6 / 68
第5話 オコメさんと池の鯉
しおりを挟む
倉庫前でのこと。自ら擬人化の者だということを林さんにうっかり言ってしまった。
林さんは、誰にも言わない。と、約束してくれて、
「だって私だけの研きゅ…いえ、私と妖精さんだけの秘密ですから。」と言っていた。
…ミトさんもいたんだけどな。
─只今、お仕事で花壇の整備しております。用務員のオコメと申します。
中庭に来てみると、一人佇む女子生徒を見かけました。
嫌だわ。あの子最近、あのネコの問題児と一緒にいる子だわ。と、少し身構えてしまいます。
中庭には小さな人口池があり、花壇に水をやった後、池に居る鯉に餌を与えようとしていた所でした。
……あの子何やっているのかしら?
よく見たらガタガタと震えているではありませんか!
「どうしたの!?」
オコメは急いで声を掛けます。
彼女は池の中を指さしました。
「…ここの水に触れようとしたら、大きな口が現れて…。」
「…びっくりしてしまったんですね…。鯉ですよ。いつもこの時間にエサをあげているんです。だから、貴方から食べ物を貰えると思ったのでしょう…。」
「怖く無いですよ。ほら、上には飛び出さない様にネットが張ってありますし、あなたが落ちることもありません!」
と、言ってあげると彼女は少しほっとしていました。
そのとき、太陽の光を浴びてその子の髪が薄茶色に変化しました─
…………これは!
「レトルトちゃん?!」
「…え?」
私は元々ミニブタでした。庭付き一戸建ての少し裕福な家庭に住んでいました。
オコメは成長するとミニとはいえないくらいの大きさになりまして、
今までは室内で生活しておりましたが、お庭の方に新しく小屋を建てて貰うことになったのです。
その隣にはゴールデンレトリバーのレトルトちゃんの小屋がありました。
オコメとレトルトは仲良しでした。
ある夜のこと─寝る前にいつもの様にレトルトちゃんと会話をしていました。
(この家の人はとても良くしてくれるから、いつか恩返しとかしたいなー。)
(じゃあ、ぼくの分までお願いね。残念だけど、ぼくは出来そうにないから…)
(どういうことです?)
(このお家に来てから大分時間がたったんだ─)
そして朝、目覚めたらオコメは人間の体に変わっていたのでした─。
「あなた、生まれ変わりですよね!」
「え、……そうなのかな…。」
「その毛並みは、レトルトちゃんにそっくりです!」
人間の姿になってあの朝は大騒ぎだったけど、養子として迎い入れてくれた優しい家族─。
「あんなに小さかったコユズちゃんも今はもうランドセルを背負っています!」
「…?」
人間の姿になってからというもの、レトルトちゃんと会話が出来なくなってしまったけれど…
(人になれて良かったね)
と、言ってくれているかの様に嬉しそうに足元で尻尾を振ってくれたのでした。
オコメは就職するのが家族への恩返しになるのではと考えました。人間社会の作法や技能を身につけ─
用務員の採用を貰ったその日、家族はお祝いしてくださいました。
幸せいっぱいなその日の夜、キャンプ用の寝袋を借りて、レトルトちゃんと暖炉の側で一緒に眠ったのです。
そして、ふいに早く目が覚めた深夜─レトルトちゃんが言っていた"時間"について初めて知るのです。
彼は暖炉の穏やかな火の光に包まれて、生物としての時間を全うしたのでした─
「オコメは…オコメは、今でも幸せですが、あなたがいなくて寂しいです…。」
「……寂しい?」
今でもオコメを気遣ってくれる優しい子なんですね。心配そうなつぶらな黒い瞳…。
だから、そんな優しい子が、不良のネコ娘と居るには訳があるに違いありません!
そして、オコメは用務員として、裏からこの子を守ってあげようと誓ったのです─
「おい、お前…何してんの?腰がひけてんぞ。」
ミトさんが話かけてきました。
「コイ?にエサあげてる。ビチビチして怖いけど、慣れたら意外と…優越感、感じてきた!」
「先ほど、用務員さんと何話されていたんです?」
林さんもいつの間にか来ていた。
「…オコメさんのレトルトちゃんの…話?」
「ああ、レンジで温めるタイプのご飯のことですね─。」
林さんは、何故だか少しがっかりしていた。
林さんは、誰にも言わない。と、約束してくれて、
「だって私だけの研きゅ…いえ、私と妖精さんだけの秘密ですから。」と言っていた。
…ミトさんもいたんだけどな。
─只今、お仕事で花壇の整備しております。用務員のオコメと申します。
中庭に来てみると、一人佇む女子生徒を見かけました。
嫌だわ。あの子最近、あのネコの問題児と一緒にいる子だわ。と、少し身構えてしまいます。
中庭には小さな人口池があり、花壇に水をやった後、池に居る鯉に餌を与えようとしていた所でした。
……あの子何やっているのかしら?
よく見たらガタガタと震えているではありませんか!
「どうしたの!?」
オコメは急いで声を掛けます。
彼女は池の中を指さしました。
「…ここの水に触れようとしたら、大きな口が現れて…。」
「…びっくりしてしまったんですね…。鯉ですよ。いつもこの時間にエサをあげているんです。だから、貴方から食べ物を貰えると思ったのでしょう…。」
「怖く無いですよ。ほら、上には飛び出さない様にネットが張ってありますし、あなたが落ちることもありません!」
と、言ってあげると彼女は少しほっとしていました。
そのとき、太陽の光を浴びてその子の髪が薄茶色に変化しました─
…………これは!
「レトルトちゃん?!」
「…え?」
私は元々ミニブタでした。庭付き一戸建ての少し裕福な家庭に住んでいました。
オコメは成長するとミニとはいえないくらいの大きさになりまして、
今までは室内で生活しておりましたが、お庭の方に新しく小屋を建てて貰うことになったのです。
その隣にはゴールデンレトリバーのレトルトちゃんの小屋がありました。
オコメとレトルトは仲良しでした。
ある夜のこと─寝る前にいつもの様にレトルトちゃんと会話をしていました。
(この家の人はとても良くしてくれるから、いつか恩返しとかしたいなー。)
(じゃあ、ぼくの分までお願いね。残念だけど、ぼくは出来そうにないから…)
(どういうことです?)
(このお家に来てから大分時間がたったんだ─)
そして朝、目覚めたらオコメは人間の体に変わっていたのでした─。
「あなた、生まれ変わりですよね!」
「え、……そうなのかな…。」
「その毛並みは、レトルトちゃんにそっくりです!」
人間の姿になってあの朝は大騒ぎだったけど、養子として迎い入れてくれた優しい家族─。
「あんなに小さかったコユズちゃんも今はもうランドセルを背負っています!」
「…?」
人間の姿になってからというもの、レトルトちゃんと会話が出来なくなってしまったけれど…
(人になれて良かったね)
と、言ってくれているかの様に嬉しそうに足元で尻尾を振ってくれたのでした。
オコメは就職するのが家族への恩返しになるのではと考えました。人間社会の作法や技能を身につけ─
用務員の採用を貰ったその日、家族はお祝いしてくださいました。
幸せいっぱいなその日の夜、キャンプ用の寝袋を借りて、レトルトちゃんと暖炉の側で一緒に眠ったのです。
そして、ふいに早く目が覚めた深夜─レトルトちゃんが言っていた"時間"について初めて知るのです。
彼は暖炉の穏やかな火の光に包まれて、生物としての時間を全うしたのでした─
「オコメは…オコメは、今でも幸せですが、あなたがいなくて寂しいです…。」
「……寂しい?」
今でもオコメを気遣ってくれる優しい子なんですね。心配そうなつぶらな黒い瞳…。
だから、そんな優しい子が、不良のネコ娘と居るには訳があるに違いありません!
そして、オコメは用務員として、裏からこの子を守ってあげようと誓ったのです─
「おい、お前…何してんの?腰がひけてんぞ。」
ミトさんが話かけてきました。
「コイ?にエサあげてる。ビチビチして怖いけど、慣れたら意外と…優越感、感じてきた!」
「先ほど、用務員さんと何話されていたんです?」
林さんもいつの間にか来ていた。
「…オコメさんのレトルトちゃんの…話?」
「ああ、レンジで温めるタイプのご飯のことですね─。」
林さんは、何故だか少しがっかりしていた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる