今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

文月

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今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

聖女になんてなりたくない

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「貴女は‥聖女様ですか? 」
 キラキラした目であたしを見上げ、あたしを拝むオジサン。
 教会に運び込まれた患者さん。さっきまでダンさんに縫合されてた大怪我したオジサン。

 患者さんは中年のイカツイ兵士だった。傷口が大きかったから、「聖女による治療を希望しますか? 」って神官が尋ねたんだけど、
「大丈夫だ。縫ってくれ。恥ずかしながら、聖女に見てもらうだけの金はない」
 って首を振った。
 聖女による治癒は高いからね。
 でも、痛くないらしい。こんだけの傷を縫うのはきっと痛いだろうって神官は判断したからそう聞いたんだと思うんだよね。大丈夫かな? 心配そうな神官は、だけど、他の仕事もあるから会釈して行ってしまった。
 分かりました。やりましょう。
 中級の治療術で止血して、ダンさんが縫合する。麻酔みたいなのはない。普通は眠ってもらってその間に縫うんだけど、兵士さんは
「いい、そのままでやってくれ」
 と、睡眠魔法を拒否した。
 縫合に使うのは、手術用の縫い針と水の糸。それで、まるで手芸みたいにチクチクと縫うんだ。
 その水の糸を出したのはあたし。聖属性の次に豊富な水属性の魔法で作り出した水の糸。
 水を糸にするまで、随分の鍛錬が必要だった。強度を上げるのが特に難しかった。だけど、絶対実現したかった。体内で溶ける糸とか最高じゃない? 
 聖魔法で治せば? て思う? 多分、無理だよ。この大怪我だったら、聖女三人位いりそう。
 聖属性の魔法は、唯一無二であるが、応用が利かない。
 聖なる光を当てて治癒する。以上。それだけなんだ。あと、あたしがこの前やった「他人の魔力不足を補う」こともできるけど、あれはあくまで「そのばしのぎ」の治癒で、あたしが補った魔力によってその人の魔力量が上がるわけではない。自分の魔力として使うことも出来ない。あくまで、代替品に過ぎない。
 その人自身の魔力が回復すれば、代替品であるあたしの魔力は自動的に消滅する。それだけのもの。それだけだけど、十分特別な力ではある。(それは認める)
 魔力の差で、治癒の光の効果が上がる。魔力の量は生まれ持ったもので、鍛錬によって増える物じゃないから、魔力量が生まれつき多くなかったら、「その程度」の治癒しか出来ない。
 一生。
 一生、おのれの能力で救える人だけしか救うことが出来ない。
 だけど、反対に「特に努力をしなくても」おのれの能力で救える人は救えるってわけだ。
 それで満足できるか否か。
 ‥普通はするのだろう。給料もいいし、皆が「聖女様」って感謝してくれるし、敬ってくれる。「よい縁談」も選び放題だ。
 でも、あたしはそれじゃ嫌だな。それもいいけど、それにプラス、救える人を増やしたいじゃない? 聖女プラス治療師‥それこそがあたしの理想だ。
 だけど、この国ではそれは認められていないらしい。
 聖女は神様に選ばれた清らかで高貴な、神聖な? 崇められるべき存在。治療師は、神様の使徒(ってか、司教の便利な使いっパシリ)で治療を通して神様の素晴らしさを万人に伝える役割。
 人々は治療を受けさせてくれた教会に感謝し、治ることができたことに対して、神様に感謝する。そこに治療師に対する感謝はない。(役所の役員に書類仕事をしてもらうような感覚。「おう! 申請通った! この制度作った国最高」とは思うけど、「この事務処理してくれた役員さん感謝」とは思わんでしょ? ああいう感じ)
 だけど、聖女に治癒を受けたら、患者は「自分にだけ」聖女が奇跡を与えてくれた‥。まさに神聖。まさにアメージング! って思うらしい。
 まあ、アレだ。 
 聖女に治癒を受ける怪我、病気=大怪我。治療師に治療を受ける怪我(病気の治療ってのはない)「なんてことない怪我」や腰痛程度の「身体の不調」だからな。
 ありがたみが違うって奴だな。
 大怪我を治してくれたから‥聖女は、アイドルであり、天使様であり、女神様なんだ。(あと、聖女の治癒ってのは大袈裟に「厳かで」なんかどこか演劇を思わせる様な‥演出がある。厳かってか神聖さってかそういうのを全面に出してかないといけないからね)
「偶像だけどな」(※ハヅキの見解です)
 生まれ持った能力とか‥ただの運じゃん。高みを目指してこそ「やりがいのある人生」でしょう。「運命だ。諦めるほかない」とかくそくらえだ。
 幼い頃それに気付いて以来、あたしはあえて聖属性を隠して、水属性の魔術を磨いた。水属性だろうが魔力の量が増えるわけではないが、水属性の魔法は色々応用がきく。
 水は形が変わるから。 
 それは、火も風も同じ。土もだけど、土属性の治療師ってあんまりいない。今まで会ったのは一人だけ。「全身を温めなくちゃいけないから、全身砂に埋めますね♡」ってオネエな治療師が患者さんを埋めてた。魔法で出した「あったかい砂」で。あたしもやらせてもらったが、めちゃ気持ちよかった。治療師よりも、「砂風呂屋さん」して欲しい。疲れとかに効きそう。  
 ‥ああ、脱線した。
 ダンさんは真剣な顔で、患者さんの傷を縫っている。チクチクチクチク。手術針とあたしの作った水の糸で、器用に傷を縫っていく。
 相変わらず見事だなあ。
 ダンさんが、パチンと水の糸を切る。
 針に通された残った水の糸は、暫くして糸の形から水の形に戻り、トレーに水たまりを作った。
 それをジーと見つめる患者さん。
「水が‥キラキラ光っている。まるで聖水の様だ。いや、さっき縫われていても全然痛くなかった。だから、きっと本当に聖水なんだろう。貴女はまるで‥」
 で、さっきの冒頭の台詞だ。
 いや、聖水って。
 ‥確かに、聖女が「祈り」を捧げれば(※ 祈りをささげるって表現されてるけど、所詮は「魔力を付与している」だけ)水が聖水になる。あたしが「せめて痛くない様に」って願ったから‥水が聖水になったってことかな?? 
 う~ん。気付かなかったが、そういうこともあるやもしれん。 
 ダンさんがオジサンに
「ははは。そんだけ元気なら大丈夫だ。そっちの部屋で少し休んだら帰っても大丈夫だよ」
 って言って、さらっと胡麻化してくれた。
 オジサンはペコっとあたしたちに礼を言って帰って行った。
 聖水‥かあ。
 そういうこともあるのか。盲点だった。
 成程‥意図して使わなくても、聖魔術ってのはバレるかもしれない。
 バレるのはよくない。絶対によくない。
 何故ならあたしは聖女になんてなりたくない。
 綺麗な服着て顔を晒してにっこり微笑んで、すっと手を翳して「神のご加護を‥」とか冗談じゃない。(あの所作が胡散臭い)
 どうやって治ったか分からんってのも、キモチワルイ。
 どう悪いか調べて、きちんと治す。それが治療。どう悪いか分からんけど、要は治りゃいいんでしょみたいなええ加減なの、嫌なんだよ。
 あたしは‥上級治療師になって、「純粋に」人々が救いたいんだ。
 弱ってるイケメンに「ドキ、なんて綺麗な人! 」シュチュは、もうどうでもいい(もう、イケメンには会ったから)あたしは、純粋に上級治療師になりたいんだ!!
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