異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた

k-ing /きんぐ★商業5作品

文字の大きさ
26 / 53
第一章 少年との出会い

26.宰相、病気になった ※ルシアン視点

しおりを挟む
 俺は湊を見送ってから、ゆっくりと椅子に座る。

「あー、今日もみにゃと可愛かったな……」

 久しぶりに会った湊はさらに可愛さが増していた。
 昔は俺の生きがいでもあったし、ずっと一緒にいたいと思っていた。
 ただ、久しぶりに会った湊を見て、その気持ちが一段と強くなり、誰にも渡したくないと思っていることに気づいた。

 花束を渡した時の驚いた顔。
 手を繋いだときに困惑した顔。
 風呂に入れようと必死になる無邪気な笑顔。
 そして、俺を見て熱い視線を送りながら、自分の気持ちに戸惑っているようだった。

 あの時の湊の目は、嬉しそうでもあり、不安そうでもあった。
 まるで、何かを確かめようとしているみたいに。
 いや、それは俺の方かもしれない。
 湊に会えて嬉しいはずなのに、胸の奥がざわついて、息が詰まる。
 抱きしめたくて、でも触れたら何かが壊れそうで、手を伸ばせなかった。
 あの頃と同じ笑顔なのに、もう同じじゃない。
 何が変わったのか分からないけど、確かに何かが変わってしまった気がする。

 あんなに簡単に言えていた〝大好き〟という言葉すら、少し息が詰まってしまう。

「これはなんだろうか……」

 俺はすぐにパソコンで調べた。

【ドキドキ、息苦しい、胸が痛い】

 たしか気になる言葉を入れたら検索できると言っていた。

「狭心症……えっ、俺病気なのか?」

 中を見ると難しい言葉がたくさん書かれている。
 血管が詰まって死に至る病気に繋がるとまで書かれている。

「俺、死ぬのか……。みにゃとを残して……?」

 湊を残して死ぬかもしれない。
 そう思うと、さらに胸が締め付けられたように痛い。
 これから湊とやりたいことはたくさんある。
 そのために俺は生きているようなものだ。
 その後も調べれば調べるほど不安が襲ってきて、俺は勉強どころではなくなった。
 そんな状態でも、湊が作ってくれたお昼ご飯はとても美味しかった。


「あっ……もう湊を迎えにいく時間か……」

 気づいたら外は夕暮れになり、湊の仕事が終わる時間になっていた。
 全身に邪悪な魔素が張り付いているみたいに、体が重くて動きにくい。
 もう最後になるかもしれないと俺は悟った。
 伝えることもたくさんあるのに、俺はこんなところで死ぬのか……。

 そんな気持ちで俺は湊の病院の椅子に座って待つ。
 いつも俺に対しての視線と声が向けられるが、今日はそれどころではなかった。

「ルシアン……?」

 それなのに大切な人の声はよく聞こえてくる。

「みにゃと……」

 俺はすぐに湊に駆け寄り抱きついた。
 これも最後になるかもしれない。
 そう思うと強く強く抱きしめてしまう。

「ちょっ、ルシアン離れ……どうしたの?」

 俺は涙が止まらなかった。
 もう湊と会えないなんて……。

「あら、ルシアンくん……ってデカッ!?」

 湊の子分である女が声をかけてきた。
 せっかくの俺たちの時間を奪うのかと睨むが、やつは嬉しそうにニヤニヤと笑っていた。

「私が話を聞いておくから、湊は早く着替えてきたら? さすがに目立つだろうし」
「そっ……そうだね!」

 そう言って、湊はスルリと俺の腕から抜けていった。
 湊がいなくなってしまう。
 もう俺は死ぬのに……。

「ルシアンくん、湊のことが好きでしょ?」
「はぁん?」
「うっわ……こわ!」

 俺の邪魔をしやがって、イライラが収まらない。
 ただ、さっきまで胸が苦しかったのは治り、狭心症の症状が一つもない。

「お前……天才か?」
「むしろ君はバカなの?」

 やっぱりこいつと話をするとイライラする。

「俺はバカじゃない。狭心症だって調べたんだからな!」
「狭心症……? 湊は知ってるの?」
「知らない。今日わかったからな」

 俺も狭心症だって今日知ったばかりだ。
 パソコンは何でも知っているってやつだからな。

「んっ、今日わかった……? 症状は?」
「胸がドキドキして痛いし、ずっと息苦しい。みにゃととは離れたくないし、ずっと一緒にいたい」

 湊のことを考えるとやっぱり胸が痛くなる。
 声に出せば出すほど息が詰まる。

「ふーん……。それで湊のことばかり考えると痛くなるのね?」
「んっ? 湊のことばかり考えていると……」
「ふふふ、やっと気づいたのね。ルシアンくん、湊のことが好きなんでしょ?」
「何度言わせるんだ! 取られたくないし、俺以外に触れて欲しくないぐらい好き……好き!?」

 俺はようやく気づいた。
 湊のことを〝特別な意味〟で好きになっていたんだ。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【土壌改良】スキルで追放された俺、辺境で奇跡の野菜を作ってたら、聖剣の呪いに苦しむ伝説の英雄がやってきて胃袋と心を掴んでしまった

水凪しおん
BL
戦闘にも魔法にも役立たない【土壌改良】スキルを授かった伯爵家三男のフィンは、実家から追放され、痩せ果てた辺境の地へと送られる。しかし、彼は全くめげていなかった。「美味しい野菜が育てばそれでいいや」と、のんびり畑を耕し始める。 そんな彼の作る野菜は、文献にしか存在しない幻の品種だったり、食べた者の体調を回復させたりと、とんでもない奇跡の作物だった。 ある嵐の夜、フィンは一人の男と出会う。彼の名はアッシュ。魔王を倒した伝説の英雄だが、聖剣の呪いに蝕まれ、死を待つ身だった。 フィンの作る野菜スープを口にし、初めて呪いの痛みから解放されたアッシュは、フィンに宣言する。「君の作る野菜が毎日食べたい。……夫もできる」と。 ハズレスキルだと思っていた力は、実は世界を浄化する『創生の力』だった!? 無自覚な追放貴族と、彼に胃袋と心を掴まれた最強の元英雄。二人の甘くて美味しい辺境開拓スローライフが、今、始まる。

ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために

ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話 ※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。

【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい

御堂あゆこ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。 生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。 地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。 転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。 ※含まれる要素 異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛 ※小説家になろうに重複投稿しています

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

異世界で孵化したので全力で推しを守ります

のぶしげ
BL
ある日、聞いていたシチュエーションCDの世界に転生してしまった主人公。推しの幼少期に出会い、魔王化へのルートを回避して健やかな成長をサポートしよう!と奮闘していく異世界転生BL 執着最強×人外美人BL

処理中です...