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想いを重ねて1
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お見合いから三日後、ルースレアのもとに待ちに待ったシアンからの手紙が届いた。はやる気持ちを抑えられず早速手紙を開く。
開けた瞬間にふわりと爽やかな香りが漂って、ルースレアは思わずクンクンと手紙の匂いを嗅いでしまった。記憶から薄れつつあったシアンの香りだ。
想い人を思い浮かべてドキドキしながら、手紙に目を通していく。
内容としては先日の見合いについての礼などの当たり障りのないものだったが、彼が送ってくれたのだと思うと嬉しくて、何度も読み返してしまう。
満足いくまで眺め、ルースレアは手紙が折れ曲がったりしないように丁寧にきれいな箱に入れた。それから手元にあった鈴をチリンチリンと二回鳴らす。すると、すぐにミューラがやって来た。
「いかがなさいましたか?」
『シアン様にお返事を返したくて……。それで、買い物に行きたいの?』
唇の動きから言葉を読み取ったミューラは少し驚いた様子を見せた。屋敷を滅多に出ないルースレアが自らの意思で買い物に行きたいと言ったことに驚いたようだ。
手元に返事を書く道具がないわけではない。どれも使用人たちが用意してくれた素敵なものだ。今まで使うことなく眠っていたそれらを使ってあげたい気持ちもあるが、シアンには自分で選んだもので手紙を送りたい。
「……分かりました。すぐに準備いたしますね」
ルースレアの気持ちを汲み取ったのか、ミューラは柔らかく笑んでそう言ってくれた。今まで誰かに恋い焦がれたことがないし、侍女に相談したこともない。少し気恥ずかしい気持ちもあるが、幼い頃から一緒の彼女になら知られてもいいと思った。
ミューラはすぐに準備をしてくれ、ルースレアは馬車へと乗り込み、商店へと向かう。古くから付き合いがある商店につくと、中から白髪の男が飛び出してきた。
「お嬢様、ようこそお越しくださいました」
深く頭を下げる男には何度か屋敷で会ったことがある。流石に古い付き合いなだけあって、彼はルースレアが獣族返りだといって態度を変えたことは一度もない。
「ささ、中へどうぞ」
頭を上げた店主にそう言われ、頷いて中へと足を踏み入れる。先にルースレアが向かうと連絡があったのだろう。店の中に客の姿はなく、通された奥の部屋には求めていた手紙に必要な羊皮紙やペンなどの道具が沢山用意されていた。
質のいい椅子に腰を下ろすと、向かい側に店主が座る。
「お呼びいただいたらすぐにお伺いいたしましたのに」
店主の言葉通り、屋敷に呼びつけることもできたのだが、なんとなく自分で足を運んで選びたかったのだ。ルースレアは曖昧に笑い、さっそくテーブルの上に視線を移す。
「お手紙についてのものをご所望とのことで、色々ご用意させていただきました。紙ですと当店お抱えの絵師が描いた柄付きの羊皮紙がおすすめでございます。香り付きのものなども人気がございます。それからインクですと────……」
店主の説明を時々頷きながら真剣に聞く。一通り聞き終えたルースレアはシアンを思い浮かべながら悩む。一つ一つ手に取りながら、送るときのことを考えつつゆっくりと決めていった。
結局買ったのはいくつかの紙と、手紙に添えるための押し花だった。インクやペンなどはいつも使っているものが書きやすくていいと思ったので、今回は購入を見送った。
丁寧に梱包してくれた商品をミューラが受け取る。
「ありがとうございました」
笑顔の店主に送り出され、ルースレアは屋敷へと帰る。自室へ戻りさっそく買ったばかりの紙をテーブルに広げた。
控えめに描かれた絵柄を見つつ、慎重に言葉を綴っていく。書き終える頃にはシアンが恋しくなっていた。まだ正式に婚約者になったわけではないし、忙しい身の彼に安易に会いたいなどと言えない。
ルースレアはそんなことを考えながら、最後に押し花を手紙に添え、家紋の描かれた封蝋を施す。
添えた押し花はきっと優しい気持ちをシアンに届けてくれるだろう。
鈴を鳴らして再びミューラを呼び、書き終えたばかりの手紙を渡した。
「たしかにお預かりいたしました。すぐにお出ししておきますね。……早くお返事がいただけるといいですね」
ミューラの言葉に頷く。部屋を出ていった侍女を見送って、ルースレアは窓まで移動する。窓際の丸いテーブルの上には本がいくつか積み重なっている。
いつもならばとっくに読み終わっているものだ。それらから視線を外に移す。眩しいほど晴天だった青空がゆっくりと茜色に染まっていく。
本を読んで過ごすだけの日常は、シアンとの手紙のよって少しずつ変わっていくのだろう。
会いたい、と動いたルースレアの唇は誰に読み取られることなく太陽と共に消えていったのだった。
開けた瞬間にふわりと爽やかな香りが漂って、ルースレアは思わずクンクンと手紙の匂いを嗅いでしまった。記憶から薄れつつあったシアンの香りだ。
想い人を思い浮かべてドキドキしながら、手紙に目を通していく。
内容としては先日の見合いについての礼などの当たり障りのないものだったが、彼が送ってくれたのだと思うと嬉しくて、何度も読み返してしまう。
満足いくまで眺め、ルースレアは手紙が折れ曲がったりしないように丁寧にきれいな箱に入れた。それから手元にあった鈴をチリンチリンと二回鳴らす。すると、すぐにミューラがやって来た。
「いかがなさいましたか?」
『シアン様にお返事を返したくて……。それで、買い物に行きたいの?』
唇の動きから言葉を読み取ったミューラは少し驚いた様子を見せた。屋敷を滅多に出ないルースレアが自らの意思で買い物に行きたいと言ったことに驚いたようだ。
手元に返事を書く道具がないわけではない。どれも使用人たちが用意してくれた素敵なものだ。今まで使うことなく眠っていたそれらを使ってあげたい気持ちもあるが、シアンには自分で選んだもので手紙を送りたい。
「……分かりました。すぐに準備いたしますね」
ルースレアの気持ちを汲み取ったのか、ミューラは柔らかく笑んでそう言ってくれた。今まで誰かに恋い焦がれたことがないし、侍女に相談したこともない。少し気恥ずかしい気持ちもあるが、幼い頃から一緒の彼女になら知られてもいいと思った。
ミューラはすぐに準備をしてくれ、ルースレアは馬車へと乗り込み、商店へと向かう。古くから付き合いがある商店につくと、中から白髪の男が飛び出してきた。
「お嬢様、ようこそお越しくださいました」
深く頭を下げる男には何度か屋敷で会ったことがある。流石に古い付き合いなだけあって、彼はルースレアが獣族返りだといって態度を変えたことは一度もない。
「ささ、中へどうぞ」
頭を上げた店主にそう言われ、頷いて中へと足を踏み入れる。先にルースレアが向かうと連絡があったのだろう。店の中に客の姿はなく、通された奥の部屋には求めていた手紙に必要な羊皮紙やペンなどの道具が沢山用意されていた。
質のいい椅子に腰を下ろすと、向かい側に店主が座る。
「お呼びいただいたらすぐにお伺いいたしましたのに」
店主の言葉通り、屋敷に呼びつけることもできたのだが、なんとなく自分で足を運んで選びたかったのだ。ルースレアは曖昧に笑い、さっそくテーブルの上に視線を移す。
「お手紙についてのものをご所望とのことで、色々ご用意させていただきました。紙ですと当店お抱えの絵師が描いた柄付きの羊皮紙がおすすめでございます。香り付きのものなども人気がございます。それからインクですと────……」
店主の説明を時々頷きながら真剣に聞く。一通り聞き終えたルースレアはシアンを思い浮かべながら悩む。一つ一つ手に取りながら、送るときのことを考えつつゆっくりと決めていった。
結局買ったのはいくつかの紙と、手紙に添えるための押し花だった。インクやペンなどはいつも使っているものが書きやすくていいと思ったので、今回は購入を見送った。
丁寧に梱包してくれた商品をミューラが受け取る。
「ありがとうございました」
笑顔の店主に送り出され、ルースレアは屋敷へと帰る。自室へ戻りさっそく買ったばかりの紙をテーブルに広げた。
控えめに描かれた絵柄を見つつ、慎重に言葉を綴っていく。書き終える頃にはシアンが恋しくなっていた。まだ正式に婚約者になったわけではないし、忙しい身の彼に安易に会いたいなどと言えない。
ルースレアはそんなことを考えながら、最後に押し花を手紙に添え、家紋の描かれた封蝋を施す。
添えた押し花はきっと優しい気持ちをシアンに届けてくれるだろう。
鈴を鳴らして再びミューラを呼び、書き終えたばかりの手紙を渡した。
「たしかにお預かりいたしました。すぐにお出ししておきますね。……早くお返事がいただけるといいですね」
ミューラの言葉に頷く。部屋を出ていった侍女を見送って、ルースレアは窓まで移動する。窓際の丸いテーブルの上には本がいくつか積み重なっている。
いつもならばとっくに読み終わっているものだ。それらから視線を外に移す。眩しいほど晴天だった青空がゆっくりと茜色に染まっていく。
本を読んで過ごすだけの日常は、シアンとの手紙のよって少しずつ変わっていくのだろう。
会いたい、と動いたルースレアの唇は誰に読み取られることなく太陽と共に消えていったのだった。
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