14 / 139
王都にて 陛下と王子
しおりを挟む
大きな白い馬車とそれに取り巻く者たちがなにやらけたたましく城に入ってきた。それは隣国に行っていたモグリベル国王の一団だった。白い光沢のする豪華絢爛の馬車から国王と王妃が降りて来た。
「父上、お早いお帰りですね。予定ではあと2日は外交があるとの事で隣国に滞在するのではなかったのですか?」
「ああ、ユリウス。わしが居なかった間、ご苦労だった。後で私の部屋にくるように。わしの居なかった間の報告を聞こう」
「父上、お疲れのようですし、報告はまた明日でもよろしいのでは」
「いや、すぐに聞いておきたい事もあるのでな。お前も重大な報告があるのであろう」
「わ、わかりました」
ユリウスはもうすでになにがあったのかを父に知られていると分かった。しかし男爵の娘の婚約破棄など、なんて事はないはずだ。そう思っていた。
「父上、参上致しました。母上もご機嫌麗しく…」
「ええ、ユリウスも」
ユリウスの母は大変美しくユリウスと似ていた。ユリウスが美男子なのは母譲りのようだ。
「それでは父上、この4日間陛下が隣国に行っていた間の報告をさせて頂きます」
「聞かせてもらおう」
「はい、国内ではなんの問題はありませんでした。皆きちんと働き業務も滞りなく進行しております」
にこりと報告するユリウス、いつもの笑顔だ。
「うむ…」
「それはひとえに陛下が築き上げた実績のおかげに他なりません」
おべっかも忘れない。
「…ただ私の個人的な件で報告があります。実はカビラ男爵の令嬢アリアナと婚約破棄を致しました。またシンフォニーと婚約致したいと思います。どうかシンフォニーとの結婚をお許しください」
ユリウスはにこやかに両親に説明をする。父や母が自分に甘くいつも我儘を効いてくれると分かっている。シンフォニーの件も許してくれた。今回も呆れられてしまうかもしれないが、許してくれるだろうと思っていた。実際、アリアナと結婚はすんなりと受け入れ喜んでくれた。今回も元に戻っただけなので喜んでくれるに違いないと疑わなかった。
「なぜだ?」
「え?」
「なぜだと聞いている」
「婚約破棄の理由ですか?実はアリアナは魅了を使って私にアプローチをしてきたのです」
「ほう…」
「ええ、王族に対して魅了を使うなんて犯罪行為でしょう。私は目が覚めたのです。一種の催眠状態だったのでは?という者もいます」
「誰がそんな事を?」
「シンフォニーです。彼女は何度も私の所へ通い魅了を説いてくれたのです」
「シンフォニーが?なんと言って?」
「彼女は魅了を使って私が恋に落ちたかのように錯覚をさせていたと、次期国王という地位のみに興味を持ち、私にはなんの興味もないと、正式に婚約をした翌日からほとんど会う事がありませんでしたからね。それが証拠だとシンフォニーは言いました。次期国王のあなたしか見ていないバカな女なのだと言いました。私は確かにその通りだと思ったのです。」
ユリウスはあんな女捨ててやりました、と自身満々に言った。
「ユリウス…」
母は憂えていた。
「母上、申し訳ございません」
「ユリウス、アリアナがあなたに会う事が減っていたのは色々なセレモニーの事やマナーなど身に着けさせようとしていたからです」
「え?しかし、母上…」
「シンフォニーもそれは分かっていた事でしょうね」
「しかし、大変だからといって私との約束を守らなかったりと…」
「そうさせたのは王室ですよ」
「しかし…」
「ユリウス、アリアナを追放したらしいな」
普段温厚な王と妃だったが、さすがに今の状況では厳しくせざるを得なかった。
「そのとおりです、父上。処刑されても仕方がない状況でした。しかし優しいシンフォニーは、処刑はさすがにと言うもので追放だけで許したのです。あっ家族も捉えてありますよ」
安心してくださいと言わんばかりの言い草だ。
「なぜ勝手な事をした?」
「え?」
「私がいない間はお前が最高権力者ではあるが、こんな大事な事をなぜたった数日待てなかったのだ。それにお前は魅了と言っているがなにか証拠でもあるのか?魅了などそんな能力を持っているものは過去に何人いたと思う」
「いえ、なにか魅了の魔術具を使ったのだと思いますよ。一種の催眠のような」
「そんな魔術具なんぞ聞いた事がない。それに催眠と魅了はまったく違う。そもそも魅了の仕組みも分かっていないのだぞ」
「きっとまがい物で作られた偽物だと思います」
「なに?偽物なら魅了かどうか判断出来ないではないか!そもそもお前がアリアナに勝手にのぼせ上っていたではないか。スケジュールを無理やり開けさせ謁見させたのはお前ではないか!」
「あ…そ、それは…」
「それに魅了にかかれば本人の意思はなくなる。正常には保てないと聞いている。お前がそうなった事などなかった」
「父上…」
「お前はなぜそう勝手な事をするのだ。シンフォニーの婚約破棄だってそうだ。皆が見ている前で派手に婚約破棄を言い渡し、今回はアリアナか!」
ユリウスはオロオロとした。こんなに怒るとは思わなかったのだ。
「シンフォニーには悪いことをしたと思っていた。親達だって恥をかかされたのだ。長い間、婚約者として縛り結婚前に婚約破棄されたのだからな。内密に事を運んでいたらシンフォニーも傷ものとして扱われる事はなかったであろう。そのこともありあの件でどれだけの金が動いたと思っているのだ!」
「…申し訳ございません」
「クローリー家には過ぎるほどの賠償金を払った。シンフォニーにはこの国に居てもつらいだろうからと隣国の第二王子との見合いを取り付けた。あちらも婚約者を病で亡くされて、花嫁を探していた所だった」
「…」
「息子の尻拭いは親の務めだが、お前は自分の立場を分かっているのか…アリアナを婚約破棄して追放しただと?」
「は、はい」
「いつだ…?」
「2日ほど前になります…」
「連れ戻せ…」
「え…」
「連れ戻せと言っている。2度も婚約破棄などそんな勝手な事許されるはずがないだろう!」
「しかし…」
「アリアナを連れ戻して結婚してもらう。アリアナが戻らない場合はお前もシンフォニーもただで済むと思わない事だ!」
「父上…そんな…」
ユリウスは至急アリアナの捜索を開始する。
「父上、お早いお帰りですね。予定ではあと2日は外交があるとの事で隣国に滞在するのではなかったのですか?」
「ああ、ユリウス。わしが居なかった間、ご苦労だった。後で私の部屋にくるように。わしの居なかった間の報告を聞こう」
「父上、お疲れのようですし、報告はまた明日でもよろしいのでは」
「いや、すぐに聞いておきたい事もあるのでな。お前も重大な報告があるのであろう」
「わ、わかりました」
ユリウスはもうすでになにがあったのかを父に知られていると分かった。しかし男爵の娘の婚約破棄など、なんて事はないはずだ。そう思っていた。
「父上、参上致しました。母上もご機嫌麗しく…」
「ええ、ユリウスも」
ユリウスの母は大変美しくユリウスと似ていた。ユリウスが美男子なのは母譲りのようだ。
「それでは父上、この4日間陛下が隣国に行っていた間の報告をさせて頂きます」
「聞かせてもらおう」
「はい、国内ではなんの問題はありませんでした。皆きちんと働き業務も滞りなく進行しております」
にこりと報告するユリウス、いつもの笑顔だ。
「うむ…」
「それはひとえに陛下が築き上げた実績のおかげに他なりません」
おべっかも忘れない。
「…ただ私の個人的な件で報告があります。実はカビラ男爵の令嬢アリアナと婚約破棄を致しました。またシンフォニーと婚約致したいと思います。どうかシンフォニーとの結婚をお許しください」
ユリウスはにこやかに両親に説明をする。父や母が自分に甘くいつも我儘を効いてくれると分かっている。シンフォニーの件も許してくれた。今回も呆れられてしまうかもしれないが、許してくれるだろうと思っていた。実際、アリアナと結婚はすんなりと受け入れ喜んでくれた。今回も元に戻っただけなので喜んでくれるに違いないと疑わなかった。
「なぜだ?」
「え?」
「なぜだと聞いている」
「婚約破棄の理由ですか?実はアリアナは魅了を使って私にアプローチをしてきたのです」
「ほう…」
「ええ、王族に対して魅了を使うなんて犯罪行為でしょう。私は目が覚めたのです。一種の催眠状態だったのでは?という者もいます」
「誰がそんな事を?」
「シンフォニーです。彼女は何度も私の所へ通い魅了を説いてくれたのです」
「シンフォニーが?なんと言って?」
「彼女は魅了を使って私が恋に落ちたかのように錯覚をさせていたと、次期国王という地位のみに興味を持ち、私にはなんの興味もないと、正式に婚約をした翌日からほとんど会う事がありませんでしたからね。それが証拠だとシンフォニーは言いました。次期国王のあなたしか見ていないバカな女なのだと言いました。私は確かにその通りだと思ったのです。」
ユリウスはあんな女捨ててやりました、と自身満々に言った。
「ユリウス…」
母は憂えていた。
「母上、申し訳ございません」
「ユリウス、アリアナがあなたに会う事が減っていたのは色々なセレモニーの事やマナーなど身に着けさせようとしていたからです」
「え?しかし、母上…」
「シンフォニーもそれは分かっていた事でしょうね」
「しかし、大変だからといって私との約束を守らなかったりと…」
「そうさせたのは王室ですよ」
「しかし…」
「ユリウス、アリアナを追放したらしいな」
普段温厚な王と妃だったが、さすがに今の状況では厳しくせざるを得なかった。
「そのとおりです、父上。処刑されても仕方がない状況でした。しかし優しいシンフォニーは、処刑はさすがにと言うもので追放だけで許したのです。あっ家族も捉えてありますよ」
安心してくださいと言わんばかりの言い草だ。
「なぜ勝手な事をした?」
「え?」
「私がいない間はお前が最高権力者ではあるが、こんな大事な事をなぜたった数日待てなかったのだ。それにお前は魅了と言っているがなにか証拠でもあるのか?魅了などそんな能力を持っているものは過去に何人いたと思う」
「いえ、なにか魅了の魔術具を使ったのだと思いますよ。一種の催眠のような」
「そんな魔術具なんぞ聞いた事がない。それに催眠と魅了はまったく違う。そもそも魅了の仕組みも分かっていないのだぞ」
「きっとまがい物で作られた偽物だと思います」
「なに?偽物なら魅了かどうか判断出来ないではないか!そもそもお前がアリアナに勝手にのぼせ上っていたではないか。スケジュールを無理やり開けさせ謁見させたのはお前ではないか!」
「あ…そ、それは…」
「それに魅了にかかれば本人の意思はなくなる。正常には保てないと聞いている。お前がそうなった事などなかった」
「父上…」
「お前はなぜそう勝手な事をするのだ。シンフォニーの婚約破棄だってそうだ。皆が見ている前で派手に婚約破棄を言い渡し、今回はアリアナか!」
ユリウスはオロオロとした。こんなに怒るとは思わなかったのだ。
「シンフォニーには悪いことをしたと思っていた。親達だって恥をかかされたのだ。長い間、婚約者として縛り結婚前に婚約破棄されたのだからな。内密に事を運んでいたらシンフォニーも傷ものとして扱われる事はなかったであろう。そのこともありあの件でどれだけの金が動いたと思っているのだ!」
「…申し訳ございません」
「クローリー家には過ぎるほどの賠償金を払った。シンフォニーにはこの国に居てもつらいだろうからと隣国の第二王子との見合いを取り付けた。あちらも婚約者を病で亡くされて、花嫁を探していた所だった」
「…」
「息子の尻拭いは親の務めだが、お前は自分の立場を分かっているのか…アリアナを婚約破棄して追放しただと?」
「は、はい」
「いつだ…?」
「2日ほど前になります…」
「連れ戻せ…」
「え…」
「連れ戻せと言っている。2度も婚約破棄などそんな勝手な事許されるはずがないだろう!」
「しかし…」
「アリアナを連れ戻して結婚してもらう。アリアナが戻らない場合はお前もシンフォニーもただで済むと思わない事だ!」
「父上…そんな…」
ユリウスは至急アリアナの捜索を開始する。
62
あなたにおすすめの小説
【完結】遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!
天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。
魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。
でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。
一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。
トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。
互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。
。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.
他サイトにも連載中
2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。
よろしくお願いいたします。m(_ _)m
水精姫の選択
六道イオリ/剣崎月
ファンタジー
見た目が美しくも奇異な小国の王女パルヴィは、財政難から大国に身売りすることになったのだが、道中で買うと言った王が死亡したと聞かされる。
買われ故国を救いたいと願う王女は引き返さずに大国へと赴き
平民に転落した元令嬢、拾ってくれた騎士がまさかの王族でした
タマ マコト
ファンタジー
没落した公爵令嬢アメリアは、婚約者の裏切りによって家も名も失い、雨の夜に倒れたところを一人の騎士カイルに救われる。
身分を隠し「ミリア」と名乗る彼女は、静かな村で小さな幸せを見つけ、少しずつ心を取り戻していく。
だが、優しくも謎めいたカイルには、王族にしか持ちえない気品と秘密があり――
それが、二人の運命を大きく動かす始まりとなるのであった。
母は何処? 父はだぁれ?
穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。
産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。
妹も、実妹なのか不明だ。
そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。
父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。
母は、どこへ行ってしまったんだろう!
というところからスタートする、
さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。
変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、
家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。
意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。
前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。
もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。
単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。
また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。
「小説家になろう」で連載していたものです。
【完結】令嬢は売られ、捨てられ、治療師として頑張ります。
まるねこ
ファンタジー
魔法が使えなかったせいで落ちこぼれ街道を突っ走り、伯爵家から売られたソフィ。
泣きっ面に蜂とはこの事、売られた先で魔物と出くわし、置いて逃げられる。
それでも挫けず平民として仕事を頑張るわ!
【手直しての再掲載です】
いつも通り、ふんわり設定です。
いつも悩んでおりますが、カテ変更しました。ファンタジーカップには参加しておりません。のんびりです。(*´꒳`*)
Copyright©︎2022-まるねこ
【完】瓶底メガネの聖女様
らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。
傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。
実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。
そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。
キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる
藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。
将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。
入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。
セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。
家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。
得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。
モブで可哀相? いえ、幸せです!
みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。
“あんたはモブで可哀相”。
お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる