獣人たちは恋を知り愛を育む

月椿

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想いを重ねて8

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 じとっとした視線がまとわりつく。ルースレアは小さく息をついて、切り分けた肉を口に運んだ。
 今は家族全員で食事を取っていた。シアンとのデートから四日ほど経ったが、その間ずっとこの視線を浴び続けている。視線の主はもちろんクロウだ。

「クロウ、今日、ネイアスから正式に婚約を求める書類が届いたのだし、王都での婚約式の日程も話しあっている。そのような視線をルースレアに向けるのはやめなさい」

 居心地悪そうにしている娘を見かねてか、父がフォークを置きながらそうクロウに声をかけた。

「……私は認めていません。……どうしてか、最近仕事が多くて抗議する暇もないのですが」

 それは間違いなくアルフレットの仕業だ。兄が大きく騒いだり、猫族の領地に乗り込んだりしないように父が大量の仕事を与えている。クロウも真面目なので流石に仕事を放り出して行くようなことはしない。それを分かっていて、父は兄をそうやって抑え込んでいるのだ。

「本人たちが決めたのだから、そう兄が反対するでない」
「…………分かっていますよ」

 クロウが盛大にため息をついた。それからぶすっとした表情で、すねたようにステーキを口に運んでいる。

「ルースレアの方もお相手が見つかったことですし、そろそろ貴方も嫁を見つけなさい」
「それは……」

 妹が心配でずっとクロウは結婚を引き伸ばしていた。婚約者がいたこともあったが、妹への溺愛が凄すぎて去っていってしまったのだ。だから両親も強くは言わず、先にルースレアの婚約者を探していた。そのルースレアに婚約者が出来れば、当然次は兄となる。

「……」

 妹の婚約に納得していないこの様子では、まだまだクロウの婚約は先になるかもしれない。両親もそう思ったのか、二人とも深いため息をついていた。
 そんな感じで晩餐は終わり、ルースレアは部屋へと戻る。兄のことを考えて小さく息を吐き出すと、お風呂の準備をしていたミューラが戻ってきてクスリと笑った。
 そちらに視線を向けると、侍女が優しい笑みを浮かべてこちらを見ている。

「クロウ様は本当にルースレア様が中心ですね」

 ミューラの言葉に苦笑いを浮かべる。それからゆっくりと唇を動かした。

『嬉しいけど、少し困るわ』
「ふふっ。大丈夫ですよ。クロウ様も大人ですもの。ルースレア様が望まれた相手なら、認めていただけますよ」
『そう、ね』

 晩餐のときに父に諌められたとき、クロウは「分かっている」と言っていた。きっと兄はシアンのことを認めてくれようとしている。もう少ししたらちゃんと笑顔で祝ってくれるに違いない。

「さぁ、ルースレア様。湯浴みをして就寝いたしましょう。夜ふかしは肌に悪いですわ」

 ミューラに促され、ルースレアは頷いたのだった。
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