最強推し活!!推しの為に転生して(生まれて)きました!!

藤雪たすく

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35話目 恩人からの一言

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「配信中のカメラ操作は私がやってるの。問題ありそうな部分はなるべく写さないようにするけど、ルディくんもカメラが回ってることを意識して変な行動はしないでよ?聞いてる?」

ぼんやりしたままやり過ごした朝食を終えて、ダンジョン突入前にユマから配信に関する注意事項の確認をされているが、あんまり頭には入ってない。

「はい……カメラに写るなってことですよね」

「ち、が、う!!写せないような行動は慎んでってこと!!特にリオルさんの古参ファンは……厳しくて怖いから配信中は『リオル様』『リオル様』は控えてよ?ダンジョンに入るとこから配信開始、私の挨拶が終わったらルディくんの紹介に入る。私が紹介するから……ルディくんはただ笑顔で聞いてて最後に『よろしくお願いします』の一言でいいからね!?くれぐれも余計な事は言わないで!!」

昔の配信はありのままの戦闘風景をただ流すだけでよかったのに、随分小難しくなったもんだ。視聴者を意識した配信なんてしたことがないから一言でいいとセリフまで決めてもらえるのはかなり助かる。

ユマの服装はいつもはもっとフリルがたくさんでふわふわとしているのに、今日は少し落ち着いたスーツに近い装備だった。スタンピードが起こるかもしれないという緊張感と国民の不安感を刺激しないように『お遊びか?』と言う苦情を考慮したのだろうか?ユマも大変だなぁ。

『視聴者の皆さま、銀月の迷い猫の配信へきてくれてありがとうございます。私たちはギルドのからの緊急依頼ということでクジャダガのダンジョンへやってまいりました。皆様ももう耳にされているかもしれませんが……』

スタンピードの噂や今のダンジョン前の状況など、視聴者を不安がらせない様に気を使いながら話す姿にいつものアイドル調のユマはどこにもなく、大したもんだと感心する。

『皆様も何か気づかれた事があったら些細な事でもチャットでお知らせくださいね。そして……皆様の間でも既に噂になっていた新メンバーをダンジョン突入前にご紹介させていただきたいと思います。ルディく~ん』

皆の装備を目視チェックしているとユマに呼ばれ打ち合わせ通りにユマの横に立ってカメラに向かって頭を下げた。えっと、とりあえずユマの言葉を笑顔で聞いてればよかったんだっけか?笑顔ね。

『彼が銀月の迷い猫の新メンバー、ルディくんです。試験を見事クリアしたその実力はもちろんだけど、彼の一番no
特技はなんと……なんと「料理」なのです!!他のどの配信と比べてもいつも飯はマズそうと定評のあった我がギルドにもついにグルメ配信到来です!!今回の依頼ではあまり紹介できないかもしれませんが、今後皆に視界の暴力をお届けするから楽しみにしていてくださいね!!』

料理が1番得意なわけではないが、ユマに肘打ちされて慌てて『よろしくお願いします』と頭を下げて……つつがなく俺の出番は終了した。

ーーーーーー

昔の銀月の迷い猫の配信で見た時には、一階層はゴブリンの巣になっていたはずだが今はチラホラと違う魔物もいるようだ。クィーンメイジゴブリンという統率者を失ったゴブリンたちはいくら数を増やそうともAランク冒険者に対して、とても数では補えないほどに弱い。
クィーンメイジゴブリンがやられたとしても次のクィーンなりキングが産まれてくるものだが、それすら出来ないほど勢力を削がれたか。ゴブリンより格上の魔物たちに追いやられている。

「ウォーリアコボルトが多いですね。クィーンメイジゴブリンは生まれなかったみたいですね」

列の一番後ろをついていきながら、前を歩くガイになんとなく話しかけてみる。

「よく知ってんね、そうかルディはファンだもんな。配信見てたか。クィーンメイジよりは楽やけど……面倒なんもいるな」

ウォーリアコボルトはCランクだが、こいつらが厄介なのは嗅覚も聴力も鋭く、そしてレベル差も考えずに無鉄砲に突っ込んでくること。無駄な戦闘を避けたい浅い層ではどっかから足音を聞きつけて追いかけてくる厄介な奴らだ。
ウォーリアコボルトも面倒だがそれ以上に……ガイも気づいてるなら当然ナディルも気がついているだろう。
そのナディルはゴブリンたちが仕掛けたであろう罠を避けつつ迷いなく下の階層への階段へ誘導してくれている。ここへきた時は少年と呼ばれる年齢だったのに道を覚えているのだろうか。やっぱりすごいな、銀月の迷い猫のメンバーは。

『以前来た時はクィーンメイジゴブリンが一階層丸ごとコロニーを作っていましたが、今はその勢力が変わってきているみたいですね。ウォーリアコボルト達が住み着き始めている様です』

交差点の向こうからウォーリアコボルトが2匹こちらに向かってきている。ナディルの合図を頼りに実況を済ませたユマは一歩引いて、ゼクスは守るようにさりげなくユマの前へ出る。
ウォーリアコボルト達がこちらへ近づいてくる前にアルカの矢が1匹の喉を貫き、シシルが杖の先でコンっと床を叩くと炎のトカゲが勢いよくウォーリアコボルトへ飛びかかりその頭を食らった。

前もって話していなくてもそれぞれが流れを読んで動いて、それでいて誰も邪魔になっている者はいないってすごいことだよな。例えどちらかの攻撃が外れていたとしてもガイも投擲の準備をしていたしヨハルも爆薬を取り出していた。ノーマンだってフィラノーラだって、リオル様もいつでも攻撃へ移れるようにしていた。

ああ……これが生で見る銀月の迷い猫の連携……尊いしか言葉が出ない。配信に乗らないように無音で拍手。

ウォーリアコボルトの素材は肉も毛皮も硬めなのであまり好まれないし、魔石も持って無い確率が高い。つまり解体はせずに放置して、先へと進んだ。

俺は完全に視聴者になりきって皆の後を脳死でついていく。
そういえば配信している側にはチャットの内容が見れないんだな。アイテムボックスの中から自作の小型タブレットを取り出した。声は出ないようにして銀月の迷い猫の配信を確認するとたくさんのチャットが流れていく……配信を遡り俺が出ていた辺りを確認すると、チャット欄に『ありがとな、ルディ』の言葉を見つけた。アカウント名は『ヤスゴロー』。ヤスさんだ。見てくれてるんだ……届いてた。


「どうしたん?嬉しそうやな」

「銀月の迷い猫への加入って、俺を育ててくれた人の夢でもあったんですよ。さっき俺が出てたとこ見てくれてたみたいで、チャットでも喜んでくれてるのが嬉しいなって……」

「ルディに……そんな人間っぽいエピソードがあったなんて……」

失礼極まりない言種だな。
ガイからタブレットに視線を戻すチャットには『可愛い』や『推せる』の文字が並んでいる事に安心した。ひとまずユマファンの心に波風は立てずにやり過ごせたようだ。今のところ『ギルドを出て行け』のお言葉はいただいていない。このまま当たり障りない存在として初配信を乗り切りたいものだ。
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