦いたいわけじゃないよ……でも」

 私は拳をぎゅっと握る。

「逃げても、きっと追ってくる。
 なら、もう……終わらせたい」

 政宗さんは、優しく私の手を包んだ。

『私がいます。
 椿様の力が完全に覚醒すれば、恐れるものは何もありません』

 その言葉に、胸の奥で静かに火が灯る。

 ――守られるだけじゃなくて、私も守りたい。

 政宗さんの笑顔を。
 大切な人たちの居場所を。
 そして、自分を。

 そんな思いを抱いた瞬間――

 屋敷を包む結界が、震えた。

『来ましたね』

 政宗さんが立ち上がり、私の手を握る。

 空が黒く染まるように、式神が覆い尽くし――
 その中心に、姉がいた。

『椿! いい子だから……戻ってきなさい』

 姉の声は優しい。
 でも、もう誤魔化されない。

「戻らないよ。
 私は、もう出来損ないじゃない」

 姉の表情がピクリと歪む。

『なら証明してみせなさい……その力で!』

 式神たちが一斉に襲いかかる。
 空が揺れ、地面が震える。

 私は深く息を吸い、胸に手を当てる。

 ――守りたい。

 その瞬間、白い光が再び私を包んだ。

 政宗さんの声が聞こえる。

『椿様! 大丈夫です、そのまま――開くのです!』

 光が強まる。
 白い風が周囲を巻き込み、式神たちを弾き飛ばす。

 姉が目を見開く。

『馬鹿な……封印が……完全に……!?』

「違うよ。
 私が開いたんだよ。
 政宗さんが、私を呼んでくれたから」

 手を前にかざすと、白い紋様が空間に浮かび上がる。
 それは八代家のどの式でもない。
 私だけの、純白の紋。

『……あれは……白霊印《はくれいいん》!?
 伝説級の……! 椿、あなた……本当に……!』

「お姉さま。
 私のこと、人形みたいに扱わないで」

 光が溢れる。
 風が歌うように響く。

 そして――私はそっと目を開けた。

「――消えて」

 その一言で、式神の群れが弾けるように消えた。
 まるで煙のように、跡形もなく。

 姉は崩れ落ちるように空中で震えた。

『椿……あなたは……化け物よ……!』

 私は静かに首を振る。

「違うよ。
 私は椿。
 政宗さんに名前を呼んでもらえた私」

 政宗さんが、そっと私の肩に手を回す。

『その通りです。
 椿様は、誰よりも優しく、美しい方だ』

 姉は歯を食いしばりながら、式を再び呼ぼうとした。
 でも――力が足りない。
 私の光に圧されて、術が霧散する。

『……そんな……ありえない……八代家が……負けるなんて……』

 その場に膝をつく姉。

 私はゆっくりと一歩近づいた。

「負けたんじゃないよ、お姉さま。
 ただ――私が、やっと自分になれただけ」

 姉の肩が小さく震える。

『椿……あなたは……ずっと……』

「うん。ずっと怖かった。
 でももう、逃げないよ」

 政宗さんが、私の手を取る。

『帰りましょう、椿様』

 私は姉を一度振り返った。

「ありがとう、お姉さま。
 ……さよなら」

 そう呟いて、政宗さんと共に背を向けた。

 風が吹き、光が静かに消えていく。

 この瞬間――
 私は過去を終わらせ、新しい自分になれた気がした。
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