もしかして私ってヒロイン?ざまぁなんてごめんです

もきち

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ふたりの王子

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 ベルナルは魔の森へ向かった。
「陛下も仰っていましたが心当たりがあるのですか?」
「気持ち悪い。そんないい方したら口を利かない」
「ですが、第一王位継承者ですし、ぷっふふ」
「笑ってるじゃないか、コルクス、おまえだって第二継承者だろう」
「俺は悪までも2番目ですよ。王子」
「だから、おまえも王子だろう」

 魔の森に向かっている豪勢な馬車の中には王位第一継承者と第二継承者が乗っているというなんとも奇妙な取り合わせになっていた。
 この二人は従兄弟同士だ。陛下の弟、そのまた下の弟の息子たちだ。

「俺がちょっと早く産まれただけだろう。いつでも変わるぞ」
「いやいや、第三王子であったわが父と第二王子であったベルナルの父上とでは天と地ほどの違いがありますゆえ…」
「言ってろ!」

 二人は同じ年という事もあり、昔から仲がよかった。ユリウスとは年が離れてもいた。現在の王妃はなかなか子宝に恵まれなかったのだが長年の治療により授かることができた。その為、ベルナルとコルクスはユリウスより5歳ほど年上になる。ユリウスが生れた事により、王位継承権はユリウスが第一になった。
 よってあまり接点もない。それだけ扱いは区別されてきた。両親からはユリウスになにか合った時は王位継承権も近づく事があるから覚悟はしておきなさいとは言われていた。しかし、優秀な婚約者のシンフォニーやぼんやりとはしているが健康なユリウスがどうにかなるとは思っていなかった。

 そして二人は割と好きな事をしていた。ベルナルは高等部には進まず、極秘に冒険者に登録し生計を立てていた。そこから出世して兵士にまでなったのだ。コルクスはこれまた高等部には進まず魔術具の専門店でそこの主の弟子になり商売を引き継いでいた。

「連れ戻されて迷惑してるよ」
 コルクスは言う。
「俺もだよ」
「ベルナルはまだ独身だからいいけど俺は妻子持ちなんだぞ」
「嫁は普通の平民だったな。平民が王妃になるのか、夢があるな」
「なんねーよ。俺はそのアリアナ嬢?を見つけたらお役御免だ」
「死んでるかもれないぞ」
「それは困る。騎士が迎えに来た時、嫁は真っ青になっていたんだぞ。何か罪を犯したんじゃないかって。俺がまさか王族だなんて思ってなかっただろうからな」
「おまえがさっさと貴族籍を抜かないからだ」
「それは…まあ、なにかの為にってあるだろう」
「父親の遺産だろう。欲張るからだ」
「くっ、金はほしいだろう…」
「平民の生活をして初めて自分は恵まれていたと知るよな。いい経験ではあったけど、やっぱり金は必要だよ。でも籍を抜かなかったんだから、おまえが悪い。今回みたいな事はこれからもあり得る事だ。今後考えるんだな」
「…まぁ、な…、でも陛下も言っていたけど場所は分かっているんだろう?」
「まあ行った事はあるよ」
「どこに?女が生きていればそこにいるって場所にか?」
「ああ、でも確信はしてない。たぶんって話だ。数回子供の頃に遊びに行かせてもらっていた。魔の森の中にあるばあちゃんの家だ」
「おばあ様の?おばあ様っ子だったもんな、ベルナルは。王妃だったっていうのに晩年は行方をくらまして、どこに行ったのかと思っていたら魔の森の中心部にいる事がわかったって、父上も呆れてたもんな。じゃあ、そこだろう。場所は覚えているのか?」
「覚えているけど…分からない」
「は?どういう事だ」
「ばあちゃんが死んだときに知らせが来たんだ。それはばあちゃんが生前に自分で作ったメール便だったんだけど、俺らは慌てて魔の森の家に向かったんだ」
「ああ、メール便ね。あれはすごいよな。魔術具に郵便の機能を組み込ませて目的地まで手紙を飛ばせるんだから、しかもよく手に入る安い魔石で出来るんだからな。自分のおばあ様が発明者だなんてびっくりだよ。あぁ一度はお会いしたかったな」
「金は今でも掛かるけどな。で、おまえはそれに感化されたんだっけ。俺はおまえもばあちゃん家に誘っていたと思うけどな」
「魔の森に行きたいわけないだろう。母上も反対だったし」
「ばあちゃんは魔獣対策に余念はなかったぞ」
「そうかもしれないが、城に来ていた時に挨拶をしようとすると母上が嫌がったってのもあるな」
「っぷ、ああ、そうそう。変わり者だからと物凄く嫌われてたな」
「そう、まさかそんなすごい人だったなんて知らなかったからなぁ…本当に馬鹿だったよ」
「でな、」ベルナルは話を戻す。
「急いでその場所に向かったんだけど、ばあちゃんが築いた物がひとつもなかったんだ。もちろん、遺体もない」
「家もないってことか?」
「ああ、一緒に来ていた騎士や兵士は場所が違うのだろうと陛下に報告された。で、ばあちゃんの遺体は見つからず、墓石のみで葬式を上げる事になった。まあ子供だったから責められはしなかったけど、けど…」
「けど?」
「場所は間違ってはいない。痕跡がなくなったんだ」
「じゃあ…」
「近くにはばあちゃんが植えた植物がたくさん残っていた。だから間違うわけない。だから…ばあちゃんは隠したんだと思う。家を。そして、知りもしない女に大事な家を託したんだ」
「なんだよ、それ」
「そう、ムカつくよな」
「おまえ…まさか、その家を取り戻そうとか考えているのか?」
「可笑しいか?おまえだってその家が見つかれば、ばあちゃんの遺産とも言える実験メモとか手に入るんだぞ」
「え?そんなものがあるのか?」
「あったな、色々な難しそうな本とかずらりと並んであちこちにばあちゃんの字でメモが散乱していた。あんな顔だけの女になんかが持っていたってなんの役にも立たんだろう」
 コルクスはごくりと喉を鳴らす。
「女を見つけたらどうする?」
「女は国王に引き渡す。俺と結婚して王妃にでもなれば女も満足だろう?そして、王位に就く代わりに俺はあの家を貰う。そして女に子を産ませ王子が誕生、俺はお役御免というシナリオさ」
「俺には?」
「もちろん、ばあちゃんのメモを渡す。俺が持っていても分からんしな。作った商品の利益を何パーセントか俺にくれればだけどね」
「国に渡さないんだな」
「金は必要なんだよ」
「まあな、いいぜ。俺も王族には嫌な目にしか合ってない。この国がどうなろうと関心なしだ」
「だろ!散々冷遇しといて、王位継承権?いらねー-ってんだよ!」
「まったくだ!」

 二人の王子の利害は一致した。
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