パソニフィ・コンフュージョン

沼蛙 ぽッチ & デブニ

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第43話 ハズキロス&ステイン

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「ミトちゃんってば、キーボードの上から退いてくれるかなあ……」
「じゃあ、アキヨシ。膝の上に乗っけろ。そして、背中をナデナデしろ。」
「すっかり猫みたいになっちゃって……」
おじさんが、女子高生を膝の上に乗せて撫でながら、デスクワークしてるとか……絵面がヤバい気がするし、多分、訴えられたら負けると思う。アキヨシはそんな事を思った。

「なあ、何書いてるんだ?英語読むん苦手。これは?」
「パソニフィケーション。擬人化。」
「じゃあ、これは?」
「これは授業で習ってるでしょ。コンフュージョン。混乱とか錯乱とかいう意味。」
「……あたしらの事?」
「そ、専門分野の論文を書いて、発表するのも僕の仕事だからね。」

「……それは兎も角、なでなでしろ。」
「さっきからサツキさんから、ミトちゃんを心配するメッセージが鬼の様に来るんだけど。」
「サツキには負い目があって、思いっきり甘えられないの知ってるくせに……髪を勝手に切ったらスゲー泣かれたし……」
「…………。」
アキヨシは、もう何も言わず彼女の背中を撫でてやった。
(ミトちゃん……膝の上、漬け物石が乗ってるみたいに重いって言ったら、噛まれるかな……)

実は錯乱期という言葉は、造語だ。
だけど、擬人化した者が成長期みたいに、急激に人間化が進むときに混乱するのは事実だ。だから、その言葉は擬人化たちの間で使われている─

只今、ミトさんも絶賛、錯乱期間中になっているのだった。

修学旅行を勝手に途中退場したミトさんは、担任の先生と生徒指導の先生にこっぴどく叱られ、3日間の自宅謹慎処分になった。

そんな自宅謹慎の最中の彼女が、気まぐれに家から飛び出し、ここへやって来たのだった。
「ノブ子、姉妹ごっこするぞ。お姉ちゃんと呼ばせろ!」
「私、妹じゃなく?」
「お世話しろ。」
「オーケー」
ハズキに神経過敏の症状が出たみたいに、ミトさんの錯乱期間の症状は、猫みたいに甘えたくなるという、"退行"、所謂赤ちゃん返りに近いものだった。

ハズキは意識を取り戻した後、両親に連れられ帰っていった。

其から、彼は自ら言った通り、皆の前に姿を現さなくなってしまうのだった─

ミトさんはアキヨシの膝の上で思い出していた。彼があの時言っていた言葉を。
「ありがとう、ミト。助けてくれて。」
「お前はスッキリしたかもしんねーけど、私はスゲー不完全燃焼だ!受験が終わったら、今度は私の為に再戦しろ!」
「もうミトの戦う相手は俺じゃないよ。キックボクシングしてるんでしょ?塾の帰り、ジムから出てくるのを見た。」
「だから、何だっていうんだよ。」
「ミトは折角人間らしい動きを習得しているんだから、人間の強敵と戦うべきだよ。」
「認めたくねーけど、お前の方が人の身体の扱い上手いじゃねーかよ。」
「ミトは何度も俺を使って証明しているじゃないか。力の強さも伴って居ないと駄目だって。ジムで人間的な動きもマスターしたんだから、もう俺は必要ないよ。」

俺らはもう動物じゃないんだからさ。と、言うハズキの姿は、数日間見ない間にすっかり人間の大人みたいになっていて、それが妙に印象に残った─

ノブ子は、卒業式にハズキと会いたくてこんな事を言った。
「ハズキ先輩……卒業式の時、私に第3ボタンを下さい。」
「第2じゃなく?」
歴史の時間にそんな風習があったって聞いたけど、まさかそんな事言われるとは思わなかった。と、ハズキは吹き出した。
「第1ボタンはユキちゃん。第2ボタンはミトさんの物だから……」
そういう数え方?と笑う彼だったが、帰り際、私にとって最高の"終わりの言葉"をかけてくれた。
「ノブ子ちゃんは、これまでも、これからも……俺の一生の中で、一番最高の"元カノ"だったよ。」
私は、ちゃんとハズキの彼女だったんだと自信が持てた。
その言葉だけで、とても満足した。筈、なのに……なぜだかその晩からずっと、夜一人になると下腹部の鈍い痛みが、前よりも鮮明に感じる様になった。
(なんで……?)

同じく修学旅行を途中退場した、林さんは罰として、本格的に生徒会の風紀委員をさせられる事になった。毎日朝、校門前に立たされ挨拶運動をさせられる事になった。
(ミトと同じ自宅謹慎の方が断然良かった!)
林さんにとっては、こちらの方が重い罰だった。

「我は修学旅行は行かなかったのでの。よく知ぬが、聡見は何やらやんちゃした様じゃの。」
「生徒会長、あの時は緊急事態でしたので、仕方なくなのです!」
「知っておるか?聡見よ。風紀部長をさせられるという事の意味を。」
「前年度は……一条先輩でした。」
「ハズキ殿は、中等部荒れてたという噂じゃ。それ故に、更正させるためにスカウトされたのじゃ。風紀委員は、問題児がさせられるということなのじゃよ。ホッホッホ」

林さんは、思い出した。ミミズク先輩を許してしまったあの日の事を。
「ハズキ先輩、あの日の帰り道。貴方が先輩づらして約束してくれたじゃないですか!私がもしかしたら問題を起こすかもしれないって。その時は、先輩が責任をとってくれるんでしょ!」
「ごめんね。そろそろタイムミリット来そうだったからさ。だから、生徒会に招待したでしょ?それが林さんに俺がしてあげられる最大限の事。」
「どういう意味です?」
「そのうち分かるよ。俺の次席、頑張って。」
そう言って笑う、すっかり大人びた姿になった、ミミズク先輩の姿が頭の中に染み着いた─
(すっかり可愛く無くなっちゃって……)

「ハズキ殿は、計算高い故にな。先を見越して聡見はスカウトされたのじゃよ。」
「それって……私が、問題児という事ですか!?そんなバカな……」
ノーーー!!と、問題児という自覚の無かった、林さんの叫び声が轟いた。
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