AFTER DEAD「最後の帰路」

ハンドアイランド

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合わさるピースと、欠けるピース

怒り

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「“カニバリズム”って知ってる?」

軽い口調で言った。

「人間が人間の肉体を食べることさ」

「僕も詳しい仕組みはわからないんだけどね。
  科学の力で、それをこの世界全体に起こしたんだ」


「君たち“多数派”同士で数を減らしてくれれば、それが一番楽だし――見ものだからね!」

ケラケラと笑う。


「仮にそれが事実だとして……なんでこんな酷いことをするんだ?」

林が震える声で話す。

「私があなたに何をしたんですか?!」

不気味な男の表情が、ゆっくりと歪んだ。
露骨な怒りだった。

「何をしたかだと?!」

拳を握りしめた。


だが、急に冷静になる男。

「僕は“先天性後弯症”でね」

「生まれつき、背中が極端な猫背なんだ」

あの異様な体躯。
あの不自然な姿勢。

生まれつきのものだったのか。

「君たちも思っただろう?」

男は、自嘲のように笑う。

「不気味で、気持ち悪いって」

「もちろん、小さい頃はいじめにあったよ」

不気味な男が続ける。

「怪物とか、化け物とか? 色々言われたねー」

笑っている。
だが、目は笑っていなかった。


「君たちって、誰かをいじめたことはあるかい?」

真っ直ぐ、こちらを見てくる。
その視線から逃げられない。

“全くない”とは、言えなかった。

軽い悪ふざけ。
物を隠したこと。
陰で笑ったこと。
誰かを無視したこと。

胸の奥に、ひっかかる記憶がある。

「例えば、物を隠したり。暴力を振るったり。暴言を吐いたり。

「先生みたいなことを言うけど、相手のことは考えたことがあるかな?」

怒鳴りもせず、笑いもせず。
ただ、問いかける。

林が視線を落とす。


「僕はね、別に平気なタイプさ」

「こうやって復讐するくらいだ。むしろ、活力になった」


「だけど、、、」

沈黙。

「僕の母親は、そうじゃなかった」

「僕へのいじめが原因で、自殺した」

谷風の表情が曇った。

「自分の子供が、生まれつきの病で不幸せな人生を送っている」

男は空を見上げる。

「耐えれなかったんだろうね」

もう笑みはない。
ただ、深い闇があった。


「君さ、自分がいじめられているのが原因で親が自殺した。
  その時の僕の心境、想像できるかい?」

男は、ゆっくりと林を指差した。

林は、目を合わせることができなかった。
視線を落とし、唇を噛む。

「君たちって想像力がないよね」

「たかが暴言。たかが暴力。たかが物を隠しただけ」

徐々に口調が荒くなる。

「最悪、叱られるだけ。そう思ってるんでしょう?」

空気がひりつく。

「まさか自殺なんてしない。
  まさか相手の親が、心を苦しめて自殺なんてするわけない」

男の目が、ぎらりと光る。

「こっち側に立ったことのない君たちは、想像できないよね」

その言葉は、林だけではなく、そこにいる全員に向けられていた。

「相手が死ぬわけない!
  復讐なんてされるわけない!
  だってただの遊び、暇つぶしだから!」

怒鳴り声が、街に響く。


「なんでこんな酷いことをするのかだって?、、、」

男は、部下の手から銃をひったくった。

銃口が、ゆっくりと林に向く。


「最高な気分だからさ!!」


――パァンッ!!


一瞬、誰も動けなかった。

「えっ、、、」

林の口から、空気の抜けた声が漏れる。

胸を押さえる。

指の隙間から、血が溢れ出す。

膝が、ゆっくりと折れた。

地面に崩れ落ちる。

俺は、ただその光景を見ていた。

林の目が、何かを訴えるようにこちらを見た。

そして林の体が、横に倒れた。
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