もしかして私ってヒロイン?ざまぁなんてごめんです

もきち

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第82話

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 しばらくモズは茫然としていた。そして少し落ち着いて来たのかモズはリアに話しかけた。
「めっちゃかっこよかったぁ。あれ、キングウルフだろう?」
 え?と、モズを見ると目をキラキラさせた子供みたいな顔をした大人がいた。
「ああ、キングダムウルフだっけ?でもコスモポリタンではキングって言われているんだ。たまにこっちでも生息情報があったんだ。まさか出会うなんて、しかも会話してたぜ」
「…」
「もしかしてリアってテイマー?キングをテイムしているの?」
「えっと、」
「テイムしたらキングと会話が出来るのか、すごいな」
 モズは腕を組みオーロが去った方向を見て言った。

「その…」
「あっごめん、意地悪してしまったな。俺がもちろん持って帰ろうと思っていたんだがリアの泣きそうな顔がちょっと可愛くて…」
「え?」
「あ、いや…その、、兎に角これで問題は無くなったな。帰ろうか…」
 モズはまたリアの手を繋ぎ引っ張った。帰り道の森の中では無言だった。モズも詳しくキングダムウルフの話を聞いてくる事はしなかった。

 門が近くなる頃、モズが振り返って言った。
「そっか、リアは森の住民の所だったな。家まで送れろうか?」
「ううん、ここまでで大丈夫よ。今日はありがとう。楽しかった。でもキングの事は…」
「もちろん誰にも言わない。まだ冒険者ギルドに来てくれ」
「ありがとう…」
 そこでようやくモズはリアの手を離した。見えなくなるまでリアを見送ってくれた。
 リアは頭がポーッとなっている。

『お楽しみじゃったのうぉ』
「ちょっと、変な言い方しないで」
『ふぉふぉ』
『レッドスパイダーはここにあるぞ』
「ぐっ、ありがとう、オーロ。そこにそこにそっと置いておいて」
 数匹がもぞもぞとしている。さっさと済ませた方がいいようだ。共食いが始まり自分の糸の中に隠してしまうぞとモジャが言う。

 ひぃと思いつつどうせいつかはやるのだ。そう奮起し長いトングでレッドスパイダーを網から取り出し1匹つづ分けた。そしてその1匹をカナヅチで潰した。虫なのに固く何度も叩いた。何もしていないのに叩いて殺されてレッドスパイダーも迷惑である。
 しかし、レッドスパイダーをつぶす必要があった。レッドスパイダーの魔石と共に粉々に砕いてそれをリアの魔力と共に練り上げ4つの頑丈な魔石に投入する過程があるのだ。そして最後は魔法陣で〆る。魔法陣は置いて、まずは魔石を先に作っておけばいつでも仕上げが出来る。リアはアルディのかき集めた雑なメモでそんな計画をしていた。

 4日掛けて練り上げたレッドスパイダーの元を4つの魔石に魔力を投入する事が出来た。体力と共にリアは限界になり2日ほど眠った。
 それから3日ほどしてようやく体力が戻った。
「はあ、一部屋空間を作るのにどんだけの体力が掛かるのか」
 何度もアルディのメモや本を読んだ。やり方は合っているはずである。これをアルディはやってのけたのだろうか。
『おかしいのぉそんなに大変そうではなかったがのぉ』
 やっぱり他のやり方があるらしい何が違うのか分からない。でも4つの魔石は準備が出来たはずである。

 リアは一週間ほど寝込んでいたが、母と姉が子供を連れて交互に来てくれて看病してくれたので食べ物には困らなかった。転移の扉を作ってよかった。
 そうしている内に10日ほど過ぎていた。毎日のように行っていた冒険者ギルドにあれ以来行っていない。モズともそれっきりだ。

 食料の買い足しと素材を売りに久しぶりに外出をすることにした。寝込んでいたので体力もなく足がふらふらだ。モズにはレッドスパイダーのお礼もしなければならない。お昼にお弁当でも作っていこうか。それともなにか買って行こうかと考えながら、鏡の前で何を着ようかと選ぶ。
 あまり洋服をもっていないことに気が付き、街で洋服でも見てみようかなど思っていたが鏡に映っているのはピンクプラチナのキレイなアリアナの姿だ。モズと会っているのは黒のショールで地味なリアなのだ。なぜモズに隠し事をしなければならないのかと思う。早く色んな事が解決して普通の暮らしがしたいと切に思うリアだった。

 リアは持っている中で華やかな服を選び、黒のショールをしてお弁当を持って冒険者ギルドに向かった。
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