もしかして私ってヒロイン?ざまぁなんてごめんです

もきち

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第65話

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 翌日、モジャと別れ家族と共に王都の宿に戻った。リアとショーンは少し休んだあと二人で冒険者ギルドに向かった。リアは黒のショールを付けずに叔父ショーンの後ろを静かについて行く。
 ショーンがヴァナを見せるとギルド長室に通された。

「ギルド長のサベチです。コバック男爵ようこそいらっしゃいました。そちらのお美しい方もこんなむさ苦しい所へようこそ。わざわざこちらにいらっしゃらなくても私が邸まで行きましたのに。それで本日はどのような件で?」
 ギルド長室に通されるとすぐに、前に会った男が現れた。そしてきちんと自己紹介をした。リアには自分が何者かと言う事すら言わなかったのに。

「忙しい所すまないね、ギルド長。別件でこちらに来ていたので直接参ったのだ。しかも対応が遅れると大変な事になるかもしれないからね。実は先日姪が大変な事件に巻き込まれてましいましてな。ギルド長にだけでも一言言っておこうと思いましてな」
「姪御様ですか?はて、なんの事件でしょうかな?」
「数日前にシンと言う冒険者に斬り付けられたようでして」
「え?!」
 サベチは目をギョロギョロとさせ慌てた。あの地味なリアの顔を思い出す。まさか貴族の姪だったとは。

 貴族の家系はギルド長なら把握している。コバック家の家系ももちろん把握していた。その中にリアと名乗る人物はいなかったはずだ。しかし、貴族が平民に紛れて冒険者をしている事はもちろんある。そしてサベチはコバック家には3人の姪がいる事も知っていた。絵姿も見たことがある。皆それぞれ美人で魅力的な女性だ。決してあんな地味で可愛げのない女ではなかったはずだ。
 サベチは今度リアが冒険者ギルドに現れて取引をするようなら、不正に安く取引してやろうと思っていた。シンのような美しい冒険者を罪人にしてしまった地味女には腹が立っていたのだ。剣を習っていたと証言してくれていたらシンは罪人にならずに済んだのだ。こっそりと調書を書き直そうかとも思っていた。それがまさかコバック男爵の姪…調書を書き直さなくてよかった。不当取引をしなくてよかった。心からそう思うサベチであった。

「せ、先日確かにシンという冒険者がリアという女性に襲った事件はありました。そのリア様が姪御様であら、あられましたか…」
 あ、かんだ。
「そうだ。横にいるのがその姪だ」
「え?」
 サベチはピンクプラチナの髪をしたリアを見た。
「ま、まさか、アリアナ様では…」
「ほう、よく知っていたな」
「もちろんです。絵姿を何度も見ています。行方不明と聞いていましたがご無事だったのですね」
「まだ正式に発表はしてはいないが本人だ。そして彼女はリアと名乗っている」
「そ、しかし昨日ギルドにお越し頂いた方は誰なんです?まったくの別人でしたよ?」
「ギルド長、それは申し訳ありません。昨日来たのも私です。この件の事は家族が心配するからと内緒にしていました。でも叱られてしまい今日来たわけですが、実は昨日の姿は見た目が別人に見える魔術具を使用していました。それで別人のような姿になっていたのです。マオには会ってすぐにバレてしまいましたが…」

「はああ、なるほど…マオは確かに2つの目を持っていますから隠せなかったという訳ですか。確かに今のお姿ならマオが心変わりするのも分かりますなぁ」
 と、サベチはニヤニヤしている。

「アリアナは大事おおごとにしたくないと、私の姪である事は伏せて冒険者登録をしていたので今回の件も私は知らないままだった。ですから対応が遅くなってしまったのですがね。私が心配しているのは冒険者はどうも古参者を大事だいじにする傾向があると聞く。多少なりともアリアナの方がそのシンより新参になりますな。地味ななりをしたアリアナではやはり美しいシンの味方をしてしまうだろうと懸念しておりました。いや、サベチ殿はそのような方ではないと思っておりますがやはり男は美人に弱い」
「ですな」
「なので忠告に参ったのです」
「な、なるほど。ゴホン、もちろん、シンが犯した事件をなかった事には致しませんよ。それはコバック男爵の姪御様というからではありません」
「もちろん」
「確かに私も美人に弱い、し、しかし罪は罪、きっちりと鉱山で罪を償って頂きます。もちろん、もちろん」
 たぬきとたぬきの化かし合いかな。

「それを聞いて安心しましたよ、サベチ殿。アリアナにはしばらくは魔術具を付けて生活して貰おうと思っています。アリアナになにかあったら…サベチ殿…」
「もちろん!そのような事がないように冒険者達には今回の件で罰せられるのはシンである事をきちんと伝わるように致します!ええ、私からきちんと伝えます!ご安心下さい!」

「アリアナの事は正式に発表するまで内密にお願いしたい」
「もちろんですとも」
「いや、よかった。サベチ殿が優秀なギルド長で安心したよ。今日は失礼しよう、アリアナ」
「はい、叔父様」

 冒険者ギルドを出た。
「やっぱり黒のショールを付けて生活するの?」
「まだ取らない方がいいのではないかな?どこにモグリベルの使者が隠れているか分からないからね」
「あのギルド長に私が生きていると言ってしまってよかったの?」
「平民は貴族に弱い者なのさ。私が爵位の低い男爵でもね。平民から見たらあまり関係ないからね。それにアリアナの正体を言った方が説明が早いだろう。地味なリアのまま話をしても疑われるだけだ。あと実は私は冒険者ギルドに寄付もしている。あの男は私に頭が上がらないだろう」
 ショーンはニヤリとした顔をした。

「そうなんだ。叔父様、ありがとうございます。でももう冒険者には行かないつもりなの。王都を離れようと思って」
「…そうなのかい?その前にモグリベルときちんと話し合いをした方がいいと思うがね」
「それは…はい、そうですね」
「安心しなさい。もちろん話し合いの席には私もいる。無理やり連れて帰られるような事はない。もしそんな事があれば私はマオリエッタ王子に頭を下げて助けを乞うよ。そうならないといいけどね」
「マオにはモジャの事を言わないとダメよね?今はまだモジャの事も家族との再会の事も言ってないけど、助けを乞うなら全部言わないと…」
「マオリエッタ王子は好奇心旺盛だからね。モジャを見せろとか譲れとか言ってくるかもな」
「助ける代わりにモジャをくれとか言われるのは困るわ」
「確かにモジャはそんなものでもないしね。どうしたものか…」

 二人はヨモの所に顔を出し、紅茶を楽しんだ。
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