【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純

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陽射しも風も、何もかもが暖かな春

ベルンハルトの贈りもの 3

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「それにしても、何故私に買いたいものがあるとわかった?」

「本気で私が気づいていないとお思いですか? それはあまりにも私のことを軽んじているのでは?」

「そのつもりはないが……誰にもバレずにいたと思っていたのでな」

「ベルンハルト様が私にものを尋ねるというのも、珍しくいらっしゃる。それでは、種明かしといたしましょう」

「頼む」

 領内とは違い、他の誰の目を気にすることもない王城の客室。アルベルトとの間に繰り広げられる軽口の応酬は、ベルンハルトにとっても懐かしく、それでいて楽しいものだ。
 つい、素直に頭を下げた。

「それですよ」

「それ?」

「今、聞こえませんでしたか? 魔力石の音ですよ」

 ベルンハルトが頭を下げたその振動で、腰の布袋の中で魔力石が高い音を立てた。
 魔力を持つ貴族であれば、多少の数を持ち歩いているのが常識で、その音に注意を向ける者は少ないだろう。

「魔力石の音がどうしたと?」

「ベルンハルト様が普段持ち歩く魔力石は少ないですからね。もちろん、あまり必要とはされていないので、持ち歩く必要はないのですけど。今回の旅ではその音が普段よりも多く聞こえたのですよ。つまり、いつも以上に魔力石を持ってこられたということです」

「魔力石が多いと、買い物をする気だということか?」

「どれぐらいのものを買われるつもりかは存じませんが、ベルンハルト様が持つ、最も価値のあるものです。しかも、レティシア様から譲られたものであれば、その大きさも相当なものです。どれほど高価なものを買われるおつもりですか?」

「いや、それほど高いものを買うつもりはないが」

 それでも、アルベルトの言った通り、ベルンハルトの持つものの中で自由にできる唯一のものではないだろうか。
 私財として積み上げているものは、領内の状況が悪化すればそれを補う手段として使っており、ほとんど残っていない。
 レティシアから討伐の度に渡される魔力石だけが、ベルンハルトの財産だろう。

「無礼だとは思いますが、どれぐらいのものをお持ちになったか、一度拝見させていただけますか?」

「あぁ。構わぬ」

 ベルンハルトが布袋から魔力石を一つ取り出し、アルベルトに見せた。

「これほどのものとは」

 ベルンハルトから渡された魔力石を見るなり、アルベルトが感嘆ともとれるため息を吐いた。

「ベルンハルト様、別荘でも買うつもりですか?」

「そ、そのようなつもりはない」

「魔力石が多数他領へ流出すれば、その力関係が脅かされます。魔力石は魔法の威力を高めるもの。それを持って他領地に攻め込むことを考える者もいるのです」

「それはわかっておる」

「それにもかかわらず、これほどのものを複数持ってこられたと?」

 魔力石が領地間の力関係に大きく影響を及ぼすことは、ベルンハルトも承知の上。だからこそ普段は討伐の際に手に入れた魔力石は領内、それも城の中でほとんどを消費するようにしている。
 そのおかげで無駄な人員を雇う必要がないのだから、願ったり叶ったりだが。

「私が持っているものの中では、小さい方だったのだ」

「このようなものを他人の目に晒せば、いらない注目を浴びます。私のものと交換しましょう。もしくは、私の持っているもので買われるべきです」

 アルベルトが持ち歩く魔力石は、城内で消費する為に保管されているもの。
 ベルンハルトが自由に使ったとしても、誰かに文句を言われるものではない。

「だが……」

 できれば、自分のもので、自分の力で、今回のものは手に入れたい。
 それがレティシアから譲られたものだというのは情けない話だが、それでもベルンハルトの実力でもって、手に入れたものだということには違いない。

「それでは、私の持ってきたものを集めて、ほぼ同程度の価値のものと交換しましょう。それならば、問題ないのでは?」

「それならば、構わぬ」

「かしこまりました」
   
 アルベルトの心遣いには感謝しかない。
 これで、思い通りの買い物ができそうだ。
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