128 / 139
第88話
しおりを挟む
「ユリウス、能力が開花したというけど、それは本当なの?」
リアは鳥籠の檻からユリウスに話しかけた。
「もちろんだ。私はそれでこの地位までのし上がったのだ」
「能力でお金が湧いて来るの?」
「…カネがものをいう世界だ。君も王妃になれるよ」
「ユリウス、あなたは気が付いている?」
「え?」
「私は学生の頃からずっとあなたのその美しい姿を近くで見て来たのよ。久しぶりに会ったあなたは姿は…」
リアは頬に手を添えて顔を傾けた。
「な、なんだと…言うんだい?」
「あら、やはり気が付いているのね」
「…リア、そんな事より宴の…」
「すごく老けたわね。ユリウス」
ユリウスは固まった。そしてゆっくりとリアを睨んだ。
「ご自慢の白銀の髪はまるで白髪頭の老婆のよう、くぼんだ目元、頬もコケているわ。肌もカサカサ、それはシミ?シワ?」
「な、なにを…」
「一生けん命メイクで隠しているけど全然ムリよ。隠れてない」
「や、やめろ…」
ユリウスはわなわなと震え、顔を隠すような仕草をしてリアを見た。どこか怯えている表情にリアはユリウスは自分自身でも分かっている事が知れた。
「あの零れ落ちそうなキラキラ輝いていた瞳も半減している。それはその開花した能力に関係しているのではなくて?」
「だ、黙れ!」
ユリウスは膝をつき赤子のように丸くなった。
「ユリウスの開花した能力というのは、鉱山にある石を本物のダイヤモンドや宝石に変えられる能力?鑑定士も本物と見間違うほどの宝石を作り出せるという…」
リアは小さく蹲《うずくま》っているユリウスを見た。
「見間違うなどと…僕が作り出している本物の宝石だ!」
「やはりそうなのね」
「な、なぜ知っている?まぁいい、わかっているなら話が早いね。これでわかっただろう?僕はカネが生まれる能力を身に着けたのさ!」
「でもあなたはその能力で若さを失っている」
「そ、そんなことは…」
「ユリウス自身が気が付いてるのでしょう?あなたのその瞳…能力を使ってから輝きが減少している事を。瞳だけでなく若さも失われている。その事を総合すると…もう少しでその能力は枯渇するのでは?」
「俺の能力が枯渇する…」
「さすがに可哀そうだから忠告してあげる。もう宝石は作らない方がいいわ。十分な資金は調達出来たでしょう?あなたは自分の命と引き換えに宝石を作っているの。そして老化が進んでいるからその瞳の輝きが失われたら死んでしまうわね。本当にもうやめた方がいいわよ」
リアは躊躇もなく言い放った。最大限の親切である。
そして、ボワッと大きな炎がリアを包み込んだ。その炎でユリウスのチンケな鳥籠の檻は破壊された。リアの前には炎の中から美しい黄金の輝きを放つ、大きなキングダムウルフが城の中に現れた。
初めて見たものは腰を抜かすほどの驚きだろう。
「な、な!!」
キングダムウルフは炎を鎮めると黄金の美しい毛並みに戻りリアを背中に乗せた。
「ユリウス、それじゃあ私は帰るわね。生きていたらまたどこかで会うかもね、ではお元気で」
と、リアは笑顔で手を振った。そして炎と共に消えた。
ユリウスはしばらく動けずに茫然としていた。
「これは驚きましたね。あなたの元婚約者はあのキングダムウルフの使い手でしたか。我々ではとても敵いませんでしたよ。帰って頂いてよかった」
そこには広間の陰からひょっこりとロイズとオードスルスの要人が現れた。
「君たち…」
「宴をするお約束でしたな」
「ええ、そうです…」
ユリウスは震える手足を必死に立たせようとした。
「ああ、それどころではない?我々も気が付いていましたよ。あなたのその能力…美しかった容姿は今では影を潜め、お会いする度に別人のようになられていた。最初はご病気なのかとも思いましたがね」
「あなたのおかげで国を守る事が出来た。お礼はしますよ」
ロイズとオードスルスの要人たちは優し気にユリウスに近づいた。
「な、なにを…」
「もうその能力は使わない方がいいでしょう」
ロイズとオードスルスは協力して、意気消沈のユリウスに変わりアンバーを取り込んだ。結局「ブロンエクレトン」は幻の国となったのだった。
リアは鳥籠の檻からユリウスに話しかけた。
「もちろんだ。私はそれでこの地位までのし上がったのだ」
「能力でお金が湧いて来るの?」
「…カネがものをいう世界だ。君も王妃になれるよ」
「ユリウス、あなたは気が付いている?」
「え?」
「私は学生の頃からずっとあなたのその美しい姿を近くで見て来たのよ。久しぶりに会ったあなたは姿は…」
リアは頬に手を添えて顔を傾けた。
「な、なんだと…言うんだい?」
「あら、やはり気が付いているのね」
「…リア、そんな事より宴の…」
「すごく老けたわね。ユリウス」
ユリウスは固まった。そしてゆっくりとリアを睨んだ。
「ご自慢の白銀の髪はまるで白髪頭の老婆のよう、くぼんだ目元、頬もコケているわ。肌もカサカサ、それはシミ?シワ?」
「な、なにを…」
「一生けん命メイクで隠しているけど全然ムリよ。隠れてない」
「や、やめろ…」
ユリウスはわなわなと震え、顔を隠すような仕草をしてリアを見た。どこか怯えている表情にリアはユリウスは自分自身でも分かっている事が知れた。
「あの零れ落ちそうなキラキラ輝いていた瞳も半減している。それはその開花した能力に関係しているのではなくて?」
「だ、黙れ!」
ユリウスは膝をつき赤子のように丸くなった。
「ユリウスの開花した能力というのは、鉱山にある石を本物のダイヤモンドや宝石に変えられる能力?鑑定士も本物と見間違うほどの宝石を作り出せるという…」
リアは小さく蹲《うずくま》っているユリウスを見た。
「見間違うなどと…僕が作り出している本物の宝石だ!」
「やはりそうなのね」
「な、なぜ知っている?まぁいい、わかっているなら話が早いね。これでわかっただろう?僕はカネが生まれる能力を身に着けたのさ!」
「でもあなたはその能力で若さを失っている」
「そ、そんなことは…」
「ユリウス自身が気が付いてるのでしょう?あなたのその瞳…能力を使ってから輝きが減少している事を。瞳だけでなく若さも失われている。その事を総合すると…もう少しでその能力は枯渇するのでは?」
「俺の能力が枯渇する…」
「さすがに可哀そうだから忠告してあげる。もう宝石は作らない方がいいわ。十分な資金は調達出来たでしょう?あなたは自分の命と引き換えに宝石を作っているの。そして老化が進んでいるからその瞳の輝きが失われたら死んでしまうわね。本当にもうやめた方がいいわよ」
リアは躊躇もなく言い放った。最大限の親切である。
そして、ボワッと大きな炎がリアを包み込んだ。その炎でユリウスのチンケな鳥籠の檻は破壊された。リアの前には炎の中から美しい黄金の輝きを放つ、大きなキングダムウルフが城の中に現れた。
初めて見たものは腰を抜かすほどの驚きだろう。
「な、な!!」
キングダムウルフは炎を鎮めると黄金の美しい毛並みに戻りリアを背中に乗せた。
「ユリウス、それじゃあ私は帰るわね。生きていたらまたどこかで会うかもね、ではお元気で」
と、リアは笑顔で手を振った。そして炎と共に消えた。
ユリウスはしばらく動けずに茫然としていた。
「これは驚きましたね。あなたの元婚約者はあのキングダムウルフの使い手でしたか。我々ではとても敵いませんでしたよ。帰って頂いてよかった」
そこには広間の陰からひょっこりとロイズとオードスルスの要人が現れた。
「君たち…」
「宴をするお約束でしたな」
「ええ、そうです…」
ユリウスは震える手足を必死に立たせようとした。
「ああ、それどころではない?我々も気が付いていましたよ。あなたのその能力…美しかった容姿は今では影を潜め、お会いする度に別人のようになられていた。最初はご病気なのかとも思いましたがね」
「あなたのおかげで国を守る事が出来た。お礼はしますよ」
ロイズとオードスルスの要人たちは優し気にユリウスに近づいた。
「な、なにを…」
「もうその能力は使わない方がいいでしょう」
ロイズとオードスルスは協力して、意気消沈のユリウスに変わりアンバーを取り込んだ。結局「ブロンエクレトン」は幻の国となったのだった。
23
あなたにおすすめの小説
モブで可哀相? いえ、幸せです!
みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。
“あんたはモブで可哀相”。
お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?
【完結】遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!
天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。
魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。
でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。
一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。
トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。
互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。
。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.
他サイトにも連載中
2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。
よろしくお願いいたします。m(_ _)m
お言葉ですが今さらです
MIRICO
ファンタジー
アンリエットは祖父であるスファルツ国王に呼び出されると、いきなり用無しになったから出て行けと言われた。
次の王となるはずだった伯父が行方不明となり後継者がいなくなってしまったため、隣国に嫁いだ母親の反対を押し切りアンリエットに後継者となるべく多くを押し付けてきたのに、今更用無しだとは。
しかも、幼い頃に婚約者となったエダンとの婚約破棄も決まっていた。呆然としたアンリエットの後ろで、エダンが女性をエスコートしてやってきた。
アンリエットに継承権がなくなり用無しになれば、エダンに利などない。あれだけ早く結婚したいと言っていたのに、本物の王女が見つかれば、アンリエットとの婚約など簡単に解消してしまうのだ。
失意の中、アンリエットは一人両親のいる国に戻り、アンリエットは新しい生活を過ごすことになる。
そんな中、悪漢に襲われそうになったアンリエットを助ける男がいた。その男がこの国の王子だとは。その上、王子のもとで働くことになり。
お気に入り、ご感想等ありがとうございます。ネタバレ等ありますので、返信控えさせていただく場合があります。
内容が恋愛よりファンタジー多めになったので、ファンタジーに変更しました。
他社サイト様投稿済み。
【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。
学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?
今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。
しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。
が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。
レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。
レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。
※3/6~ プチ改稿中
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる