もしかして私ってヒロイン?ざまぁなんてごめんです

もきち

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第64話

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 ヨモの紅茶専門店を出た後、ショーンは仕事があると金貨を数枚リアに渡して帰って行った。居心地が悪かったようだ。そのお金で遠慮なく明日のお茶会用の買い出しをする事にした。
 家族で王都の街で買い物を楽しんだ。ユグンで待つ他の姉や子供達の生活必需品を買い込んだ。沢山のお土産はリアの麻袋にしまった。

 翌朝、リアたちは宿を出ると門に向かう。リアはオレンジの髪や紺色の髪がいない事を確信した。マオにガロだ。冒険者の彼らはいつどこで出くわすか分からない。今この状態でマオ達に出くわすととても厄介だ。その為家族とショーンとリアとで門まで別行動だった。そして門の外で合流するとリアは周りを見渡し誰もいない事を確認し森の茂みに入った。

「こんな所にツリーハウスがあるの?」
「まだまだこの先よ。言ったじゃない。魔の森の近くだって」
 リアは皆に影が薄くなる魔法円を取り出し掛けた。そして麻袋から箒を取り出した。リアの解析によると6人は乗れるはずである。リアが箒にまたぐと青く薄い椅子が現れる。これはいつもの事だ。いつもはひとり分だ。しかし今回は人数がいる。しばらくすると箒が光り、リアの両隣に、後ろに3席の青く薄い椅子が現れた。

「あっ椅子が見える」リアが叫んだ。
「椅子?」
「ほら見えない?」
 リアが指さしていた所にぼんやりと椅子が浮き出て来た。
「これ?何ここに座るの?」
 箒に跨っている妹を見て何しているのか理解できない姉は叫んだ。

「うそでしょう?!何よこれ!」
「面白そうじゃないか、イザベラはアリアナの後ろに座りなさい。私がアリアナの隣に来よう」
 父リベルは楽しそうにリアの横に浮かぶ椅子にそっと座りそれに習って母イザベラも座った。

「じゃあ、姉さんの隣は私が座るろう。シルビアも早く好きな所に座りなさい」
 ショーンがイザベラの隣に座ると姉のシルビアに言った。
「ええぇぇ、どうして皆、納得出来るのぉ」
「姉さま、置いていくわよ」
「そうだぞ、早く座りなさい」
 両親から言われシルビアは覚悟を決めた。

「わ、分かったわよ」
 シルビアは母の横に座り腕にしがみついた。

 出発!そう言うと箒は浮かび上がった。リアが一人で乗っていようと5人に増えようと変わりなく飛んだ。意外にシルビアだけ目を回していた。

「姉さまは口だけね」
 ぐったりしているシルビアを置いてショーンとリベルとイザベラはわちゃわちゃしながらモジャと所に進んで行った。

 リアはモジャに家族を紹介して麻袋からお茶会の為に買った食材達を準備していたテーブルの上に次々に出していた。ショーンや両親はモジャにお礼を言っていた。
『わしは何にもしとらんが、ゆっくりして行くがいいのぉ』
 その日のお茶会という、朝食会・昼食会・お茶会は日が暮れるまで続いた。

「皆そろそろ、宿に戻らないと」
 リアは楽しんでいる所に水を差すのは嫌だったが泊まるベッドがないのだ。
「もうそんな時間なの?早いわ。久しぶりにゆっくり出来てすごく楽しかったわ」
 シルビアは朝の箒酔いも治りツリーハウスを見学したりモジャと話をしていたり楽しんでいた。
「今度はユグンの家族も連れて来ましょう。だから今日はもう宿に戻りましょう?」
 夕方まで門に戻らないと門が閉まってしまうのだ。

『男どもはそこら辺に寝ればよかろう。ハウスにはベッドが2つあったじゃろうて』
「まぁ…叔父様が地面で寝てもいいなら、ベッドルームの広いベッドとお父様とお母様に使ってもらってキッチン横のベッドは姉さまに使って貰ってもいいけど」
「リアは?」
「私はリビングのソファで寝るわ」
「まぁ私もショーンとここで飲み明かしても構わんな」
 と、リベルはグラスを上げた。お酒も沢山買ってきていたのだ。
「そうですね。魔獣も結界があって入って来ないのだろう?男通し朝まで飲みますか。義兄さん」
 夜の夕食はキャンプのように焚火をしてローウルフの肉を焼いた。食べた事のないローウルフの肉に皆喜んだ。
 陽も落ち暗くなり楽しかったパーティーはお開きになった。母と姉はハウスに戻りリアは男性達の毛布を取りに行った。夜は少々冷えたが焚火を燃やし続けるなら問題はなさそうだ。
「毛布はまだ沢山あるから寒かったら言ってね。まだ夜は寒いから風邪ひかないように」

 リアがハウスから毛布を持ってきた。それを置いてハウスに戻ろうとした所、ショーンに声を掛けられた。
「ヨモと何を話していた?」
「え?」
「カウンターで何やら真剣に話をしていただろう?」
「ん~えっと…」
 リアは迷った。叔父はどこまで聞いていたのだろう。

「誰に命を狙われていたと話していたんだ?」
「アリアナ!なんのことだ!」
「姉さんに心配かけまいと言わなかったようだが、さすがに捨て置けないよ」
「叔父様、お父様、黙っていてごめんなさい」
 リアはシンの出来事、これから冒険者ギルドといざこざがあるかもしれないという話をした。
「はぁそんな事はきちんと伝えて貰わないと後で困った事になるだろう。リアがマオを手に入れるためにシンを落とし入れるウソを付いていると思われるかもしれんのだろう?」
「…そう」
「明日一緒に冒険者ギルドに行くぞ。いいね」
「はぁい」
「一人で解決しようとするんじゃない。アリアナがまた危険にさらされる事になるかもしれなかったんだぞ。そうしたらまたイザベラが泣くことになる。そんな思いをもうさせないでくれよ」
「はい、分かりました」
「で、マオとは誰なんだ?わしは冒険者でもいいと思うぞ。アリアナが幸せになるのなら」
 リベルは真剣な表情からにこやかな顔になった。

「違うわよ。そもそもそんな話じゃなかったのに、勝手に尾ひれがついたの!」
「義兄さん、マオはシシリアキングスの第2王子のマオリエッタです。数年前から城を抜け出して冒険者を名乗っているようです」
「っ…また王子か…アリアナ、お前は王子に縁があるなぁ」
「望んでません」
「恋仲じゃないんだね」
「もちろんです。この間初めて会ったのよ?」
「それを含めて冒険者ギルドに話し合いに行こう」
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