最強推し活!!推しの為に転生して(生まれて)きました!!

藤雪たすく

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32話目 嬉しいお言葉

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軽めの朝食を済ませて中庭に集合。

各々いつもの服装とは違う、戦闘用の装備で身を包んで集まっている姿は配信の中で見ていた『銀月の迷い猫』そのもので眩しさにファンとしては卒倒しそうなほどの光景だ。リオル様はまさに神と呼ぶに相応しい風格。冒険者というよりも騎士の服装に近いかもしれない。ホワイトシャツに黒いベストに黒のロングコート。フィラノーラもそうだが、学園時代に着慣れているからという事らしいが、リオル様は黒、フィラノーラは白……対照的な二人が並ぶと空気が上流貴族の世界となると言われているのがわかるな。
タンクのゼクスや剣士のノーマンは前衛だけあってしっかりとした装備で防御を固めているが、ナディルやアルカたちは動きを阻害しないように軽装、ユマに至っては日常よりも露出が高い。

俺は……いつもとそう変わらないな。
フード付きのチュニックにズボン……従者の時はずっとテールコートだったが、今は雑用だしな。装備を気にする必要はない。配信に映ってもなるべく目立たないようにしないと……フードを被ってマフラーをマスクがわりにするとガイと大差ない真っ黒具合になった。目立たなくて良いかも?

「ルディくんっ!!地味!!せっかくのお披露目なのにそんな真っ黒でガイみたいだよ!!」

「喧嘩売ってるん?ユマ」

ガイに睨まれるもユマが怯むことはなく、自分の鞄を開いて何かを探し出した。中から出てきたのはユマがいつも配信できているような体を隠す面積は少ないくせに布の使用量は誰よりも多いふわふわふりふりした服が出てきた。

「私の勝負服、貸したげる!!」

ユマの勝負服、それは戦闘を指した勝負ではなくアイドルとしての勝負服。丈は履いている意味を問うぐらい短いがかろうじてズボンなあたり……厚意なんだろうけど……。

「俺が着ると思いました?」

「うっ……ルディくん怖い……」

「すごいなユマっ!!ルディがここまで怒りの表情見せるの初めて見たよ」

ノーマンの後ろに隠れるが、ケラケラと笑われてユマはムッと結んだ唇を突き出した。
今はまだ配信はしていないが、これが配信に乗っていたらノーマンに対して大ブーイングだったろう。銀月の迷い猫の誇る剣士である本人に向かって文句を言う勇気のある奴はそうそういないだろうけれど。

「儂の孫のお古のマントをやろうか」

見送りのギュンダーが鞄からケープ付きの豪華なマントを取り出して着せてくれた。お孫さんのお古ですか……サイズ的に皆とは体躯が違うのでギュンダーの孫かユマサイズになるのかもしれないが……どちらも戦闘向けではない。防御力はゼロに等しい。

「真っ白ですね……汚れてしまいますよ?」

真っ白なコートに銀糸で刺繍が施されているお値段はしそうだが、実用的かどうかは謎。

「うむ。君を地につけるほどの魔物がいるとは考えたくないのう」

いくらでもいると思うが……戦闘だけではなく雨風にもさらされるし、崖を登ることも滑り降りることもあるだろう。お礼は伝えたが、派手ではないだろうか?貴族仕様なマントは目立って仕方ない。

「……ルディ、よく……似合ってると……思う」

うんうんと頷くナディルの横でリオル様が言いづらそうに褒めてくれた。ナディルに言えと言われたんだろうけど、慣れない言葉に葛藤する姿が愛おしすぎて泣きそうでナディルにもギュンダーにもギュンダーの孫にも全てにありがとうと言いたくなる。

「ギュンダーさんありがとうございますっ!!お孫さんに何かお土産仕留めてきますからっ!!」

これから過酷と言われた1ヶ月のダンジョン生活なはずなのだが、和やかな空気のまま拠点を旅立った。

ーーーーーー

スタンピードが起こるかもしれないダンジョンがある『迷暗森』は王都からそう離れてはいない。だからこそ協会も早め早めの対処をしようとしているのだろう。

「協会に報告したのって『駆逐せし神剣』のメンバーでしたっけ?うちより大手じゃないですか……気付いたんならそのまま調査してくれりゃいいのに……」

調査依頼は他の依頼に比べて報酬が低いし結果を出しづらいとノーマンが愚痴り、それをナディルが宥めている、それを眺めながら二人の後ろをついて歩いた。荷物持ちの仕事だと張り切っていたのだがみんなそれぞれのアイテムバッグを持っていて出番がない。

「まあまあ……『駆逐せし神剣』は脳筋揃いで調査なんてできないから仕方ないですよ。他がやりたがらないから調査依頼は協会に恩を売っとくチャンスじゃないですか」

ナディルは仲間以外に対しては言葉に容赦がない。配信の中では素直で可愛い弟キャラとファンに言われているけれど優しいし明るいけど、素直で可愛いはないかもしれない。
配信の顔と日常の顔は皆それぞれ異なるが顕著なのはナディルとユマとアルカの若手組……配信がより身近で別人格を演じる事に抵抗が少ないせいもあるのかもしれない。

「でも本当にクジャダガのダンジョンでスタンピードなんて起きたら止められるのなんてリオルさんのお父上ぐらいじゃないですか?」

ノーマンが後ろを歩いているリオル様に話しかけるように後ろを向いた。

「どうだろうな、クジャダガのダンジョンはまだ5階層までしか攻略が進んでいない。スタンピードが起きようとしている層が深ければ父と母に世界が頼る日がまた来るかもしれないが、今頃どこを放浪しているのか知らないからな」

あいつらの放浪癖はまだ治ってなかったか!!リオル様が居場所を知らないって、かわいい息子を置いて……デンワは持っていないのか?
しかし……リオル様達が調査としてクジャダガのダンジョンへ潜った日から随分たつが、まだ5階層までしか進んでないのか。俺も聖地巡礼で訪れた事があるが、確かに無駄に広くて面倒そうではあった。

あと数時間も歩けば『迷暗森』が見えてくる。今は街道を歩いているから魔物の出現も少ないが、迷暗森の魔物は縄張り意識が強いので……銀月の迷い猫の生戦闘を見られる!!迷暗森の魔物ぐらいではリオル様の出番は来ないかもしれないが……それはダンジョンについてからのお楽しみって事で、足取りはいつも以上に軽くなった。
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