今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

文月

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今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

被験って奴ですね? 

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 翌日、ハヅキが元マリエール組のロウとロアルにぼそっとその話をすると苦笑いされた。
 その話‥
 つまり、治療レベルを上げるために大量の魔法の糸を作り、聖魔法を付与して、魔力が枯渇している状態で自分の指を傷つけ、糸で縫うという実験をダンさんに提案したら「自傷および、自分の傷を治しても治療レベルは上がらん! 」とダンさんにめちゃ叱られた、という話だ。
「だけどさ~それしか方法ないって思ったんだよね~」
 とハヅキはため息をつく。
 大抵の魔術士は「自分<魔術」なところがある。だから苦笑いししたロウとロアルだって「まあ‥その気持ちもわかるが」、若い女の子が自分を実験台にするのを許すわけにはいかない。
 仲間としてもだけど、人間としてどうだ。
 好奇心(魔術に対する探究心)を尊重したら‥その内「取り返しのつかないこと」になりそうだ。 
 魔術士はそれが密かに怖い。

 実はロアルたちが一緒に揃っているのは珍しい。今や彼らは結界や補助的な役割を買われて色んな班に引っ張りだこなんだ。でも、二人とも「結界だけじゃなく治療もしたい! 」って希望が強く、今日はハヅキの班で患者さんを治療している。
 二人の意思を尊重して、今後は、主にロウはダンさんに指導を受けながら怪我の処置、ロアルはハヅキと一緒に病気の治療をすることが決まった。でも、その合間を縫って結界の仕事も頼まれるんだろう。二人は大忙しだ。
 今は昼食時間で、元マリエール三人組は久しぶりに三人揃って休憩を取らせてもらうことになった。
 三人が特別仲がいいから、もあるけど、ハヅキが「二人に相談がある。付き合いが長い二人に話を聞いて欲し」とお願いしたからだ。
 ハヅキからしたら付き合いの長さからいったら断然二人の方が親しい。(なんせ、三年間一緒に仕事してきたんだしね)普段頼りにしているのはダンさんやリュックさんだけど、彼らはやっぱり先輩だしね。
 昼の時間が少し過ぎ、少し落ち着きを取り戻した食堂に向かう。
「ロアル、席取ってくれてありがとな」
 ロウがお礼を言いながら、ロアルの横に座る。ロウとロアルが隣同士の席に座り、ハヅキは彼らの向かいだ。ロアルの分の食事はハヅキが持ってきた。(ハヅキは弁当)
「今日は鳥が入ったスープか! ここの料理長は腕がいい。贅沢な素材を使っているわけじゃないのに、素朴で旨い」
 ロウがチキンスープに舌鼓を打ちながら言うと、ハヅキの顔がぱあっと明るくなった。自分で作った食事でもないし、ロウも今はもうリュミエールの仲間なんだけど、マリエールという別の教会から来た彼らに自分の職場を褒められると嬉しい。(ちなみに、マリエールには食堂はなかった。食堂があるとやっぱり食事の匂いがして、「神聖な教会の雰囲気」には似つかわしくないから‥らしい)
 あそこはいつも掃除を徹底させて、上品な花の香りのこうを焚いていたなあ。まさに‥清涼で特別な場所って感じだった。ここも掃除は行き届いているが、雰囲気は大分アットホームだ。
 マリエール‥懐かしいな。他の皆は元気かな。
 今、別の教会でその時の仲間と一緒に働いてるのがちょっと不思議な感じもする。
 あの時は、でもこの二人ともこんなに親しくなるとは思ってなかったな。ロアルはもっと貴族然としてたし、ロウは昼休みになったら食事をとるために近くの食堂に行ってたから顔を合わす機会がなかったし、そもそも年も離れているから話す機会はなかったな。(ロウは100パー外食だった。因みにハヅキは適当にハムやなんかを挟んだサンドイッチ(ハヅキ特製)が定番だった)
 ロアルは‥どうだったんだろ? 昼食とか‥どうしてたんだろ? 近所に貴族も行くような洒落たカフェや食堂はなかった。普通の貴族は大衆的な食堂では食べないよね? 一緒に食事を食べたことがないから(そもそも、誰とも一緒に食事をとる機会なんかなかったから)分からないな。家が近所だったから食べに帰ってたとかかな? チラリとロアルを見ると、チキンスープに満足そうで安心した。
 独身で近所に下宿している二人はいつもここの食堂を利用している様だ。因みに、子供や入院患者、貧しい人には無料で振る舞われているここの食事だが、職員は有料だ。

「‥そりゃ、ダンさんが怒るのも無理ないわな~」
 ロウが苦笑いして、ロアルはちょっと怒ったような顔をしている。
 ロアルはロウみたいに感情をストレートに表に出すってタイプじゃないけど、「機嫌が悪いんだな」とかそういうのは割と分かりやすい。楽しいんだな、嬉しいんだながちょっとわかりにくい‥基本笑顔だから。上品な微笑っての? それをスタンダード装備してるの。貴族っぽいよね。
『あたし? あたしは‥貴族っぽくはないね~』
 ハヅキはこそっと苦笑いした。
 今のロアルのお怒りレベルは10分の8くらい。結構怒ってる。
『分かってますよ、馬鹿なこと言ってるってことくらい。ちょっと愚痴りたかっただけです~でもさ~皆もあたしの気持ち、わかるでしょ~? 』
 ぷぅと頬を膨らませてむくれていると、ロウが真剣な顔で「でも‥そうだな‥」って小さく呟いて、
「それこそ、俺の目標「治療院」だよ。
 街にはさ、治療をしたいがお金がない人間が五万と居る。それを全部助けることは勿論できないし、教会の仕事を取る気はないけど、「実験の協力をして欲しい」って形で治療すれば‥どうだ? あくまでも、治療師の修行の場としての「治療院(仮)」だ。
 治療師の腕が上がれば、教会側の利になる」
 と言った。
 ハヅキは「あ」って顔したけど、ロアルが首を傾げて「何のこと? 」って顔をしている。だから、ロウがこの前ハヅキと二人で話した「将来の夢」の話をかいつまんで説明した。
「成程‥でも、この教会の治療師である以上、僕たちはこの教会以外で治療をすることは出来ないんじゃないか? お金をとらないとなったら、教会ではなくそっちに人が流れることになって‥教会の仕事をとることになる」
 それは確かだ。だから、将来本当に治療院を開業する時は、教会を退職しなければいけないだろう。
 だけど‥今は事情が事情だからそこら辺は多めに見て欲しい。
「教会は教会。治療院(仮)はあくまで実験だ。
 教会での治療は既存の皆が認める治療法だ。安心度が違う。
 全く別物って思ってもらえないかな~」
 教会と治療院は別物で、教会無料版とは違うってこと。
「問題はヨハンさん(← この教会トップ)がそれを許してくれるか‥だね」
 その前にコールさんか。
「三人で一緒に行こう。ハヅキ一人だったら心配だ」
 ハヅキは人の説得とか向いてなさそうだからな。と、ロアルは思った。
 
 無料の治療院(仮)
 目的
 すでに安全性は保障されている聖魔法を付与した魔法の水(今はどうやら、痛みを和らげる効果だけが認められている)を改良して、さらに有用な効果を得られるのが目標。その為の実験を一般の患者さんに協力してもらいたい。
 患者さん側のメリット 
 無料、安全性は保障されている。
 教会側のメリット 
 ハヅキが治療師としてスキルアップして、より高度な治療が出来るようになる。

「どう? 」
 ドヤ顔ハヅキ。
「いや、患者を実験台にするとか言っちゃったら‥マズいでしょう‥」
 ドン引きロアル&ロウ。言い方、難しい。
「あと、あれも言わないとね‥ハヅキ忘れてる」
 ロアルの指摘にハヅキが「ああ」と‥気付いたような顔をする。
「無料の治療院は、あくまで魔法の糸の被験のみで、通常の治療が必要になる人は、教会に行ってもらう」
 これだ。
 そこらはヨハンさんに説明する前までにもう少し考えないといけないな。 
 誠実な説明。大事。

「そもそも、普通の水の糸ってどういう感じなの? 」
 ロアルが首を傾げる。
 ロアルも普通の糸の代わりに水の糸を使って患者さんを治療している一人だ。
「水で作った糸で、聖魔法が付与された針で縫うことによって、手術後、糸が水に戻った際、体内に入っても問題ない水になる」
 体内に残るのに、普通の糸より水の糸の方がよくない? ってんで、水の糸はだいぶ前から開発されている。
 問題は「普通の水ではまずい」ってんで、そこらの‥チート担当が「聖女の力」ってわけなんだ。
 普通は、針の方に聖女の「水を体内に入っても問題ない水(聖水)に変える聖魔法」を掛けてもらう(一回限り)
 だけど、あたしは、糸の方にあらかじめ聖魔法が付与した。
 常に聖魔法が付与された針を常備しとくのって面倒じゃない? ってそんな安易な考え方からだった。水や風に魔力を付与するより、針やなんかの‥固定物に魔力を付与する方が時間もかかるんだ。
「結果的に同じになるから気にもしてなかったけど‥」
 聖水の効果が違うとはなあ‥。 
「でも、そりゃそうかも。水にしたって、水とお湯だったら別の効果があるし、煮沸消毒した水とくんできたばっかりの真水では味が違うし、成分も違う。軟水や硬水‥色んな種類の水がある」
 ぼそっと呟くとロアルが
「魔法で生成した水は無色透明何の成分も含まれていない真水だ。聖水は‥それに何らかの成分が加わった水っていうことなのかな? 」
 首を捻りながら言った。ハヅキもうなづく。

 そして、もしかしたら‥聖水は一種類じゃない。

 針に聖魔法を付与した通常の魔法の糸使用の手術 → 体内で血管に入っても問題ない成分に変わるだけ。(聖女の加護は針の方にかかっているから)
 魔法の糸に聖魔法を付与した場合 → 体内で血管に入っても問題ない成分に変わることに加えて、何らかの効果が期待される‥のかも? (聖女の加護が水の方にかかっているから)

 なんか、「新技術開発の糸口」が見えてきたような気がしたハヅキたちだった。
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