異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた

k-ing /きんぐ★商業5作品

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第一章 少年との出会い

28.聖男、君はずるいよ……

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『ははは、それは恋じゃねーか!』
『ちげーよ!』

 テレビから聞こえてくる言葉に僕たちは静かになる。
 ご飯を食べていてもどこか静かな部屋。
 食器がぶつかる音とどこか緊張した空気感に包まれる。

「ルシアン、どうしたの?」
「あっ……いや……えっと……」

 なぜかルシアンがオドオドとしていた。
 何かを話すこともなく、目を合えば逸らして戸惑っていた。
 どこか居心地が悪いのだろうか。

「あまり美味しくなかったかな?」
「んっ? ご飯のこと? みにゃとのご飯が不味いわけないよ?」

 ルシアンの言葉はその通りだよね。
 だって、すでに食器には料理がほとんど残っておらず、完食しているからね。
 なら、なぜソワソワしているのだろうか。
 昨日は普通にご飯も食べて、過ごしていたのに……。

「由香と何かあった?」
「ふぇ!? あっ……いや……」

 やっぱり由香と何かあったのだろう。
 僕はスマホを取り出す。

「由香と会いたいなら連絡するけど――」

 そう思いスマホで連絡をかけようとしたら、突然腕を掴まれた。
 大きくなった手。もう、僕の腕もしっかりと掴めていた。

「俺はみにゃととずっと居たい」
「なら何でそんなに静かなの……?」

 僕が問い詰めると、ルシアンは困った顔で頭を掻いていた。
 やはり僕がルシアンを困らせていたのだろうか。
 少しずつ僕も辛くなってくる。
 ルシアンと楽しい時間を過ごしたいだけなのに、なぜか今日はうまくいかないことばかり。
 たくさんいろいろなことを考えてしまう。

 本当は僕に会いたくなかったとか。
 一緒にはいられないとか。

 考えて出てくるのは嫌なことばかり。

「みにゃと、目をつぶってて」

 僕は言われるままに目をつぶる。
 かすかな金属音と衣擦れの音が聞こえると、突然首に冷たいものが触れた。

「目を開けて」

 ゆっくりと瞼を開けると、首には小さな鍵を模したペンダントがそっとかけられていた。

「これ、どうしたの?」
「みにゃとにプレゼントするために持って来た」

 さっきまで目を逸らしていたのに、真剣な目で見つめられると、今度は目を逸らしたくなってきた。
 ただ、それはできない。

「みにゃと、こっちを見て!」

 散々自分はこっちを見なかったくせに、僕の頬に手を添えて視線を外すことも許されない。
 逃げ場はないし、自分だけずるいよ。
 ルシアンはペンダントに触れると、そっと自身の目元まで近づけた。
 鍵の中心には緑色の小さな宝石のようなものが埋め込まれている。

「俺と同じ瞳の色なんだ」

 まるでルシアンの瞳を閉じ込めたような見た目をしている。
 ルシアンは自身の首元をゴソゴソすると、ストラップにつけられた鍵を取り出した。

「これでお揃いだね!」

 ニコリと笑ったルシアンに僕はドキッとしてしまった。
 僕があげた合鍵を今も大事そうに持っている。
 皮のストラップは色褪せて、どれほどの時間を過ごして来たのか物語っている。
 僕にとったら一カ月という短い期間だったけど、ルシアンにとっては長かったんだと思い知らされる。

「プレゼントありがとう」
「うっ……うん……」

 僕がお礼を伝えると、ルシアンは目を逸らした。
 僕には目を逸らすなと言いながら、自分だけずるい。
 そっとルシアンの頬に手を触れると、ビクッとしていた。

「せっかく来たんだから楽しまないとね」
「へへへ、そうだね」

 笑ったルシアンの顔は昔と変わらなかった。
 少し大きくなって、僕は戸惑っていただけだ。
 僕たちは今も昔も出会った時から変わらない。

「みにゃと、俺……しばらくこっちに来れなくなるんだ」
「いつぐらい?」
「学園に通わないといけないから、5年ぐらいかな……」
「ってことは半年もかからないぐらいか……」

 きっとルシアンがよそよそしかったのも、これを伝えないといけないと思っていたからだろう。
 僕もルシアンに会うのをずっと楽しみにしていたからね。

「寂しくない?」
「寂しいよ……」

 僕がそっと抱きつくと、ルシアンは僕の肩に頭を置いて寄りかかる。
 やっぱりこういうところは子どもだよね。
 今でも体は僕と同じぐらいなのに、5年後のルシアンはきっともっと大きくなるだろう。
 その頃にはもう子どもの姿ではなくなってる。

「大丈夫だよ! 僕は待ってるからね」
「うん……」

 僕はルシアンの頭を優しく撫でると、出会ったあの頃の感触を思い出す。
 柔らかな髪の毛は成長しても変わらないんだなと。
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