【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純

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冬の寒さに身も心も凍えてしまいます

ロイスナーの冬 2

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「ふぅ」

 あの日のことを思い出せば、今でもまだ心は冷え、ため息が口からこぼれ落ちる。
 ただ、そんなことで落ち込んでいる場合じゃない、何とかしてベルンハルトとの距離を縮めようと、様々な手段を用いてきた。ベルンハルトにまとわりついてみたり、反対にそっけなくしてみたり。
 食事も毎食、場所を変え品を変え、最大限努力したつもりだ。

 そして、ついに食事を諦め、せめてお茶ならどうかと、誘ったのが数日前のこと。呆気なく玉砕したのだが。
 最近ではお互いにムキになっているだけの気がしてならない。衝立でもして、一緒に食事をしてくれないだろうか。

(衝立……そうよ! 衝立! それなら、ベルンハルト様の仮面の下を見ることもないわ)

「うふふん。それなら、早速衝立を用意しなきゃ」

 顔を隠すだけならば、カーテンの様に布でも良いだろうと、自分の引き出しに手をかける。
 そこで見つけたのは、温室で一晩明かした日に手に入れた温かな毛布。それを誰かにかけてもらった日から、もう季節が二つ過ぎた。
 あの日を思い出すように、リーゼロッテは久しぶりに毛布に触れる。

(この手触り、知ってる!)

 リーゼロッテは衝立のことはすぐさま頭の隅に放り出して、触った毛布を取り出した。
 そしてすぐに寝台へと上がり込む。寝台には数日前に入れてもらった毛布がある。掛け布団の中の毛布に手を入れ、その手触りに目を見張った。

 温室で手に入れた毛布と同じ手触りのものがそこにある。
 王城で使われているものとは、明らかに質の違う毛布。それがロイスナーの城に存在した。豪雪地帯のロイスナーだからこそ、シュレンタットのものよりも温かくて柔らかい。
 そんな毛布を胸に抱きしめて、リーゼロッテにそれをかけてくれた人物を想像する。

 温室で出会った、ベルンハルトだ。

 ロイスナーの城にある毛布。
 温室で微笑んだベルンハルト。
 やはり、毛布をかけてくれたのはベルンハルトだろうか。それならば何故、そう打ち明けてはくれないのだろうか。

 寝台の上に横になるも、一人で使うにはあまりにも大きい寝台は、毛布に包まれていても何となく寒々しい。
 初めてここで眠りにつく日は、新しい寝台に、布団に、結婚してからの初めての夜に、緊張で眠れなかった。
 そんな思いも二ヶ月も経てば薄れてきて、今では朝までぐっすりなのだが。未だにベルンハルトと過ごすことのない夜の時間がリーゼロッテは好きではない。
 早く眠りについて、早く朝が来ないものかと、毎晩誰よりも先に灯りを消す。そして寂しさを感じるよりも先に、睡魔にその身を預けるのだ。

 あの日、自ら頭の中で否定した可能性をもう一度呼び起こす。
 バルタザールを連れて出て行ったベルンハルトが、もう一度温室に戻ってきてくれたこと。
 木の根元で眠りこける自分に、優しくかけてくれた毛布。
 愛されているなんて、そんなことを思える自信なんてない。でも、少しぐらい好意を持ってもらえているんじゃないか、せめて、この城に居ても良いと思えるだけの自信が欲しい。

 誰にも愛された覚えの無いリーゼロッテは、そんな些細な自信すら、持ち合わせていなかった。

 国王の命令だから、受け入れざるを得ない。
 そんな風にベルンハルトが考えていたとしても、それを盾にこの城に居座るしかない。
 リーゼロッテには、戻る道は残されていない。

 今夜もまた、心の中でくすぶる寂しさに蓋をして、その寂しさごと優しく包み込んでくれる睡魔に身を委ねる。
 ただし、今夜はあの毛布を胸に抱いて眠ろう。
 空想の中だけでも、ベルンハルトに思われている自分を描こう。
 温室の中で、バルタザールからかばってくれたあの優しさに存分に甘えよう。

 目が覚めればまた、ロイスナーに居るための努力を重ねなければならない。
 少しでもお互いにとって居心地の良い場所になるように。ベルンハルトに不快な思いをさせないように。仮面の奥のあの瞳に、嫌悪が広がらないように。
 もしかしたら見当違いの努力かもしれない。既に無駄なことなのかもしれない。
 それでも、リーゼロッテにそれをしない選択はない。
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