もしかして私ってヒロイン?ざまぁなんてごめんです

もきち

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コバック男爵の事情

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「モグリベルのベルナル様が帰られました」
 ショーン・コバック男爵の秘書が言った。

 アリアナが行方不明になってからの初めての冬、その中旬にまた2回目のベルナル王子の訪問だった。家に来た郵便物やメール便を監視され提出させられた。
 はっきりいって不愉快だ。確かにまだ籍はモグリベルだが数年前から移籍する申請書類は準備している。あとはモグリベルからの書類待ちだったのだ。何年も待たされている。何度も申請を促していたのにその度に確認中と言われていた。もちろん国が渋るには分かっていた。事業に成功していたコバック男爵の納める金が減るのだから国は放したがないとは思っていた。だから何年前からも有力な貴族に根回しをしていたのに今回の件で水の泡となってしまった。

 姪の婚姻は喜ばしい事だと思っていたが、なんのコネもなかった一からの事業の邪魔だけはやめてほしいと思っていた。
 いやな予感は的中した。婚約が破断した。しかしこちらは何の関係もないと思っていた。王族からの文書が届いた。ようやく申請が通ったかと思っていたら籍をシシリアキングスに移すのであれば売国奴としてそれなりの処罰になるとの事だった。

 腹立たしかった。事業を立ち上げた時点でこちらに籍を置くことを考えなくはなかったが父母がそれを反対した。後を継いだのだからモグリベルの貴族として全うしてほしいと言われたのだ。その後ふたりは亡くなった。すぐにシシリアキングスに籍を移すべきだった。忙しいからと後回しにしていた。私の落ち度だ。

 しかし今回の件で移籍は一生叶わなくなった。何の世話にもなっていない国に一生多額の金を納めなければならなくなった。

 アリアナの件はノータッチだ。姉には申し訳ないが探す協力はしない。姉の手紙からは「あなたの力でアリアナの捜索をお願いしたい」との要請が来ていた。しかし、魔の森なんか誰が行きたいというのか、多額の費用を出してまで探し出すほどの価値がある娘ではない。
 姉には精一杯探していると報告はしている。

 姉夫婦には住宅を提供した。小さな家だ。家賃もただにしている。姉たちはこちらの邸に住まわせて貰えると思っていたようだが、そんな義理はない。金なら対象はあるのだから自分の娘は自分達で探し、家くらい自分で用意してほしい。
 シシリアキングスにモグリベルの納税に作業員への給金や事業展開、金は川のように流れ消えていく。まったくもって貯まりはしない。

「旦那様、モグリベルのベルナル様から帰られる際にアリアナ様の捜索は打ち切る事になったと伝えてほしいとの事です」
「本人がそう言ったのか?」
「はい、旦那様を呼びましょうかと言いましたが伝えてくれるだけで言いと…」
「そうか…」
 忙しいので対応は執事や秘書に任せていた。王族に対して無礼極まりないのは承知している。しかし、一生納税させられるのだ。次期国王の顔など見たくもないのだ。
 アリアナの件がなくなったのであれば郵便やメール便の提出はなくなったという事だろう。大事な事業の中身をあれ以上見られずによかった。王族に繋がりを知られ事業を横取りされる事はよくある。

 数日後、一通の手紙が届いた。手紙は姉からだった。まだ何かあるのかと読むのを躊躇した。封を開けるのに10日は放置していた。もう私に頼らないでくれ、そう思った。
 しばらくしてその手紙を眺めていたら姉の字ではない事に気が付いた。もしかして長女か次女からの手紙で姉の容態が悪化したのかと思った。
 姉はアリアナの件で体調を崩し生きる気力を無くしていた。すぐに気が付くべきだった。面倒な事は御免だが死んでほしいわけではなかった。

 手紙を開くと姉からでも、その長女でも次女でもなくアリアナからの手紙だった。

 生きていたのか…今はシシリーに別の名で平民として生活を送っているという内容だった。家族はどうなっているか連絡を取りたいとしている。

 私は返事を出した。家族は無事であるやモグリベルがまだアリアナを探している事を、そして王都に付いたら連絡を寄越すようにと。

 正直生きているとは思っていなかった。詳細は手紙では分からなかったが家族に会いたいのだと言う事はわかった。姉夫婦に連絡をしていいのか迷った。姉は飛び上がって喜ぶだろう。
 しかし本物かどうかは確認しなければならない。
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