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陽射しも風も、何もかもが暖かな春
ベルンハルトの贈りもの 2
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「ベルンハルト様の仰る『父に似てきた』は褒め言葉でしょうか?」
「褒め言葉では、ないかもしれぬ」
「それは失礼致しました。何も、気づかぬ方が良かったのかもしれませんね」
「いや、それは……」
ヘルムートに似てきたというのは、単純な褒め言葉ではない。それは間違いなく本心だ。
だが、ヘルムートの手回し、先読み、その手腕を頼りにしている自分がいるのも事実で。周到に整えられた道の上を歩いていけることを、心地よいとも感じる。
「それで、何を買うおつもりですか?」
ベルンハルトが言葉に詰まっていれば、会話を先へ進めようとアルベルトが声を出す。
「あ、いや、それは」
「おや、私にも隠しておきたいものですか? お一人で王都で買い物をされる気でしたか? それも構いませんが……あぁ! 失礼致しました。ベルンハルト様にもそういうときがあるということですね。いや、それでしたらやはり、それなりの方を準備させていただかないと……」
アルベルトの声は尻すぼみで、途中から何を話しているのか聞き取りづらくなっているものの、ベルンハルトの意図せぬ方向へと、その思考が寄っていってるということは、違いないだろう。
適当なところで止めねば、アルベルトの早とちりで思わぬ結果になりかねない。
「其方、何を用意する気だ?」
「それは、私の口からは申し上げにくいのですが」
「早く話せ。私の望むものではない気がする」
「ロイスナーでは用意できない。城の者にも、奥様にも気づかれたくない。私にすら言いづらいとなれば、予想もつきます。ですが街へ出てそれを買うとなると、やはり色々と問題が起きかねません」
ベルンハルトの欲しいものは、街へ出て適当に買ったとしても何か問題の起きるようなものではない。
アルベルトの考えは、間違いなくベルンハルトとは解離している。
「それで、何を用意するのかと、聞いている」
「ですから……女性を……ですね」
「違う……」
ベルンハルトはさらに痛くなったこめかみを押さえ、深いため息をついた。
「違う? 違うのですか?! それでは、何を買われると?」
「本当にわかっていなかったのか。先ほどの言葉、撤回しておく」
「言葉、ですか?」
「あぁ。其方はまだ父には似ておらぬ」
ヘルムートであれば、このような食い違いは起きないだろう。わかっていて揶揄うことはあっても、本気でベルンハルトに女性を、とは考えないはずだ。
(その辺がまだ、私たちには足りておらぬ、ということか)
一癖も二癖もあるヘルムートのことを苦手に感じてはいても、その経験にかなう訳もなく、心の奥底では尊敬せざるを得ない。
「それは、褒め言葉ですね」
「は、はぁぁ」
アルベルトの言葉に、ベルンハルトは大きくため息を吐いて、頭を抱えた。
「ベルンハルト様、商人は午後にでも品物を揃えてこちらへ出向くと申しておりました。そうなると、ロイスナーへ戻るのは明日になりますが、構いませんか?」
「あぁ。明日の朝、出発しよう」
帰領が予定より一日延びるが、特に問題はない。
それよりも、今回の目的を果たさねば。
「かしこまりました。そのように、準備整えておきます」
アルベルトとの意見の食い違いをようやく正し、ベルンハルトが王都で買う予定だったものを伝えれば、アルベルトは即座にその予定を組み立ててくれる。
とんでもない方向へと思考を寄せていくことがあったとしても、やはりアルベルトは頼りになる執事だ。
「午後か……」
「午前中はいかがされますか? 商人を待っていても良いのですが、せっかくですから、王都の市場を見て周っても良いかもしれませんね。良いものが見つかるかもしれませんよ」
「そうだな。たまには、それも良いだろう」
王都はリーゼロッテが育った場所だ。もしかしたら、彼女も市場に顔を出すことがあったかもしれない。そんな風に考えれば、見知らぬ土地での買い物も楽しめそうだ。
仮面をつけていることで、余計な詮索を受けたり、嫌な視線を感じることの多いベルンハルトは、そもそも人と会うことが好きではない。
ロイスナー内ですら、城の外へ出ることはほとんどなく、領民と顔を合わせる機会など数えられるぐらいだ。
そんな買い物を、楽しみに感じさせてくれるとは。
目を瞑れば、いつだって思い浮かべることのできる愛しい顔。
そのリーゼロッテの喜ぶ顔が見たくて、今回の計画を立てた。
「ベルンハルト様が王都の街を歩かれるなんて、初めてのことですね」
「アルベルトはあるのか?」
「私は、国立学院にも通っておりましたし、こちらに来ることがあれば、その都度それなりに」
王城へと来るたびに、アルベルトがベルンハルトの前から姿を消す時間もないわけではない。
空き時間を利用し、領内に必要なものを買い付けていくのもまた、執事の仕事だとわかっている。だからこそ、わざとその様な時間を作ったりもしていた。
「其方、遊んでおったな」
「い、いいえ。そのようなことは、決して……」
「してはおらぬと?」
アルベルトの視線は、ベルンハルトの追求を受け、徐々に右斜め後方へと移っていく。
わざとらしく逸らされた視線に、つい笑ってしまいそうになるが、そのおかげでスムーズな街歩きができそうだ。
ここは、咎めずにおくべきだろう。
「褒め言葉では、ないかもしれぬ」
「それは失礼致しました。何も、気づかぬ方が良かったのかもしれませんね」
「いや、それは……」
ヘルムートに似てきたというのは、単純な褒め言葉ではない。それは間違いなく本心だ。
だが、ヘルムートの手回し、先読み、その手腕を頼りにしている自分がいるのも事実で。周到に整えられた道の上を歩いていけることを、心地よいとも感じる。
「それで、何を買うおつもりですか?」
ベルンハルトが言葉に詰まっていれば、会話を先へ進めようとアルベルトが声を出す。
「あ、いや、それは」
「おや、私にも隠しておきたいものですか? お一人で王都で買い物をされる気でしたか? それも構いませんが……あぁ! 失礼致しました。ベルンハルト様にもそういうときがあるということですね。いや、それでしたらやはり、それなりの方を準備させていただかないと……」
アルベルトの声は尻すぼみで、途中から何を話しているのか聞き取りづらくなっているものの、ベルンハルトの意図せぬ方向へと、その思考が寄っていってるということは、違いないだろう。
適当なところで止めねば、アルベルトの早とちりで思わぬ結果になりかねない。
「其方、何を用意する気だ?」
「それは、私の口からは申し上げにくいのですが」
「早く話せ。私の望むものではない気がする」
「ロイスナーでは用意できない。城の者にも、奥様にも気づかれたくない。私にすら言いづらいとなれば、予想もつきます。ですが街へ出てそれを買うとなると、やはり色々と問題が起きかねません」
ベルンハルトの欲しいものは、街へ出て適当に買ったとしても何か問題の起きるようなものではない。
アルベルトの考えは、間違いなくベルンハルトとは解離している。
「それで、何を用意するのかと、聞いている」
「ですから……女性を……ですね」
「違う……」
ベルンハルトはさらに痛くなったこめかみを押さえ、深いため息をついた。
「違う? 違うのですか?! それでは、何を買われると?」
「本当にわかっていなかったのか。先ほどの言葉、撤回しておく」
「言葉、ですか?」
「あぁ。其方はまだ父には似ておらぬ」
ヘルムートであれば、このような食い違いは起きないだろう。わかっていて揶揄うことはあっても、本気でベルンハルトに女性を、とは考えないはずだ。
(その辺がまだ、私たちには足りておらぬ、ということか)
一癖も二癖もあるヘルムートのことを苦手に感じてはいても、その経験にかなう訳もなく、心の奥底では尊敬せざるを得ない。
「それは、褒め言葉ですね」
「は、はぁぁ」
アルベルトの言葉に、ベルンハルトは大きくため息を吐いて、頭を抱えた。
「ベルンハルト様、商人は午後にでも品物を揃えてこちらへ出向くと申しておりました。そうなると、ロイスナーへ戻るのは明日になりますが、構いませんか?」
「あぁ。明日の朝、出発しよう」
帰領が予定より一日延びるが、特に問題はない。
それよりも、今回の目的を果たさねば。
「かしこまりました。そのように、準備整えておきます」
アルベルトとの意見の食い違いをようやく正し、ベルンハルトが王都で買う予定だったものを伝えれば、アルベルトは即座にその予定を組み立ててくれる。
とんでもない方向へと思考を寄せていくことがあったとしても、やはりアルベルトは頼りになる執事だ。
「午後か……」
「午前中はいかがされますか? 商人を待っていても良いのですが、せっかくですから、王都の市場を見て周っても良いかもしれませんね。良いものが見つかるかもしれませんよ」
「そうだな。たまには、それも良いだろう」
王都はリーゼロッテが育った場所だ。もしかしたら、彼女も市場に顔を出すことがあったかもしれない。そんな風に考えれば、見知らぬ土地での買い物も楽しめそうだ。
仮面をつけていることで、余計な詮索を受けたり、嫌な視線を感じることの多いベルンハルトは、そもそも人と会うことが好きではない。
ロイスナー内ですら、城の外へ出ることはほとんどなく、領民と顔を合わせる機会など数えられるぐらいだ。
そんな買い物を、楽しみに感じさせてくれるとは。
目を瞑れば、いつだって思い浮かべることのできる愛しい顔。
そのリーゼロッテの喜ぶ顔が見たくて、今回の計画を立てた。
「ベルンハルト様が王都の街を歩かれるなんて、初めてのことですね」
「アルベルトはあるのか?」
「私は、国立学院にも通っておりましたし、こちらに来ることがあれば、その都度それなりに」
王城へと来るたびに、アルベルトがベルンハルトの前から姿を消す時間もないわけではない。
空き時間を利用し、領内に必要なものを買い付けていくのもまた、執事の仕事だとわかっている。だからこそ、わざとその様な時間を作ったりもしていた。
「其方、遊んでおったな」
「い、いいえ。そのようなことは、決して……」
「してはおらぬと?」
アルベルトの視線は、ベルンハルトの追求を受け、徐々に右斜め後方へと移っていく。
わざとらしく逸らされた視線に、つい笑ってしまいそうになるが、そのおかげでスムーズな街歩きができそうだ。
ここは、咎めずにおくべきだろう。
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