異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた

k-ing /きんぐ★商業5作品

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第一章 少年との出会い

6.聖男、ルシアンの優しさに触れる

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「ルシアンは何が食べたい?」

 僕が食べるジェスチャーをすると、ルシアンは嬉しそうに僕の手を引っ張った。
 少し力が強くなったのか、前よりも引かれる感覚がはっきりしている。
 そんなことを思っていると、ルシアンが突然立ち止まった。

「どうしたの?」
「ホットケーキ! いちばん!」

 指さした先にはホットケーキミックス。
 相変わらず、ルシアンの〝いちばん〟は変わらないらしい。
 まさか再会して最初に食べたいものがホットケーキとは思わなかった。

「本当にホットケーキでいいの?」
「うん! これがいいの!」

 迷いのない返事に、思わず笑ってしまう。
 きっとルシアンにとって、僕が初めて作った料理が特別な思い出になっているのだろう。

「他には何がいい?」
「オムライス! ハンバーグ!」
「よし、全部作ろうか!」

 僕は必要な材料を買うと、気づいた時には両手に荷物を持って歩くことになってしまった。

「いくら何でも買いすぎだよね……」
「みにゃと、ぼくがもつよ!」

 ルシアンは率先して荷物を持とうとしていた。
 小さな手で袋を掴もうとする姿に胸が温かくなる。
 でも、重さにふらついているのを見て、僕は苦笑した。

「ここは僕に任せて」

 僕はルシアンから荷物を受け取ると、家に向かって歩き出す。

「そういえば、この間買った本が……ルシアン!?」

 しばらく歩くと、隣にいたはずのルシアンの姿がいなくなっていた。
 慌てて周囲を見回すと、少し後ろで立ち止まっていた。
 駆け寄ってしゃがみ込み、顔を覗き込むと、彼の目には涙が浮かんでいた。

「どこか痛いところがあるの? 転んだの?」

 すぐに転んでいないか確認するが、新しいケガをしている様子はない
 ホッとしながらも、胸の奥がざわついた。
 ルシアンがなぜ泣いているのか僕は気になった。

「ルシアン、どうしたの?」
「ぼく、やくたたずだ……」
「へっ……?」

 思いもよらない言葉に息を呑む。
 ルシアンの口から〝役立たず〟という言葉が出てくるとは思いもしなかった。
 小さな体の奥に、どれほどの痛みが詰まっているのだろう。
 その言葉の重さに、僕は一瞬返す言葉を失った。
 きっと体にある傷が関係しているのは僕でもわかる。
 だけど今は、ただ伝えたかった。

「そんなことないよ。ルシアンは僕にとっての大切な人だからね」

 そう言って、僕はルシアンをそっと抱きしめた。
 言葉が全部伝わらなくてもいい。
 この温もりと強さで、少しでも安心してくれたらそれでいい。
 ルシアンの小さな手が、僕の背中にまわり、服をぎゅっと握りしめる。

「ねー、みにゃと」
「なーに?」

 顔を上げたルシアンの瞳は、もう涙ではなく光を宿していた。
 その緑の瞳がまっすぐ僕を見つめてくる。

「ぼく、しょうらいはみにゃとをまもるの!」

 満面の笑みに、胸の奥がじんわり熱くなる。
 まるで息子に言われたようで、思わずまた抱きしめてしまった。
 こんなことを息子に言われたら、世間のお母さんも大号泣するだろう。
 僕だって泣きそうな気分になっているからね。
 ルシアンのことを我が子のようには思っていない。だが、大事な人だとは思っている。

「じゃあ、大きくなるのを楽しみにしてるね」
「うん!」

 ルシアンは嬉しそうに頷くと、小さな荷物を持ち上げた。

「僕が持つよ?」
「ううん、ぼくがもつの!」

 強がりながらも笑顔を見せるその姿に、思わず頬がゆるむ。
 こういうところは男の子って感じだね。

「だから……」

 ルシアンは荷物を持っていない方の手を差し出した。

「こっちはみにゃと!」

 その言葉に胸がきゅっと締めつけられる。
 僕は急いで荷物を持ち直し、ルシアンの手をしっかりと握った。
 彼は満足そうに微笑み、僕たちは並んで家へ帰っていく。
 そのまま二人で並んで歩く帰り道は、どこか特別な時間に感じた。
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