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第一章 少年との出会い
25.聖男、相談する
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「ルシアン、行ってくるね」
「いってらっしゃい!」
翌日、仕事に向かう僕をルシアンは玄関まで送ってくれた。
ただ、どこか気まずい雰囲気が流れる。
昨晩寝る時もそうだったけど、前のような関わりが今の僕にはできないと思った。
一緒に寝るのも緊張してしまうし、ハグをするのもどこか戸惑ってしまう。
それはルシアンも同じなんだろう。
今日は抱きついてくることもなく、優しく笑顔で手を振るだけだった。
病院に着くと何事もなかったかのように仕事を始めていく。
あんなに一人で留守番させるのが怖かったのに、今はそんな気持ちを微塵も感じない。
むしろ今はルシアンのことを考えなくても良いほど、忙しいことにホッとする。
「ねぇ、ルシアンくんって元気なの?」
「えっ!?」
お昼の休憩中、同期の由香が突然ルシアンについて聞いてきた。
そういえば、ここ最近ルシアンが帰っていたため、話すことはなかったな。
「今家にいるんでしょ? 今日迎えにくるの?」
「えっ……いやー、なんでわかったの?」
まだルシアンが家に来ることは話していない。
もしかしたら、ルシアンは由香に話しているのだろうか。
「顔を見たらわかるよ。ルシアンくんがいる時だけ心配そうな顔をしているし……。でも、今日は迷っている感じだね?」
やっぱり由香にはバレちゃうようだ。
「迷ってる……っていうか、どう接したらいいのかわからなくてね」
由香の前だと、つい本音が出てしまう。
昨日まで子どもだと思っていた相手が、気づけば背も伸びて表情まで大人びていた。
その変化に僕の方が追いつけていない。
「この前まで寝癖だらけで僕の後ろにべったりとついてきてたのに、今は落ち着いてるというか……」
「えっ……と成長したってこと?」
僕はそのまま頷く。
「久々に会ったらかなり成長していてさ」
「それでも一カ月ぐらいでしょ?」
「そうだよね。普通はそうなんだけどね」
きっと由香もルシアンを見たら驚くだろう。
それぐらい驚くほど成長しているからね。
「子どもは急に成長するだろうし、ルシアンくんは海外の子だから」
ルシアンは海外の子だと思われているようだ。
確かに日本人顔じゃないからね。
「でも、なんか違うんだよね」
「違う?」
由香が首を傾げる。
僕は手に持った紙コップのコーヒーを見つめながら、少し考えてから言葉を選んだ。
「前は子どもって感じだったのに今は……なんか、僕よりも落ち着いてるというか。ふとした時に、あぁもう〝守る〟対象じゃないんだなって思っちゃってね」
「へぇー、なんか寂しそうな言い方だね」
「いや、寂しいっていうより……どっちかというと戸惑いかな」
由香はふふっと小さく笑った。
それがまるで全部見透かされているような気がして、僕は慌てて視線をそらす。
「まさかドキッとしたとか?」
「えっ、そ、そんなことは……」
口ごもった僕を見て、由香がニヤリと笑う。
「やっぱりそれかー! きっと恋の始まりってやつじゃない?」
「ちょ、やめてよ! そういうのじゃないって!」
慌てて否定したのに、由香はケラケラと笑っていた。
その笑い声につられて、僕もつい笑ってしまう。
「まぁ冗談だけど、でもいいことじゃない? ちゃんと一人の人として見てる証拠でしょ。子ども扱いしなくなったってことだよ」
「そうかな?」
「それに私は大歓迎だよ。ミナルシでもルシミナでも受け入れる!」
由香がそう言ってくれて少し安心した。
ただ、途中から呪文のようなことを言っていたけど、僕にはわからなかった。
笑って誤魔化したけれど、あの〝ドキッ〟とした瞬間が、まだ心のどこかに残っている。
それが勘違いだと信じたい。
きっと急に成長したからびっくりしただけ。
僕は自分に言い聞かせて、仕事に戻ることにした。
「いってらっしゃい!」
翌日、仕事に向かう僕をルシアンは玄関まで送ってくれた。
ただ、どこか気まずい雰囲気が流れる。
昨晩寝る時もそうだったけど、前のような関わりが今の僕にはできないと思った。
一緒に寝るのも緊張してしまうし、ハグをするのもどこか戸惑ってしまう。
それはルシアンも同じなんだろう。
今日は抱きついてくることもなく、優しく笑顔で手を振るだけだった。
病院に着くと何事もなかったかのように仕事を始めていく。
あんなに一人で留守番させるのが怖かったのに、今はそんな気持ちを微塵も感じない。
むしろ今はルシアンのことを考えなくても良いほど、忙しいことにホッとする。
「ねぇ、ルシアンくんって元気なの?」
「えっ!?」
お昼の休憩中、同期の由香が突然ルシアンについて聞いてきた。
そういえば、ここ最近ルシアンが帰っていたため、話すことはなかったな。
「今家にいるんでしょ? 今日迎えにくるの?」
「えっ……いやー、なんでわかったの?」
まだルシアンが家に来ることは話していない。
もしかしたら、ルシアンは由香に話しているのだろうか。
「顔を見たらわかるよ。ルシアンくんがいる時だけ心配そうな顔をしているし……。でも、今日は迷っている感じだね?」
やっぱり由香にはバレちゃうようだ。
「迷ってる……っていうか、どう接したらいいのかわからなくてね」
由香の前だと、つい本音が出てしまう。
昨日まで子どもだと思っていた相手が、気づけば背も伸びて表情まで大人びていた。
その変化に僕の方が追いつけていない。
「この前まで寝癖だらけで僕の後ろにべったりとついてきてたのに、今は落ち着いてるというか……」
「えっ……と成長したってこと?」
僕はそのまま頷く。
「久々に会ったらかなり成長していてさ」
「それでも一カ月ぐらいでしょ?」
「そうだよね。普通はそうなんだけどね」
きっと由香もルシアンを見たら驚くだろう。
それぐらい驚くほど成長しているからね。
「子どもは急に成長するだろうし、ルシアンくんは海外の子だから」
ルシアンは海外の子だと思われているようだ。
確かに日本人顔じゃないからね。
「でも、なんか違うんだよね」
「違う?」
由香が首を傾げる。
僕は手に持った紙コップのコーヒーを見つめながら、少し考えてから言葉を選んだ。
「前は子どもって感じだったのに今は……なんか、僕よりも落ち着いてるというか。ふとした時に、あぁもう〝守る〟対象じゃないんだなって思っちゃってね」
「へぇー、なんか寂しそうな言い方だね」
「いや、寂しいっていうより……どっちかというと戸惑いかな」
由香はふふっと小さく笑った。
それがまるで全部見透かされているような気がして、僕は慌てて視線をそらす。
「まさかドキッとしたとか?」
「えっ、そ、そんなことは……」
口ごもった僕を見て、由香がニヤリと笑う。
「やっぱりそれかー! きっと恋の始まりってやつじゃない?」
「ちょ、やめてよ! そういうのじゃないって!」
慌てて否定したのに、由香はケラケラと笑っていた。
その笑い声につられて、僕もつい笑ってしまう。
「まぁ冗談だけど、でもいいことじゃない? ちゃんと一人の人として見てる証拠でしょ。子ども扱いしなくなったってことだよ」
「そうかな?」
「それに私は大歓迎だよ。ミナルシでもルシミナでも受け入れる!」
由香がそう言ってくれて少し安心した。
ただ、途中から呪文のようなことを言っていたけど、僕にはわからなかった。
笑って誤魔化したけれど、あの〝ドキッ〟とした瞬間が、まだ心のどこかに残っている。
それが勘違いだと信じたい。
きっと急に成長したからびっくりしただけ。
僕は自分に言い聞かせて、仕事に戻ることにした。
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