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想いを重ねて4
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「ルースレア様、始めてもよろしいですか?」
ミューラに話しかけられ、慌てて口紅をテーブルへと戻した。前へと回り込んだ侍女がそっと顎に触れ、顔を少し上に向けられる。いつものように目を閉じると、軽くマッサージされた後、化粧が施された。
「終わりましたよ」
目の前の鏡を見ると普段より丁寧に化粧を施された自分の顔が映っていた。
ミューラが最後に軽く髪を整えてくれて準備が完了した。そのタイミングでメイドが部屋を訪れ、シアンが屋敷に到着したと告げる。
一気にルースレアの落ち着きがなくなり、尻尾や耳が忙しく動き出す。
「ルースレア様?」
扉の前で待つ侍女に名を呼ばれて、びくりと肩を跳ねさせる。立ち上がる前にちらりと鏡に視線を移す。
ミューラの準備は完璧だ。少しだけ落ち着いて、ルースレアは自室を後にする。廊下を歩いていくうちに緊張よりも会える嬉しさが勝ってきて、足取りが軽くなっていく。
後半はもう早足になっていて、玄関に少し息を弾ませながら顔を出した。
「……ルースレア嬢、こんにちは」
すぐにルースレアに気づいたシアンがこちらを向き、眠そうな目が細められる。
頬に熱が集まるのを感じつつドレスの端を掴んでお辞儀をした。
近づいていくとふわり、といつも手紙から感じていた爽やかな香りが鼻をかすめる。
「では、ルースレアをお願いする」
今までシアンの存在に釘付けで、初めて父が近くにいることに気づいた。それがなんだか恥ずかしくて少し俯きながら、差し出されたシアンの手を取る。
「行こう」
優しく手を引かれ、ルースレアはアルフレットに軽くお辞儀をしてついて行く。もちろんミューラも一緒だ。いつも頼りになる侍女に視線を送ると、優しく微笑まれていて余計に恥ずかしくなった。
シアンが乗ってきたという馬車に乗り込むと、すぐに馬車はどこかに向かって走り始める。
馬車の中にはシアンとルースレア、そしてミューラとシアンの執事の四人が乗っている。侍女や執事が話を振るわけもなく、静かに時が過ぎていく。
その間、ルースレアは何度もシアンを盗み見する。あまりにも見すぎたのか、視線に熱でもこもっていたのか……ふいに彼がこちらに視線を向けた。
そして、ゆっくりと首を傾げる。
「どうかしたの?」
ルースレアは慌ててなんでもないと首を振った。シアンが自分の方を向いてくれたことに心の中だけで喜ぶが、彼女の感情に忠実な尻尾はそわそわと揺れている。
そんな彼女をシアンを含めた全員が微笑ましく見ていたが、ドキドキと高鳴る心臓に気を取られているルースレアは気づかない。
「……そうだ」
ふとシアンがなにかを思い出したように呟いたのでそちらに視線を向けると、彼は執事から小さな袋を受け取っている。なんだろう、とルースレアが不思議に思っていると、手袋を外したシアンが袋を開け中身を一つ取り出した。
艷やかな赤い飴玉がシアンの指先に摘まれている。そしてその手はルースレアに伸び、瞬きを繰り返している彼女の唇にトン、と飴玉が触れた。
「あーん」
そんな言葉とともに彼が口を開ける。それにつられるように口を開くと、ころりと飴玉が転がり込んできた。
「美味しい?」
ルースレアは本来あまり甘いものが好きではないが、シアンが食べさせてくれたというだけで美味しく感じ、何度も頷いた。口の中でころころと転がし味わいながら、ルースレアは頬に熱が集まるのを感じる。
彼がなにかをするたびに、すぐに頬も胸も熱くなってしまう。それが恥ずかしくも感じるがなによりも心地よくて、ルースレアはうっとりと目を細めた。
「よかった。気に入ってもらえて。……はい」
飴の入った袋が差し出され、ルースレアは受け取る。くれるということなのだろうかと考えていると、シアンが体を傾け口を開けた。
「僕にもくれる?」
色の違う目を細め、シアンが言う。
ルースレアは震える指先で飴玉を掴み、彼の口に運ぶ。緊張のせいで震える指先から力が抜けそうになり、飴が落ちる、と思った瞬間、指先がパクリと彼の口に消えていった。
飴ごと指先が口に含まれ固まる。飴玉はシアンの口に移動し、彼は口を放す。尖った歯が甘く指を掠め、ルースレアはビクリと体を震わせた。
「甘いね」
何事もないように話すシアンにルースレアは固まったまま動けない。そんな状態のまま目が合うと彼は少し目を細め、どことなく意地悪そうな笑みを浮かべた。いたずらが成功したかのそうな表情に、ようやくからかわれたことに気づく。
そんないたずらさえ嬉しく感じてしまい、ルースレアは思わず視線を逸らし、熱くなった頬を隠すように俯いた。
甘い雰囲気を醸し出す主人たちに優秀な侍女と執事が身じろぎ一つせずいることに気づき、ルースレアが更に恥ずかしさを感じるのはもう少し後のことだった。
ミューラに話しかけられ、慌てて口紅をテーブルへと戻した。前へと回り込んだ侍女がそっと顎に触れ、顔を少し上に向けられる。いつものように目を閉じると、軽くマッサージされた後、化粧が施された。
「終わりましたよ」
目の前の鏡を見ると普段より丁寧に化粧を施された自分の顔が映っていた。
ミューラが最後に軽く髪を整えてくれて準備が完了した。そのタイミングでメイドが部屋を訪れ、シアンが屋敷に到着したと告げる。
一気にルースレアの落ち着きがなくなり、尻尾や耳が忙しく動き出す。
「ルースレア様?」
扉の前で待つ侍女に名を呼ばれて、びくりと肩を跳ねさせる。立ち上がる前にちらりと鏡に視線を移す。
ミューラの準備は完璧だ。少しだけ落ち着いて、ルースレアは自室を後にする。廊下を歩いていくうちに緊張よりも会える嬉しさが勝ってきて、足取りが軽くなっていく。
後半はもう早足になっていて、玄関に少し息を弾ませながら顔を出した。
「……ルースレア嬢、こんにちは」
すぐにルースレアに気づいたシアンがこちらを向き、眠そうな目が細められる。
頬に熱が集まるのを感じつつドレスの端を掴んでお辞儀をした。
近づいていくとふわり、といつも手紙から感じていた爽やかな香りが鼻をかすめる。
「では、ルースレアをお願いする」
今までシアンの存在に釘付けで、初めて父が近くにいることに気づいた。それがなんだか恥ずかしくて少し俯きながら、差し出されたシアンの手を取る。
「行こう」
優しく手を引かれ、ルースレアはアルフレットに軽くお辞儀をしてついて行く。もちろんミューラも一緒だ。いつも頼りになる侍女に視線を送ると、優しく微笑まれていて余計に恥ずかしくなった。
シアンが乗ってきたという馬車に乗り込むと、すぐに馬車はどこかに向かって走り始める。
馬車の中にはシアンとルースレア、そしてミューラとシアンの執事の四人が乗っている。侍女や執事が話を振るわけもなく、静かに時が過ぎていく。
その間、ルースレアは何度もシアンを盗み見する。あまりにも見すぎたのか、視線に熱でもこもっていたのか……ふいに彼がこちらに視線を向けた。
そして、ゆっくりと首を傾げる。
「どうかしたの?」
ルースレアは慌ててなんでもないと首を振った。シアンが自分の方を向いてくれたことに心の中だけで喜ぶが、彼女の感情に忠実な尻尾はそわそわと揺れている。
そんな彼女をシアンを含めた全員が微笑ましく見ていたが、ドキドキと高鳴る心臓に気を取られているルースレアは気づかない。
「……そうだ」
ふとシアンがなにかを思い出したように呟いたのでそちらに視線を向けると、彼は執事から小さな袋を受け取っている。なんだろう、とルースレアが不思議に思っていると、手袋を外したシアンが袋を開け中身を一つ取り出した。
艷やかな赤い飴玉がシアンの指先に摘まれている。そしてその手はルースレアに伸び、瞬きを繰り返している彼女の唇にトン、と飴玉が触れた。
「あーん」
そんな言葉とともに彼が口を開ける。それにつられるように口を開くと、ころりと飴玉が転がり込んできた。
「美味しい?」
ルースレアは本来あまり甘いものが好きではないが、シアンが食べさせてくれたというだけで美味しく感じ、何度も頷いた。口の中でころころと転がし味わいながら、ルースレアは頬に熱が集まるのを感じる。
彼がなにかをするたびに、すぐに頬も胸も熱くなってしまう。それが恥ずかしくも感じるがなによりも心地よくて、ルースレアはうっとりと目を細めた。
「よかった。気に入ってもらえて。……はい」
飴の入った袋が差し出され、ルースレアは受け取る。くれるということなのだろうかと考えていると、シアンが体を傾け口を開けた。
「僕にもくれる?」
色の違う目を細め、シアンが言う。
ルースレアは震える指先で飴玉を掴み、彼の口に運ぶ。緊張のせいで震える指先から力が抜けそうになり、飴が落ちる、と思った瞬間、指先がパクリと彼の口に消えていった。
飴ごと指先が口に含まれ固まる。飴玉はシアンの口に移動し、彼は口を放す。尖った歯が甘く指を掠め、ルースレアはビクリと体を震わせた。
「甘いね」
何事もないように話すシアンにルースレアは固まったまま動けない。そんな状態のまま目が合うと彼は少し目を細め、どことなく意地悪そうな笑みを浮かべた。いたずらが成功したかのそうな表情に、ようやくからかわれたことに気づく。
そんないたずらさえ嬉しく感じてしまい、ルースレアは思わず視線を逸らし、熱くなった頬を隠すように俯いた。
甘い雰囲気を醸し出す主人たちに優秀な侍女と執事が身じろぎ一つせずいることに気づき、ルースレアが更に恥ずかしさを感じるのはもう少し後のことだった。
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