今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

文月

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今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

魔法の糸

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「あ。これじゃないか? 」
 ダンさんが仕事終わりに突如言った。

 あの後オジサンに「特別な水の糸」のことを皆には言わないで欲しいってダンさんがさらっと言ってくれた。優しく言っただけだったけど、顔がちょっと怖かった。圧を感じた。お願いというより「喋ったら‥もう絶対今後治療しないぜ」位の圧を感じた。オジサンは苦笑いして「分かったわかった」って言って帰って行った。あたしはそこまで気が回ってなかったから「そうだな。そういうこともこれからは気を付けるようにしよう」って思った。どこかでオジサンが何気なくぽろっと話してそれを聞いてた誰かが話を大きくするって可能性もあるやもしれん。あんまりないかもだけど、あるかもしれないなら用心しておいた方がいい。
 ダンさんは、いつもあたしたち仲間のことを考えてくれる。本当にイイ人だ。コールさんが「(自分の)跡目はダンに‥」って言ってるのも納得できる。(※ コールさんは管理職で内勤仕事をしている)でも、まだまだコールさんには頑張って欲しい。やっぱ、優秀な治療師(ダンさん)が抜けるのは痛いからね!!
 さて、話は元に戻って、ダンさんの「これじゃないか? 」発言について‥だ。
「どれですか? 」
 あたしが(相変わらず真っ白な)研究ノートを開きながらダンさんを見るとダンさんは小さく頷き、固定魔法で糸の形を留めている例の水の糸を指さした。
「魔法の糸だよ。
 これに聖魔力を付与するんだよ。
 それこそ聖水で作った水の糸だな。今回、麻酔の働きが出来ることが分かった。そんな風に‥効果的な魔力を付与した糸にすればいいんだ。
 例えばさ、手術をしながら魔力枯渇を解消したり‥そういうことができるんじゃないか? 」
 あ。って思った。
 確かに。縫うような大怪我を負った患者は魔力枯渇も起こしていることが多い。今回のオズワルドさんもそうだった。
「糸‥」
 確かに何とかなりそうな気がする。
 すぐに実現できそうにはないが、出来たら絶対凄い大発見だ。
 今までそんな発想すらなかった。
 方法がわからない。調べても絶対前例はない‥以前に発想がなかった。
 聖魔術は医療とは違う神聖なものって決めつけてる頭硬い神官には絶対浮かばなかった発想だろう。それに「高貴で」「尊い」聖女様もきっとそんな実験には手を貸してくれないだろう。
 手間や時間的な問題‥面倒とかいうより、自分たちの領域に入ってこられたら迷惑って思うだろう。自分たちの唯一無二の領域を荒らされるのは絶対嫌だって思うだろう。
 実験の協力は望めないと考えた方がいい。(ってか、絶対無理って言い切れる)
 あたしの聖魔力で実験するしかない。
「そのアイデア、頂戴します」
 あたしはダンさんにお礼を言って、その場でアイデアの使用料ってか譲渡契約の話をしようとしたら「イイよ。何言ってんだよ」って苦笑いされた。
 ‥ダンさん、絶対お金取っていいと思いますよ? 
 だけど、同時にダンさんは絶対お金を受け取らないだろうなって思ったから、今度お昼ご飯を驕りますよってことにした。美味しい店探しといてくださいね。
「早速実験を始めます。ダンさんありがとうございました。お疲れ様です」
 言って早速机に向かうと、はあってダンさんのため息が聞こえた。振り向くとダンさんの不機嫌な顔。
 ん? と首を傾げると、
「手伝えること言ってくれ。一人で抱え込むな」
 って言われた。
 ダンさん‥。
「今回のことは寧ろ俺の問題だ。先輩である俺がハヅキに任せたんだからな」 
 ‥うん、そういえばそうだったなってダンさんが呟く。‥忘れとったんかい。いや、いいんですよ? 別に。
「じゃあ、ハヅキ、まず水の糸を出してくれ。いや、固定魔法が得意なリュックがいる時の方がいいから、明日から実験を始めよう」
 あたしに、頼もしい「研究チーム」が出来ました!
「あ、そうだ。幹部さんが‥先に上級治療師の資格取れって言ってた」
「は? 」
「そうでもしないとインパクトないから的なことも言ってた。最年少上級治療師がどうとか‥」
「知るか! ‥でも、そこまでしないとダメな気もするな‥逆に。最上位であるS級上級治療師に成る程高みに上り詰めた若者だからこそ「普通では考えられない様な新しい発想」が思いついたよ~って風にしたいんだろうな」
 あたしはこくんと頷く。
「‥まずは昇級試験の開催を呼び掛けるか‥」
 でも‥結構最近したからな~。
「もしくは‥協会事務所に行って、協会幹部大多数に実力を認めさせる。昇級試験希望者が一定数集まらなかったら、その手もある。過去に何回かだけあった」
 教会での昇進試験にも幹部は来る。だけど、幹部全員はこない。幹部の代わりに他教会の目が証人になるからだ。他の教会の治療師に対して甘い判定をする者はいないからね。むしろ、わざと他の教会の治療師にイジワルをしたり厳しい判定にしないため(そして、勿論自分の教会を贔屓しないため)の監視と「ちゃんと不正なく試験は行われてましたよ」っていう証明のために来ている。
 今回は昇級試験を受けるのが一人だから幹部が判定するってわけだ。 
 幹部が集まるの大変じゃない? って思うかもしれないが、そうではない。幹部は各地に赴任しているわけではなく幹部協会で働いている社員だから。
「昇進試験の申請? 申請人数が一定数集まってないからまだ開催できないな~。え? それって急ぎなの? ‥そう、そういう事情なら仕方がないね。僕たちが昇級試験の試験官をしよう。日程はこっちに合わせてもらうね。いつが都合いいかな」
 って具合でスケジュールが調整されるらしい。
 今回はあっちの希望だから、きっと申請が通るだろう。(この前来た幹部一人が気紛れで言ってるだけだとしたら無理だろうけど)
 だけど、今のままでは多分昇級出来ない。レベルを上げるためには‥やっぱり治療をこなすしかない。
 治療をこなしただけ‥魔法を使っただけレベルが上がる。 
 魔法は結構単純で「頑張る人の味方」みたいなところがある。攻撃魔法もあるから、「人を傷つける様な使い方」をした者も等しくレベルが上がるんだけどね。だけどそれは、ある人にとっては「良いこと」なのだから(兵士だったら敵兵を多く害した方がいいってことになるよね? )間違いではないのだろう。
 努力の方向性って奴? 自分の中の価値ってのは人によって違う。
 それはそうと‥
 今自分に必要なのはレベル上げだ。
 実験の為に大量の水の糸を作る(これで治療レベルがちょっと上がる)→リュックさんに固定魔法をかけてもらう(リュックも治療レベルが上がる。Win-Winだね! )→水の糸に条件を変えながら聖魔力を付与する。(ここでゴリゴリに、糸に聖魔力を使う。残念なことに聖属性は魔力を消費するだけで「使えば使う程レベルが上がる」類のものではない。だから「選ばれた神の力」で「見返りを求めない無償の愛の力」と呼ばれている)→レベルは上がらないがゴリゴリに魔力は削られる。魔力が枯渇している状態で自分の指を傷つけ、糸で縫う→「痛くなくて」「魔力が補えれば」成功。因みにこの作業も自分ですることによって治療レベルがあげることが出来る(ハズ)
 ‥こえぇ‥。 
 自分で言ってても怖かったが、それを試しにダンさんに言ったら、ダンさんにめちゃ叱られた。しかも
「自傷および、自分の傷を治しても治療レベルは上がらん! 」
 らしい。
 トホホだ‥。一石二鳥でいいと思ったのに‥。
 
 自傷はダメか~
 ‥でも、それしか仕方なくない??

 折角ちょっと見えたと思ったゴールが(こころなしか)遠くなったような気がしたハヅキだった。
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