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結婚に向けて3
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「こちらがベールのデザイン画になります」
何枚か束になったデザイン画をカルトから受け取り、半分を母に渡し残った数枚に目を通していく。
ちなみに獣人は耳があるので、梟族などの耳がない種族以外は基本的にフェイスアップベールは使用しない。纏めた髪にティアラや花飾り等で固定するものが主流だ。
「デザインは同じで長さが変わるものも同じ紙に書いてあるので、そちらもご参考になさってくださいね」
レストの言葉にそちらにも意識を向ける。たしかに同じデザインでも長さによってはイメージが変わってくる。
途中でアリアとデザイン画を交換しながら候補を絞っていく。そして最終的に選んだのは花冠のベールだった。
「これは僕のデザインでも人気なんです! ルースレア様にもきっとよくお似合いになると思います!」
屈託のない笑顔につられて、ルースレアの口元も緩む。
「お花はどうします? 僕のおすすめは生花の方がより自然で美しいと思います!」
「そうねぇ。その方がいいわね。ルースレアもお花は大好きですから」
「分かりました。それからベールですが全体は無地で、裾に金糸の模様を入れてはいかがでしょうか。先ほどのドレスとも合うと思います」
レストの提案にカルトがデザイン画に書き加える。ルースレアはそれをもとに想像を膨らませた。
先ほど決まったドレスにベール。それを着るのが楽しみになってきて、ルースレアは思わず頬を緩ませた。
「どうやら気に入ったみたいね。それでお願いするわ」
「かしこまりました。それでは、今日決めたデザインを元に進めさせていただきます」
「どれくらいかかりそうかしら?」
「……ルナシーク殿下のおかげでお店も拡張いたしまして、スタッフも揃っております。デザインもシンプルなので三ヶ月ほどで完成させられます」
気のせいだろうか、ルナシーク殿下、のところでレストの表情が引きつった気がする。彼女の尻尾もいささか乱暴に動いているので、二人の間にはなにかあるのかもしれない。ルースレアの好奇心が刺激されたが、追求するほど大胆な性格ではないのでそのまま話は流れていった。
見送りに屋敷の玄関ホールまで来るとレストが振り返る。
「それでは、次は仮縫いが終わりましたらお伺いさせていただきます」
「ええ。王都と領地への行き来は大変だと思うけど、お願いしますね」
「はい、お任せください。ほら、カルトもご挨拶して」
「はーい。アリア様、ルースレア様。必ずいいものを作ります。楽しみにしていてください!」
ルースレアは微笑みを浮かべ、ゆっくりと頷いた。そして、レストとカルトの姉弟は質素な馬車に乗って、王都へと帰って行った。
◇
ドレスのデザインが決まってからしばらくして、ルースレアは父のアルフレットと共にシアンの屋敷へと馬車で向かっていた。今日は結婚式に向けての話し合いだ。
しっかりと閉められたカーテンを少し捲って外を見ると、物珍しそうに馬車を見ていた猫族の親子と目があった。
馬車には犬の家紋が刻まれているため、珍しいのだろう。そっとカーテンを戻して、正面に座るアルフレットに視線を移した。ちょうどこちらを見た父が口を開く。
「……こうして二人で出かけるのは見合いのとき以来だな」
こくん、と頷く。父も忙しい身だ。用もないのに一緒に出かけることはほとんどないし、ルースレアは社交界にも顔を出さなかったので機会は他の令嬢に比べたら少ないことだろう。
どこか嬉しそうにアルフレットは表情を緩ませた。
「もうすぐ嫁にいってしまうと思うと寂しいが……。お前に愛する者ができたのは嬉しく思う。ルースレア、アリアの訓練は辛いか?」
婚約式を終え、始まった母のレッスン。より洗練された淑女になるためのもの。毎日気を抜くことは許されず、常にアリアに厳しく監視されるのは、正直辛い。
厳しく叱る母の姿を思い出して、ルースレアは父の問いに正直に頷いた。
「そうか……。本当は離れるときまでお前を甘やかしたいと思っているんだよ。でも、時に厳しさも必要になる。ルースレア……美しくなったね」
目尻を和らげた父にルースレアは目頭が熱くなった。美しくなった、その言葉は淑女として成長したと認めてくれたものだからだ。
「さて、もうすぐネイアス屋敷に着くな」
ごほん、と少し恥ずかしそうに話を変えた父に合わせて再び窓の外を見る。立派な屋敷が見え、馬車が揺れを残して止まった。ノックの次に馬車の扉が開き、先にアルフレットが降りる。
ルースレアも父の手を借りて馬車を降りると、大きな門の前に立っていた執事がお辞儀をした。
「ようこそお越しくださいました。主人の元までご案内いたします」
「ああ、頼む」
執事が頭を上げ、門前の騎士に合図をする。すぐに扉が開き、執事がすっと前を歩き始めた。
ルースレアはアルフレットの腕に手を添えて、ゆっくりと屋敷へと向かったのだった。
何枚か束になったデザイン画をカルトから受け取り、半分を母に渡し残った数枚に目を通していく。
ちなみに獣人は耳があるので、梟族などの耳がない種族以外は基本的にフェイスアップベールは使用しない。纏めた髪にティアラや花飾り等で固定するものが主流だ。
「デザインは同じで長さが変わるものも同じ紙に書いてあるので、そちらもご参考になさってくださいね」
レストの言葉にそちらにも意識を向ける。たしかに同じデザインでも長さによってはイメージが変わってくる。
途中でアリアとデザイン画を交換しながら候補を絞っていく。そして最終的に選んだのは花冠のベールだった。
「これは僕のデザインでも人気なんです! ルースレア様にもきっとよくお似合いになると思います!」
屈託のない笑顔につられて、ルースレアの口元も緩む。
「お花はどうします? 僕のおすすめは生花の方がより自然で美しいと思います!」
「そうねぇ。その方がいいわね。ルースレアもお花は大好きですから」
「分かりました。それからベールですが全体は無地で、裾に金糸の模様を入れてはいかがでしょうか。先ほどのドレスとも合うと思います」
レストの提案にカルトがデザイン画に書き加える。ルースレアはそれをもとに想像を膨らませた。
先ほど決まったドレスにベール。それを着るのが楽しみになってきて、ルースレアは思わず頬を緩ませた。
「どうやら気に入ったみたいね。それでお願いするわ」
「かしこまりました。それでは、今日決めたデザインを元に進めさせていただきます」
「どれくらいかかりそうかしら?」
「……ルナシーク殿下のおかげでお店も拡張いたしまして、スタッフも揃っております。デザインもシンプルなので三ヶ月ほどで完成させられます」
気のせいだろうか、ルナシーク殿下、のところでレストの表情が引きつった気がする。彼女の尻尾もいささか乱暴に動いているので、二人の間にはなにかあるのかもしれない。ルースレアの好奇心が刺激されたが、追求するほど大胆な性格ではないのでそのまま話は流れていった。
見送りに屋敷の玄関ホールまで来るとレストが振り返る。
「それでは、次は仮縫いが終わりましたらお伺いさせていただきます」
「ええ。王都と領地への行き来は大変だと思うけど、お願いしますね」
「はい、お任せください。ほら、カルトもご挨拶して」
「はーい。アリア様、ルースレア様。必ずいいものを作ります。楽しみにしていてください!」
ルースレアは微笑みを浮かべ、ゆっくりと頷いた。そして、レストとカルトの姉弟は質素な馬車に乗って、王都へと帰って行った。
◇
ドレスのデザインが決まってからしばらくして、ルースレアは父のアルフレットと共にシアンの屋敷へと馬車で向かっていた。今日は結婚式に向けての話し合いだ。
しっかりと閉められたカーテンを少し捲って外を見ると、物珍しそうに馬車を見ていた猫族の親子と目があった。
馬車には犬の家紋が刻まれているため、珍しいのだろう。そっとカーテンを戻して、正面に座るアルフレットに視線を移した。ちょうどこちらを見た父が口を開く。
「……こうして二人で出かけるのは見合いのとき以来だな」
こくん、と頷く。父も忙しい身だ。用もないのに一緒に出かけることはほとんどないし、ルースレアは社交界にも顔を出さなかったので機会は他の令嬢に比べたら少ないことだろう。
どこか嬉しそうにアルフレットは表情を緩ませた。
「もうすぐ嫁にいってしまうと思うと寂しいが……。お前に愛する者ができたのは嬉しく思う。ルースレア、アリアの訓練は辛いか?」
婚約式を終え、始まった母のレッスン。より洗練された淑女になるためのもの。毎日気を抜くことは許されず、常にアリアに厳しく監視されるのは、正直辛い。
厳しく叱る母の姿を思い出して、ルースレアは父の問いに正直に頷いた。
「そうか……。本当は離れるときまでお前を甘やかしたいと思っているんだよ。でも、時に厳しさも必要になる。ルースレア……美しくなったね」
目尻を和らげた父にルースレアは目頭が熱くなった。美しくなった、その言葉は淑女として成長したと認めてくれたものだからだ。
「さて、もうすぐネイアス屋敷に着くな」
ごほん、と少し恥ずかしそうに話を変えた父に合わせて再び窓の外を見る。立派な屋敷が見え、馬車が揺れを残して止まった。ノックの次に馬車の扉が開き、先にアルフレットが降りる。
ルースレアも父の手を借りて馬車を降りると、大きな門の前に立っていた執事がお辞儀をした。
「ようこそお越しくださいました。主人の元までご案内いたします」
「ああ、頼む」
執事が頭を上げ、門前の騎士に合図をする。すぐに扉が開き、執事がすっと前を歩き始めた。
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