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翼竜の泪
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ギルは新しくギルド長に就任する、元副長のカズーさんに引き継ぎをしていて毎日忙しそうでギルド内はバタついている。
嘆く人達もいて……いつもギルド長の部屋にいて何の仕事をしてるのかあまり知らなかったから、ギルが慕われていたことに誇らしい気持ちになった。
ユーリカも店を畳む準備と旅の支度に忙しそうだった。
俺は引き継がないといけない仕事なんて無いので4日前にはギルドを退職し、いまはユーリカの隣りで保存食作りの手伝い中。
「ギルが居なくなると困るって、ギルド内がバタバタしてて……ギル、すごい人だったんだね」
俺が見ていたギルは意地っ張りで素直じゃ無くて……ユーリカに頭が上がらないただのおじさんだったんだけど……。
「現役時代はそれなりに名前と実績が有ったからな。この街に来る冒険者達が揉め事起こさないで大人しくしてんのもギルがギルド長として睨みをきかせてたからだしな」
「そんなに強かったんだぁ……じゃあユーリカだって強いんじゃん」
出会ったその日にギルはユーリカにやられてた。
「あいつが本気出したら俺は全く敵わねぇよ」
そうなんだ……ギル強いのか。そのギルがあれだけ怖がってたキースさんはもっと……。
「なんだぁ?ニヤニヤして、誰の事を考えてんだかなぁ~」
ユーリカにガッと首に腕を回され頭をグリグリ攻撃された。
「やめてよ……別に何も考えてないし、にやけてないし!!」
ユーリカと遊んでいると開店前の扉が激しく開け放たれた。
「ヒビキ!!ちょっとギルドまでついて来てくれ!!」
息を切らせながら飛び込んで来たのは調教師のトロイさん。
「そんなに慌ててどうしたんですか?……まさかギルに何か!?」
「いや……翼竜達が暴れ出して……ギルド長が宥めようとはしてくれているんだが、どうにもおさまらなくてな。ギルド長がヒビキを呼んで来いって……」
ユーリカに「早く行って来い」と目で合図されてトロイさんとギルドへ向かった。
みんな大人しい子達なのに何があったんだろう……それで何で俺が呼ばれるんだろう?
ギルドに近づくにつれ、翼竜達の鳴声が響いている。
「3日くらい前から飯を食わなくなってたんだ。それで今日、仕分け係のイグルがエサボックスを持って行ったら急に暴れ出したらしい……」
何か嫌いな魔物の耳でも入っていたのだろうか?
獣舎まで来ると人だかりが出来ていて……引きちぎりそうな勢いで暴れる翼竜達の鎖をギルが押さえていた。
「ギルッ!!」
「ヒビキッ!!やっと来たか……うおっ!!」
鎖を持ったままのギルごと翼竜達は長い首を一斉に俺に向けた。
「グル……グルルルル……」
思わず目を瞑ってしまったが、翼竜達はいつもと同じ様に喉を鳴らしながら、顔を擦り付けてくる。
「どうした?お腹空いて気が立ってた?ちゃんと食べないと駄目だよ?」
「クゥゥゥン……」
「トロイさん、この子達なんて言ってるんですか?」
「竜が喋る訳無いだろ?イグルの話ではヒビキがこの街を出て行く事を漏らした途端、暴れだしたらしいんだが……」
3日前から……もしかして……。
「寂しかった……?」
そうだと言わんばかりに翼竜達は顔を押し付けてくる。
「はあ……急に呼び出して悪かったな。イグルの話を聞いてもしかしてと思ったが……当たりだったみてぇだな」
鎖に引きずられて土まみれになったギルが横に立った。
「大切な翼竜を傷つける訳にいかねぇからな」
ギルが伸ばした手を翼竜は首で払った。
「可愛くねぇ奴等だな……まあひとまず落ち着いたな……おい、みんな持ち場に戻れ!!」
ギルの一言で人だかりは散っていった。
「そうか……皆に挨拶するの忘れてたね……ごめんね」
「グルル……」
順番に頭を撫でてあげるけど翼竜達は離れようとしない。
「ギルとユーリカと旅に出る事にしたんだ。お別れになっちゃうけど皆の事は忘れないよ?またこの街に戻って来たときには会いに来るから……それまでちゃんとご飯を食べて元気でいてね」
納得したのかしてないのか……翼竜が俺の手をつつく。何だろうと手を出すと……ポロリと……。
俺の手に顔を寄せた翼竜が涙を流した。
竜の涙は頬を伝ううちに固く輝く石に変わって俺の手のひらに落ちる。
「ギル!?竜が泣いた!!」
どうしたらいいのか狼狽える俺の手のひらに翼竜達が次々に涙を落としていく。
8つの丸い石が俺の手の上で輝いている。
「『竜の泪』か……こいつら……」
ギルも悩んでる。どうしたらいいの?これ……。
翼竜達は満足した様に獣舎の中で寛ぎ始めた。
「これは翼竜達からヒビキへの餞別のようだな。そういう事でいいな……トロイ、他言無用だぞ」
ギルがトロイさんを睨むとトロイさんはコクコクと首を縦に振った。
「良かったな……何時も持っててやれば喜ぶだろうよ。大切にしろよ」
ギルが小さな袋にしまってくれて、途中で出すんじゃねぇぞと注意を受けてからユーリカの店までトロイさんが送ってくれた。
そうか……竜は泣くと涙が石になるのか……またひとつ賢くなった。
トロイさんと店の前で別れるとユーリカに『竜の泪』を見せた。
「翼竜が俺に餞別だって……ねぇ、ユーリカなら器用だから加工出来るよね?お守り……腕輪にして欲しい」
「あ?俺が!?ちゃんと宝石店へ持っていって作って貰った方が良いんじゃねぇか?」
「ユーリカの手作りが良い」
ユーリカは『竜の泪』を一つ持ち上げた。
「素人の俺に一粒金貨1000枚の石を加工しろだなんて、とんでもねぇ無茶をふっかけてきたな……」
「一粒……金貨1000……枚?」
額を冷たい汗が伝った。
「『竜の泪』は稀少石だからな……一瞬で大金持ちになったなぁヒビキ」
初めて聞かされた価値に、慌てて返して来ると言ったがそれは翼竜に失礼だろと止められて……3日後には総額金貨8000枚の腕輪が出来上がった。
「ヒビキ……腕を貸してみろ……」
ユーリカに手を取られ……何かユーリカが呪文を唱える。
「うん……呪いを掛けたからこれでお前の意志以外では外れる事はねぇ」
「呪い!?」
「はははっ、悪いもんじゃねぇよ……むしろ翼竜の思いのこもった石だ……そこらの魔獣は近寄ってこねぇだろうよ」
皆の思いのこもったお守り。
左腕にずしりと……重みを感じた。
嘆く人達もいて……いつもギルド長の部屋にいて何の仕事をしてるのかあまり知らなかったから、ギルが慕われていたことに誇らしい気持ちになった。
ユーリカも店を畳む準備と旅の支度に忙しそうだった。
俺は引き継がないといけない仕事なんて無いので4日前にはギルドを退職し、いまはユーリカの隣りで保存食作りの手伝い中。
「ギルが居なくなると困るって、ギルド内がバタバタしてて……ギル、すごい人だったんだね」
俺が見ていたギルは意地っ張りで素直じゃ無くて……ユーリカに頭が上がらないただのおじさんだったんだけど……。
「現役時代はそれなりに名前と実績が有ったからな。この街に来る冒険者達が揉め事起こさないで大人しくしてんのもギルがギルド長として睨みをきかせてたからだしな」
「そんなに強かったんだぁ……じゃあユーリカだって強いんじゃん」
出会ったその日にギルはユーリカにやられてた。
「あいつが本気出したら俺は全く敵わねぇよ」
そうなんだ……ギル強いのか。そのギルがあれだけ怖がってたキースさんはもっと……。
「なんだぁ?ニヤニヤして、誰の事を考えてんだかなぁ~」
ユーリカにガッと首に腕を回され頭をグリグリ攻撃された。
「やめてよ……別に何も考えてないし、にやけてないし!!」
ユーリカと遊んでいると開店前の扉が激しく開け放たれた。
「ヒビキ!!ちょっとギルドまでついて来てくれ!!」
息を切らせながら飛び込んで来たのは調教師のトロイさん。
「そんなに慌ててどうしたんですか?……まさかギルに何か!?」
「いや……翼竜達が暴れ出して……ギルド長が宥めようとはしてくれているんだが、どうにもおさまらなくてな。ギルド長がヒビキを呼んで来いって……」
ユーリカに「早く行って来い」と目で合図されてトロイさんとギルドへ向かった。
みんな大人しい子達なのに何があったんだろう……それで何で俺が呼ばれるんだろう?
ギルドに近づくにつれ、翼竜達の鳴声が響いている。
「3日くらい前から飯を食わなくなってたんだ。それで今日、仕分け係のイグルがエサボックスを持って行ったら急に暴れ出したらしい……」
何か嫌いな魔物の耳でも入っていたのだろうか?
獣舎まで来ると人だかりが出来ていて……引きちぎりそうな勢いで暴れる翼竜達の鎖をギルが押さえていた。
「ギルッ!!」
「ヒビキッ!!やっと来たか……うおっ!!」
鎖を持ったままのギルごと翼竜達は長い首を一斉に俺に向けた。
「グル……グルルルル……」
思わず目を瞑ってしまったが、翼竜達はいつもと同じ様に喉を鳴らしながら、顔を擦り付けてくる。
「どうした?お腹空いて気が立ってた?ちゃんと食べないと駄目だよ?」
「クゥゥゥン……」
「トロイさん、この子達なんて言ってるんですか?」
「竜が喋る訳無いだろ?イグルの話ではヒビキがこの街を出て行く事を漏らした途端、暴れだしたらしいんだが……」
3日前から……もしかして……。
「寂しかった……?」
そうだと言わんばかりに翼竜達は顔を押し付けてくる。
「はあ……急に呼び出して悪かったな。イグルの話を聞いてもしかしてと思ったが……当たりだったみてぇだな」
鎖に引きずられて土まみれになったギルが横に立った。
「大切な翼竜を傷つける訳にいかねぇからな」
ギルが伸ばした手を翼竜は首で払った。
「可愛くねぇ奴等だな……まあひとまず落ち着いたな……おい、みんな持ち場に戻れ!!」
ギルの一言で人だかりは散っていった。
「そうか……皆に挨拶するの忘れてたね……ごめんね」
「グルル……」
順番に頭を撫でてあげるけど翼竜達は離れようとしない。
「ギルとユーリカと旅に出る事にしたんだ。お別れになっちゃうけど皆の事は忘れないよ?またこの街に戻って来たときには会いに来るから……それまでちゃんとご飯を食べて元気でいてね」
納得したのかしてないのか……翼竜が俺の手をつつく。何だろうと手を出すと……ポロリと……。
俺の手に顔を寄せた翼竜が涙を流した。
竜の涙は頬を伝ううちに固く輝く石に変わって俺の手のひらに落ちる。
「ギル!?竜が泣いた!!」
どうしたらいいのか狼狽える俺の手のひらに翼竜達が次々に涙を落としていく。
8つの丸い石が俺の手の上で輝いている。
「『竜の泪』か……こいつら……」
ギルも悩んでる。どうしたらいいの?これ……。
翼竜達は満足した様に獣舎の中で寛ぎ始めた。
「これは翼竜達からヒビキへの餞別のようだな。そういう事でいいな……トロイ、他言無用だぞ」
ギルがトロイさんを睨むとトロイさんはコクコクと首を縦に振った。
「良かったな……何時も持っててやれば喜ぶだろうよ。大切にしろよ」
ギルが小さな袋にしまってくれて、途中で出すんじゃねぇぞと注意を受けてからユーリカの店までトロイさんが送ってくれた。
そうか……竜は泣くと涙が石になるのか……またひとつ賢くなった。
トロイさんと店の前で別れるとユーリカに『竜の泪』を見せた。
「翼竜が俺に餞別だって……ねぇ、ユーリカなら器用だから加工出来るよね?お守り……腕輪にして欲しい」
「あ?俺が!?ちゃんと宝石店へ持っていって作って貰った方が良いんじゃねぇか?」
「ユーリカの手作りが良い」
ユーリカは『竜の泪』を一つ持ち上げた。
「素人の俺に一粒金貨1000枚の石を加工しろだなんて、とんでもねぇ無茶をふっかけてきたな……」
「一粒……金貨1000……枚?」
額を冷たい汗が伝った。
「『竜の泪』は稀少石だからな……一瞬で大金持ちになったなぁヒビキ」
初めて聞かされた価値に、慌てて返して来ると言ったがそれは翼竜に失礼だろと止められて……3日後には総額金貨8000枚の腕輪が出来上がった。
「ヒビキ……腕を貸してみろ……」
ユーリカに手を取られ……何かユーリカが呪文を唱える。
「うん……呪いを掛けたからこれでお前の意志以外では外れる事はねぇ」
「呪い!?」
「はははっ、悪いもんじゃねぇよ……むしろ翼竜の思いのこもった石だ……そこらの魔獣は近寄ってこねぇだろうよ」
皆の思いのこもったお守り。
左腕にずしりと……重みを感じた。
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