最強推し活!!推しの為に転生して(生まれて)きました!!

藤雪たすく

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30話目 思い出の温もり

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リオル様に掴まれた肩にまだ感触が残っている気がする。俺よりも大きな背丈、手足の長さも大きさも……ずっと抱き締めてばかりだった小さな身体が、今は逆に包みこまれそうな包容力を感じて不覚にもドキドキしてしまった。

駄目駄目駄目駄目……推しをそんな目で見るなんて冒涜だ。マサカズ達への罪悪感すら湧いてきた。

それでも浮かれた気分で渡り廊下へ出ると中庭の木の下に猫が寝ているのに気がついた。近付いても逃げる気配は無いが、少し痩せ気味だ。野良猫だろうか?野良猫にしては人を警戒しないな。

「ロックバードの肉、食べるか?」

ナーと鳴く声に側に寄って肉をやろうとすると手に擦り寄ってくる。何処かで飼われていた猫だろうか。
俺の木の下に腰を下ろして肉を食べる姿を眺めていると食べ終えた猫が膝に乗ってきた。身体を寛がせた猫に笑みが溢れた。
幼いリオル様を膝に乗せて過ごした昼下がりの様だな。

周囲の気配や音を遮断して、静かに眠れる空間を作ってやると俺も木に身を預けて目を瞑った。脚から伝わってくる温もりが懐かしく愛おしい。この時間が懐かしい。

この子が野良なら飼いたいな。

ひとしきり撫でてふと目を覚ますと渡り廊下にリオル様が立っていてコチラを見ていた。気配と音を遮断していたのでこの距離では気が付かなかったな。

飼っても良いか聞こうかと立ち上がろうとしたら、猫は膝の上から飛び降りて塀の向こうへ去って行ってしまった。この辺りを縄張りにしている猫ならまた来るか……気を取り直してリオル様の元へ駆け寄ると表情が浮かない。

「お話終わられたんですか?すみません……勝手な事をして……」

「いや、大丈夫だ。自覚を持ってくれればいいんだ」

メンバーとしての自覚、ファンとしての自覚……大事だよな。覗き良くない。

「はい。肝に銘じます……リオル様はお忙しいですか?日差しが気持ちいいですよ?旅してた時に見つけたお茶菓子もあるんです。一緒に少し休憩しませんか?珍しい物もありますよ」

リオル様が元気がない時などよく屋敷の庭でお茶をしたものだ。味覚が昔と同じかは分からないけれど、リオル様が好きそうなお菓子をみつけては買っておいた。

「いや……」

「ご迷惑お掛けしたお詫びです」

有無を言わさずに手を引いて……しまったと手を離す。もう昔の様なぼっちゃんと従者の関係ではなかった。図々しかったな。

「……頂くよ。これぐらいで泣きそうな顔をしないでくれ」

困った様な顔で庭へと歩き出してくれた。
やっぱりリオル様はリオル様だ。優しくて温かい。リオル様の背中を見ながら胸が温かくなるのを感じた。

木の下にテーブルセットを取り出して、お茶菓子を並べる。各地のクッキー、ひとくちにクッキーと言っても土地土地によって形や食感も違って面白いものだと思う。ミルクと砂糖をたっぷり入れた紅茶を淹れて……さすがに子どもの頃と同じは甘すぎるかと思ったが、文句はでなかった。

「ルディ、君も座って寛いでくれ。落ち着かない。ギルドマスターとはいえ主従関係じゃないんだ」

「は……はい」

幼いリオル様も、俺が側に立っていると一緒に食べようと誘ってくれた。言葉は違うけれど……変わらない人柄に涙が出そうになるのを我慢して自分用の紅茶を用意して席に着いた。

「クッキーどうですか?好みの物はありましたか?」

すっと持ち上げられたのはチョコチップの入ったサクサクとした食感のクッキー。一番これが好きそうだと思っていた物だっただけに笑みが溢れる。

「君はよく表情が変わるな……」

「そ……そうですか?」

そうなのだろうか?
昔に比べたら確かにそうなのかもしれない。ヤスさんの影響かな……よく笑いよく泣きよく怒る感情豊かな人だった。思えばマサカズに少し似てたかも?マサカズよりは常識があったけど。

「全然違うのに……」

「何がですか?」

「何でもない。美味しいお茶をありがとう」

「リオル様、お昼ご飯に何か食べたい物はありますか?」

立ち上がろうとしたところにリクエストをお願いすると少し考えて「オムライス」と答えが返ってきて、また口元が緩んでしまった。

小さい頃からの好物だ。修行させて貰った食堂でも何を食べていたか聞き込みしたところ、オムライスだった。

「おまかせください。お昼になったら……また食堂に来てくださいね」

『ありがとう』か……銀月の迷い猫のメンバーになれて……本当に良かった。

ーーーーーー

ご飯を作ったり、掃除をしたり……のんびりとした数日が過ぎて、メンバーの皆とも少しずつ距離が縮まってきた。

「ルディ、俺の盾の手入れもお願いしていいだろうか?」

警戒心を向けてきていたゼノスも、タンクとして命でもある防具の手入れを任せてくれるまでに信頼してくれる様になった。4階の階段を上がって1室分は倉庫用として空間が開いている。そこにマットを敷いて道具の整理や手入れをしながら皆と会話を交わすのが今のところの日課だ。

「オリハルコン製なんですね。それがこんなにボロボロになるまで……お疲れ様です。魔石も切れ掛かってるので魔力の補充しておきますね」

「シシルに頼もうと思っていたところだ……助かる」

硬度で言えばオリハルコンよりもアダマンタイトの方が硬いが重い。重い方が安定はするがこの大きさだと移動時に邪魔になるかもしれない。しかしゼノスの力なら……アイテムボックスからオリハルコンとアダマンタイトを取り出すとゼノスから「ほぅ」と感嘆の声が漏れたが気にせず作業を続けた。

「見た目は変えないようにするんでちょっと強度足しても良いですか?」

「あ?ああ……強くなるなら頼む」

まずは浄化魔法で汚れを落として、盾の細かな傷や欠けた部分をオリハルコンをちぎりながら練り込んで傷を修復して、形が整ったところでアダマンタイトの塊と組み合わせた。

「消えた?どこへいったんだ?」

「平く伸ばして中心部に押し込みました。強度は増すと思いますよ」

芯材として内部に押し込んだので一回り大きくなったけどゼノスなら扱えるだろう。
仕上げ魔石に魔力を流し込む。強化魔法で防御力増加の付与か……魔法耐性と透視の機能もつけとこ。

「はい、出来ましたよ」

「すごいな!!新品のようだ!!」

「構えてみてください。構えた時に視線の部分が透明化するようにしたんで、相手から目を離さずに防御できると思います」

ゼノスの様な大きな盾は、どうしても視界を塞がれるから敵の姿から目を離してしまうことになる。動きの遅い相手や直線攻撃の相手ならいいだろうけど、敵を視界に捉えておくことは大切だ。

「どうなってるんだ!?これは」

「透視魔法を付与したんです。盾だけ透視できるようにしてます」

「透視……使えるのか?」

急にモジモジと体を俺からズラすように動くゼノスに苦笑い……。

「見ませんよ……」

バツが悪そうに頭を掻くゼノスは本当に裏表のない真面目な奴だ。リオル様の事もこの真面目さでしっかり守ってくれていて、裏切る心配が全くないことに安心できる相手。

「他は?鎧も一緒に手入れしますか?」

「良いのか!ぜひ頼む!!」

パァァァと嬉しそうな顔、本当に素直だなぁ。最初の頃の硬い表情が嘘のようだ。ゼノスの警戒が溶けてきたのはアルカとマイカの二人と打ち解けてきてからだ。この3人は同じ年の試験で合格した同期らしく本当に仲が良い。

試験中にアルカとマイカが魔物に追われているところをゼノスが助けて……試験終了までゼノスがひたすら敵の攻撃を受け、それをマイカが回復し続けてアルカが遠距離から攻撃しながら逃げる……を繰り返して生き延びたらしい。
確かに力を合わせてはいけないなんて注意書きはなかったもんな。競争の中でも人助けとかゼノスはなかなかのお人好しだ。

ギルド指名依頼だけでなく個人的な依頼も3人で組んで行動しているみたいで……正直羨ましい。

「ここにいたんや。ゼノス、ルディくんもロビー集合やってさ。久々の全員集合依頼みたいやで?」

ギルド指名依頼はいつもフィラノーラさんが適材適所で個人的に声をかけているのだが、全員集合は俺が参加してから初めてのことだった。
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