もしかして私ってヒロイン?ざまぁなんてごめんです

もきち

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第61話

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 リアはもう大丈夫とモジャに言われ、叔父たちを迎えに王都に向かった。王都の門を入るとオレンジの頭が見えた。オレンジサンダーのメンバーだ。引き返す訳にも行かずリアは進んだ。

「あれ?リアじゃないか。もう叔父さんの所から戻ってきていたのかい?」
 マオはリアに気が付いてなかったようだ。隠れればよかった。
「ええ、まあ」
「今、門に入ってきていたな。こんな朝からどこに行っていた?」ガロが言う。
「言う必要はないわ」
「メンバーだろう?」マオが言う。
「脱退するわ」
「命の恩人にその態度か…」ガロがため息交じりに言った。

「まだ言うの?お礼は言ったわ。まだお礼が足りないようなら叔父に言ってお礼をさせるわ。それでいい?」
「リア、俺たちは心配しているんだ」
 マオは心配そうな顔をしている。

「ありがとう、マオ。すごく感謝している。でもこれ以上は踏み込んで欲しくない。まだ家族の事も解決してないの」
 家族と再会も秘密だ。

「…そうか」
「あっ、シンの事はどうなったの?」
 リアは話を逸らすことにした。

「あの件は俺が証人になっているからリアが変に疑われる事はない。リアにも話が必要だと言ってはいるが、リアがいいなら冒険者ギルドに行ってくれ」
「分かったわ。ありがとう。叔父と今後の相談してから話す事があれば話すと思う。それまで聞いてほしくないの。ごめんなさい」
「分かった」
「偉そうに」

 リアはガロの言葉を無視して、他のメンバーに挨拶を言って別れた。叔父たちがいる宿より先に冒険者ギルドに向かった。先にそっちをさっさと済ませたかったのだ。

「おはようございます。えっと、私に話があると言われたので来たのですが」
「リアさんですね、実はシンの事でギルド長がお話を聞かせてほしいと言っているんですよ」
「分かりました。今からでもいいですか?」
「ギルド長室に案内します。こちらへ」
「はい」
 リアは今黒のショールを巻いている。殺されかけた時は水色のカツラをしていた。見た目が違うのは大丈夫だろうかとリアが思っているとイカツイ成りをした男が入って来た。

「ああ、あんたがリア?まだ駆け出しの冒険者だってね。まあ、話はオレンジサンダーのマオから聞いている。他のメンバーからも証言が取れている。しかしあのマオがなんでこんなのを…」
「は?」
 ギロリと男は自己紹介もせずにリアを睨み上げる。

「あんたとシンはマオを取り合っていたんだろう?最近オレンジサンダーのメンバーに加入したらしいな」
「取り合ってませんし、まだ正式なメンバーでは…」
「正式なメンバーでない事は分かっているが、最近マオはシンに分かりやすいほどご心酔していたのは有名だ。なのにリアと名乗る女が現れてからマオがリアに夢中になっているという話だ。そのリアがあんた?ピンクの髪に美人だという噂だったのに。噂は噂だな」
「…あの、それで証言がどうって…」
「ああ、シンは殺す気はなかったと言っている。剣を習いたいからと指南していた所をマオが勘違いをして自分を攻撃してきたと言っているんだ。で、どうなんだ?」
 ギルド長室に来たと言う事は、この男がギルド長だと思われるその男は面倒くさそうに安い羽根ペンを机にトントンと何度も押し付けている。それが何やら威圧を感じた。

「どうなんだと言われても、私は誰にも剣を習いたいなどと言った事はないです。私は長く冒険者をしていきたい訳ではなかったので。シンがそう言っているのであればその話はウソです」

「じゃあなんでシンはあんたを切ろうとしていた?」
「それはシンに聞いてください。私は薬草を摘んでいただけなんです」
「それはマオも言っていた。話し声は聞こえなかったから分からないが女がしゃがんでいる所へ、シンが女の背後から剣を振りかぶっていた所を見たと、だから攻撃するしかなかったと…」
「その通りです」
 リアは頷く。

「はっきり言うとBクラスの言う事とFクラスの言う事だと、Bクラスが優先される。あんたがシンの話を本当の話だと証言すれば、マオもシンもお互いに罪はなくなる」
「…どういう事ですか?殺されそうになった私にシンを庇ってウソをつけと?」
「…」
「私はシンを庇う道理がないのですけど。しかも武器も持っていない手ぶらの女の背後を狙うなんて信じられないわ」
「わかった。今の話は俺の秘書が調書を取っている。それを提出しよう。いいんだな。冒険者であるシンは女を襲った。未遂とはいえ罪人になり鉱山送りだ」
「私に言われても…」
「友人だろう?」
「違います」
「紅茶のおかみと仲がいいんじゃないのか?」
「ヨモのこと?ヨモとは友人よ」
「おかみとシンは仲がいいと聞いているぞ」
「それは知っている。でも私は関係ないわ」
「そうなのか?」
「私は最近王都に来たのよ?シンなんて初めましてよ?友人ではないわ。ただの知り合い。そんな人から剣を向けられたのよ?なんで私が庇わないといけないの?」
「…わかった。今日はご足労だった。また話があるかもしれん」

 リアはギルド長室を後にした。どう考えてもあの男はシンの味方をしたいようだった。確かに美人なうえにはかなく守って上げたくなるのだろう。そして実力もあり、これから力を付けていくマオとピッタリのカップルだ。

 しかし、リアに剣を向けたのは事実でそれはシンの事情でしかない。リアが死ねば自分が安心して安定の生活が送れると思ったのだ。その後のリアやリアの家族の悲しみなど無視した行動なのだ。その罪は償うべきだろう。

 シンの剣がリアに届いていたら、家族との再会は叶わなかったのだ。温かく迎え入れて喜んでくれた家族の顔を見ることは永遠になかったのだから。
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