パソニフィ・コンフュージョン

沼蛙 ぽッチ & デブニ

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第46話 理想の家族はこんな風に

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妖精さんの動物だった記憶が無いのは、生まれたばかりの頃に擬人化したせいだという事が分かった─

「もう少し、成長してくれたら記憶が戻るかもしれないね……」
「私、心の声口に出してました!?」
「君は、成長させたい?それともこのままで居て欲しいかい?」
そう問いかけて、自室へと戻っていくアキヨシの背中を見送った。
(アキヨシさんは……?)

林さんは生徒会の風紀部長として、今日も校門前で朝の挨拶運動をしていた。
その時、アキヨシの車から降りて来るノブ子を見掛けた。
「妖精さん、おはようございます!」
林さんは、他の生徒よりも満面の笑顔で挨拶した。

ノブ子は、プイッと反抗的に顔を剃らし、そのまま校舎へとふらふらと入っていった。
林さんは、うつむいて、ふるふると振動する自身の体を抱き留めた。沸き上がる感情を黙らすかの様に─
(やはり、あの時の事が尾を引いていますね……)

先日、ノブ子を保護者として叱る為、頬っぺたを指先でチョンッと叩いてしまった事が、二人の関係性を変化させてしまっていた。

生徒会長は、林さんの様子を心配をした。
「聡見や、大丈夫か?我は見えなんだが、鈴虫さんとやらと喧嘩でもしておるのか?」
「いえ……このくらい、大丈夫ですよ?」
その声も、震えていた。

(ああ、たまらない。妖精さんがどんな形であっても反応してくれる喜び!もっと、ウザいと思って欲しい!次はどんなアプローチをかけましょう……)
林さんは、嫌がられたとしても、反応される事自体が嬉しいと感じてしまう、悪質なストーキング体質へと増長していた。

(フフッ、林さん喜んでくれてる……今日も我ながらいい仕事した……)
ノブ子はノブ子で、冷たく当たると林さんが喜んでくれるので、そういう遊びだと思って接していた。

妖精さんは、幼くして擬人化をした。
(アキヨシさんの詰め込み教育、恐るべし!)
高校へと入学出来ても、精神的に同級生には追い付いていない訳で……

言い換えれば、それは真新しいカンバスの様なもの。どんな色にも染められてしまう。

(悪影響なものは阻止!むしろ私色に染めたい!
常日頃から無防備で心配でしたし、私が保護者として、妖精さんを守らなければ!)

そう意気込む林さんは、そんな無防備で警戒心の薄い所や何にでも影響されてしまうノブ子に、勿論、付け入るつもりなのだ。

「えっと……何で林さんは一緒に乗車してきたのかな?」
「今日はお泊まりさせて頂きます。ノブ子ちゃんがだらしなくならない様に管理……いえ、お世話しますね。」
「林さん、凄く寂しがりやさん……」
「君は本当に、妙な人ばかり連れて来るんだから!」と、アキヨシは車のハンドルを叩いた。

(やはり、男親だけでは心配ですし。ミトが自宅で大人しくしている間が親密になるチャンスです!)

「ノブ子お姉ちゃん、寂しいじゃんかあ。帰ってくるの遅いー。」
身体に猫みたいにすり寄ってくる錯乱期間中のミトちゃんに、ノブ子はよしよしと頭を撫でてやった。
「何故、貴女がここに!?自宅謹慎している筈では!」
「家の中だったら、何処に居ても良いだろー」

「お帰りなさいませ、ご主人様。そしてノブ子ちゃん。と、お友達?もう少ししたらお夕飯をご用意しますね!」
(あ、コイツは三者面談のとき妖精さんの保護者面してきた用務員……)
しかしオコメさんは、林さんの事をすっかり忘れる程ご機嫌だった。

何故なら……
「オコメママ、ご飯まだあー?」
台所に立つオコメさんにミトちゃんがすり寄った。
(猛獣にゃんこの胃袋を掴んで、とても良い気分なのです!)
オコメさんは、優越感に浸った。

そんな彼女のうなじに、ミトちゃんがカプッと甘噛をした。
「ひえっ!?」
「オコメママ好き!」
(そ、それは食物として!?)
オコメさんが、生態ピラミッドの呪縛から解き放たれる日は、まだ暫くかかりそうだった……

「ミト、どうしたんです?他の人にえらく懐いてるじゃないですか。何だか本当のにゃんこみたい─」
漸くミトの変化に気がついた林さんだったが、手で撫で様として、シャアアーー!!と威嚇された。
「何で私には、懐かないんですか!」
「何だか、お前は癪にさわるにゃん……フーッ」

そして、オコメさんのご飯を食べた林さんは、悔しがっていた。
(コイツ……家事全般出来るなんて!保護者の座が危うい!)

「妖精さんの身体を洗う権利は私にあるのです!」
「いいえ、より保護者の私がするのです!」
お風呂場にて、林さんとオコメさんが、ノブ子の保護者として、どちらが相応しいのか争いを始めた。
「……石鹸では無く、ぬかぶくろで丁寧にお願いします。」

「ノブ子姉ちゃんは、先にあたしと湯船に浸かるの!」
と、ノブ子とバスタブに入ると、ミトさんの重みでお湯が大量に溢れ出した。
「あああ……」
その水流に乗って、ノブ子が浴室の壁まで流されていった……

アキヨシは、ぞろぞろとお風呂場から上がってくる、湯上がりの女性陣の光景に見惚れた。
(何か……良い!!)

ご主人様……?と、オコメさんが目を細くした。
(見てるのバレた……?)
「先にお湯頂いちゃって、ごめんなさい。」
「……君の純粋さに罪悪感が芽生える!」

その時、玄関のチャイムが鳴った。こんな真夜中に誰だろうとインターフォンを見て、アキヨシは固まった。

「ミ、ミネルヴァさん!?」
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