84 / 88
今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです!
家族、そしてやがて家族になる人たち。
しおりを挟む
「ハヅキ。おはよ~」
ハヅキにいち早く気付いたロウが駆け寄ってきた。いつもと同じ明るい笑顔だが、心なしか疲れているように見える。これは‥アレだ。寝不足。
「昨日良く寝られなかったの? 」
とハヅキが聞くとバツが悪そうに苦笑いした。
「‥そこは気付いてもスルーするところだろ」
ボソッと小声で言われ、ハヅキが「はは」っと笑った。
「幹部立ち合いの昇級試験とかそりゃ緊張するなって方が無理だよ」
ロアルが苦笑いして話に加わってきた。
「おーい。もう中に入れよ~」
教会の中からダンの声がして、三人は一度大きく頷きあって、教会に向かって駆けていく。
「おめでとうハヅキ」
ご褒美は、とびっきり甘いオズワルドの笑顔♡
ハヅキは嬉しそうに頷いて、向かい合うオズワルドに頭を突き出す‥所謂「よしよし待ち」のポーズをとる。
「全く‥ハヅキは‥」
苦笑いして、オズワルドがハヅキの頭をよしよしする。
傍から見たらバカップル全開の光景なんだけど、ここはオズワルドの自宅、ドン引きの目(や、あからさまに忌諱の目)で見て来る者はいない。見慣れた光景に、オズワルドの下の兄(ハヅキが心の中で「魔法の兄貴」と呼んでいるシュナイエス)なんて、全無視で新聞を読んでいる。上の兄・マルクスはハヅキの論文『聖水で生成した手術用糸の効果』を、その視線で論文に穴があくくらい真剣に読んでいる。
因みにこれは、魔法の兄貴・シュナイエスにハヅキが
「提出前に読んでみてくれませんか」
ってお願いした分だ。
それを、今はマルクスがハヅキの許可を得て読んでいる。
「まず、水魔法で糸を作るってところから驚きだ」
マルクスは最初の数行から驚きっぱなしだ。
「固定魔法で糸の形状を維持して、手術に使用する。水が体内に入っていいわけがないが、この水が何と‥血液と同じ成分になっている‥なるほど、つまり、生理的食塩水って奴だな」
「生理‥なんですか? 」
ハヅキがマルクスを見る。
マルクスが頷いて、説明しようとすると、ハヅキが「待って」と言葉を遮って
「大丈夫です。意味はだいたいわかります、ただ、そういう言葉があるんですねってことがわかりました」
と言った。
マルクスの説明が始まったら長い。その話に付き合ってオズワルドとの時間を邪魔されたらかなわんって思ったんだ。
もっとも、医学はマルクスの専門外だから、そう「長い話」にならない確率も高いが。
『だけど、今は‥いいかなあって』
ハヅキは心の中でこっそり苦笑いした。
ハヅキの答えに満足したらしいマルクスが軽く笑顔を浮かべて頷いて、また視線をハヅキの論文に戻した。
㋮「今回の論文はそれを発展させたもので、聖水の性質の違いで糸の効果が変わるといったものだね」
㋩「そうですね」
㋮「なら、このタイトルは少し変えた方が良くないかな? というか‥一つの論文に詰め込み過ぎじゃない? まず、手術用糸の発表で一つの論文を発表して、特許も取った後、反応を見てから次の論文という形で発表した方がいいんじゃない? 」
㋩「そうなんですけど‥今回ちょっと時間がないというか‥」
㋮「ふうん? よくわからないけど、特許は取っておいた方がいいと思うよ」
㋩「それはそうですね! うっかりしてました! 」
その後二人で特許の話(そして、その後やっぱり脱線して医学の話)をするのをシュナイエスが興味深げに眺め、「ついてけない‥」って微妙な顔でオズワルドが苦笑いする。そして、そんな四人を微笑ましいって顔でナガツキが眺めて、
「お茶にしませんか~? 」
四人の前にナガツキ特製アップルパイを置く。ナガツキのトビキリの笑顔に、ハヅキが、今までの「仕事モード」の顔から一転‥ぱっと顔をほころばせる。
「やった‥! 」
ハヅキの素朴な感嘆の声にナガツキが破顔する。
「その素直な賞賛! 最高! 大好きハヅキちゃん! 」
抱き合う勢いで両手を繋ぎ合う二人は、顔が似てるからまるでホントの親子みたいだ。
‥顔面偏差値ここだけ異常に高い。
シュナイエスは苦笑いしてその様子を見て、
‥兄さんも俺も母さん似っていっても、親父要素が多少は混じっているからね。
そんなことを思った。
「(世間で醜いといわれている)親父要素が混じっている」といっても、他の連中みたいに親父に対する嫌悪感とかはない。
顔はアレだけど(それは間違いないけど)性格も穏やかで人格者で、尊敬できる親父だ。勿論、母さんが毎日言ってるみたいに「カッコイイ‥! 」とは絶対思わないが。
そもそも、息子が「父さんの顔カッコイイな」とか思うわけがない。例えどんな顔だとしてもそれは変わらないと思うぞ? それは俺(みたいな「アレ」な顔の親父を持つ息子)に限らず全息子に言えることじゃないか? 気持ち悪いじゃないか。
女子は、別に‥そういうの無いよな。
「誰それのお父様カッコイイね」
も
「誰それのお母様美人ね」
も言うし、それが別に変じゃないし、
「あたしのお父様はダンディーで紳士。男前だから、小さい頃は「大きくなったらお父様と結婚する! 」って普通に思ってた」
とか
「お母様は娘のあたしからみても、可愛い」
とかも言うし、別にそれが変でも異常でもない。
逆に男がこれ言うと‥ヤバい。男女差別とかそういうのじゃないけど‥やっぱさ、何かそういう感じはある‥気がする。「誰それの親父男前だな」も「誰それの母親美人だな」も子どもの頃ならいいだろうけど、ある程度成長したら‥なんかヤバい感じになる。「狙ってんの?? 」「熟女好き?? 」「ってか‥俺の母親を変な目で見るなよ‥」って思われたら嫌じゃない。(考え過ぎ?? )
それだけじゃない。男は、自分の家族に対して「オカン美人なんだ」っていったら「‥マザコン?? 」って感じになる。俺だってそんなこと友達が言ってたら「コイツ、ちょっとアレだな」って思っちゃうだろう。母親もアレだけど‥父親のことを「親父は俺が言うのもなんだけど男前でダンディーなんだ」「男の俺から見てもカッコいと思う」とか言われたら「‥へえ‥」ってちょっと引いちゃうな。いや、これはマジで「親父のことは尊敬している」とは違うわけじゃん。
偏見か? まあ‥俺の独断と偏見かもしれないね。
なんか脱線しまくったが、つまり俺が言いたいことは、男は親父の顔をどうこう言わない。よくも悪くも、だ。なぜって、見苦しいから。
人間顔じゃない。
ニコニコ笑っているシュナイエスがこころの中ではそんなことを考えていることは、誰も知れないだろう。
さっきまで「そんなこと」を考えていたからだろうか‥
「ハヅキさんって、お父さん似? お母さん似? 」
ホントに唐突にそんなことが気になった。この人類とかけ離れたところにいる様な「そうはいない」美人の両親はどんな顔で、彼女は両親のうちどちらに似ているのだろうか? どちらかに似ているのだとしたら、その一族はとんでもない美形一族なのだろうか? と。
自然に全員の視線がハヅキに集まる。
‥そういえば、それ、俺(私)もちょっと気になるかも、って奴だ。
「ん? 」
ハヅキが一瞬首を傾げる。
「え? どちらとも似てませんかね。いや‥どちらとも似ている? う~ん。三人で並んだら「家族だね」って感じはしますが、単品で見たら、どっちにも似てない気もしますね」
ヘラっと苦笑いしたのはハヅキ。ふむ。ここで「どっちとも似てません。言うならば両親のいいとこどり? 」とか言われたらドン引きするゼ~って思ったよ。うん。なんか安心。って思ったのはマルクス。シュナイエスは「そっか~」って別にそれ程興味ないって感じ。この中で唯一ハヅキの両親と会ったことがあるオズワルドだけは「確かにそういう感じかも? 」ってちょっと納得してる。
そんな中、ナガツキだけが
「私もまさに、それ! 」
ってやたらハイテンションで言った。
そのいつもと違うテンションに周りの視線が今度はナガツキに集まる。
「そんなに? (テンション上げること?? )」
怪訝そうに首を傾げるマルクス。シュナイエスも頷き、
「別にそんなに驚くようなことでもないでしょう。俺だってシュナイエスだって、オズワルドだって、三人それぞれで見たら違う顔してるけど、三人で並んでたらやっぱり兄弟だなって顔だ。‥そういうもんじゃない? 」
ってあっさり。でも、オズワルドだけは苦笑い。オズワルドは「そんなこと思ってんの兄貴たちだけだ‥世間はそうは思ってないぞ」って思ってるんだ。「面倒くさいから口には出さないけどさ~」ってこころの中で苦笑い。この兄たちは、そんなこと口にしようもんなら「は!? 誰。誰につまんないこと言われた!? 社会的に抹消してやるから名前言いな。武力行使は出来ないが俺たちにだってしようがあるんだぜ~」っていいかねない。
マルクスは権力で、
‥シュナイエスは魔力で実力行使。シュナイエスの方がえげつなそう。
しかし、何だろ。この母親のハイテンション。
「私も、まさにそれ」?
そして、ふと母方の祖父母の顔を思い出して、もしかして母は周りに散々「家族の誰にも似てないね」って言われてきたのだろうか? ってシュナイエスは思い当たった。
‥有り得る。それか、直接には言われなかったかもしれないが、そう思わせる様な態度を周りの人たちに散々とられてきたのだろう。
それは、他人が思うよりも本人にとって嫌なことだった‥ってことかも知れない。
その一見「なんでもないこと」は、ナガツキのこころに密かにわだかまりとなって残っていたのだろう。
その答えをさっき、あっさりとハヅキが出した。
ちょっとしたことだ。だけど、ナガツキにしてみたら、今までの‥幼少期からのわだかまりを一瞬で溶かされた思いがしたのだろう。
だから、嬉しかった。(あんなにテンション上がるほどだ)
本人だけの問題で、それそのものは他人にはちょっとわからない感覚だ。だけど、だれしも「そういうこと」はあるだろうし、「その感覚」は理解できるだろう。
三人並んで、同んなじ笑顔で笑う。そしたら、「やっぱり家族だね~」ってそういう風に見える。‥やっと。
同じ笑顔なのは、同じ様に暮らして来たからだ。同じ家で同じものを食べて同じようなことで笑って、悩んで。そうして、その結果、同じような顔で笑うようになった。
歴史だ。
この同じ笑顔は、ナガツキの、ハヅキの‥家族の記憶だ。
よく、一緒に暮らしていたら夫婦が似て来るっていうのもそれと同じ原理だろう。
「遺伝だから似てる。それだけじゃなくて、一緒に住むことで家族が似て来る。「似てる」は仲がいいって証拠ってことだよね。つまり」
ふふってシュナイエスが笑う。
「そうね。ホントそれ」
にっこりとナガツキも微笑む。ホントに幸せそうな顔で。
もとは家族じゃなかった男女が出会って、家族になる。やがて、子供が産まれて、家族の形が変わる。血のつながってない男女と、男女と半分ずつ血のつながった子供の家族。血が繋がってるから家族なんじゃなくて、「家族だ」ってそれぞれが思うから家族になる。(じゃないと、いつまでたっても父親と母親は他人のままだ)
シンプルなことなんだな。
シンプルだけど、簡単なことじゃない。
やがてオズワルドとハヅキさんも結婚して家族になるのだろう。
家族になるのって、シンプルだけど、簡単なことじゃないけど、自然に‥。
「深い。うん、深い。シンプルだけど、深い。単純だけど、難しい」
うんうん、といやに納得した感じでナガツキが頷く。
頷いて、チラリと空を見る。
これでいいですか?
誰に言うでもなく、空に話し掛ける。心の中で。
そして、すぐにそのことはナガツキの心から消えていくのだった。
ハヅキにいち早く気付いたロウが駆け寄ってきた。いつもと同じ明るい笑顔だが、心なしか疲れているように見える。これは‥アレだ。寝不足。
「昨日良く寝られなかったの? 」
とハヅキが聞くとバツが悪そうに苦笑いした。
「‥そこは気付いてもスルーするところだろ」
ボソッと小声で言われ、ハヅキが「はは」っと笑った。
「幹部立ち合いの昇級試験とかそりゃ緊張するなって方が無理だよ」
ロアルが苦笑いして話に加わってきた。
「おーい。もう中に入れよ~」
教会の中からダンの声がして、三人は一度大きく頷きあって、教会に向かって駆けていく。
「おめでとうハヅキ」
ご褒美は、とびっきり甘いオズワルドの笑顔♡
ハヅキは嬉しそうに頷いて、向かい合うオズワルドに頭を突き出す‥所謂「よしよし待ち」のポーズをとる。
「全く‥ハヅキは‥」
苦笑いして、オズワルドがハヅキの頭をよしよしする。
傍から見たらバカップル全開の光景なんだけど、ここはオズワルドの自宅、ドン引きの目(や、あからさまに忌諱の目)で見て来る者はいない。見慣れた光景に、オズワルドの下の兄(ハヅキが心の中で「魔法の兄貴」と呼んでいるシュナイエス)なんて、全無視で新聞を読んでいる。上の兄・マルクスはハヅキの論文『聖水で生成した手術用糸の効果』を、その視線で論文に穴があくくらい真剣に読んでいる。
因みにこれは、魔法の兄貴・シュナイエスにハヅキが
「提出前に読んでみてくれませんか」
ってお願いした分だ。
それを、今はマルクスがハヅキの許可を得て読んでいる。
「まず、水魔法で糸を作るってところから驚きだ」
マルクスは最初の数行から驚きっぱなしだ。
「固定魔法で糸の形状を維持して、手術に使用する。水が体内に入っていいわけがないが、この水が何と‥血液と同じ成分になっている‥なるほど、つまり、生理的食塩水って奴だな」
「生理‥なんですか? 」
ハヅキがマルクスを見る。
マルクスが頷いて、説明しようとすると、ハヅキが「待って」と言葉を遮って
「大丈夫です。意味はだいたいわかります、ただ、そういう言葉があるんですねってことがわかりました」
と言った。
マルクスの説明が始まったら長い。その話に付き合ってオズワルドとの時間を邪魔されたらかなわんって思ったんだ。
もっとも、医学はマルクスの専門外だから、そう「長い話」にならない確率も高いが。
『だけど、今は‥いいかなあって』
ハヅキは心の中でこっそり苦笑いした。
ハヅキの答えに満足したらしいマルクスが軽く笑顔を浮かべて頷いて、また視線をハヅキの論文に戻した。
㋮「今回の論文はそれを発展させたもので、聖水の性質の違いで糸の効果が変わるといったものだね」
㋩「そうですね」
㋮「なら、このタイトルは少し変えた方が良くないかな? というか‥一つの論文に詰め込み過ぎじゃない? まず、手術用糸の発表で一つの論文を発表して、特許も取った後、反応を見てから次の論文という形で発表した方がいいんじゃない? 」
㋩「そうなんですけど‥今回ちょっと時間がないというか‥」
㋮「ふうん? よくわからないけど、特許は取っておいた方がいいと思うよ」
㋩「それはそうですね! うっかりしてました! 」
その後二人で特許の話(そして、その後やっぱり脱線して医学の話)をするのをシュナイエスが興味深げに眺め、「ついてけない‥」って微妙な顔でオズワルドが苦笑いする。そして、そんな四人を微笑ましいって顔でナガツキが眺めて、
「お茶にしませんか~? 」
四人の前にナガツキ特製アップルパイを置く。ナガツキのトビキリの笑顔に、ハヅキが、今までの「仕事モード」の顔から一転‥ぱっと顔をほころばせる。
「やった‥! 」
ハヅキの素朴な感嘆の声にナガツキが破顔する。
「その素直な賞賛! 最高! 大好きハヅキちゃん! 」
抱き合う勢いで両手を繋ぎ合う二人は、顔が似てるからまるでホントの親子みたいだ。
‥顔面偏差値ここだけ異常に高い。
シュナイエスは苦笑いしてその様子を見て、
‥兄さんも俺も母さん似っていっても、親父要素が多少は混じっているからね。
そんなことを思った。
「(世間で醜いといわれている)親父要素が混じっている」といっても、他の連中みたいに親父に対する嫌悪感とかはない。
顔はアレだけど(それは間違いないけど)性格も穏やかで人格者で、尊敬できる親父だ。勿論、母さんが毎日言ってるみたいに「カッコイイ‥! 」とは絶対思わないが。
そもそも、息子が「父さんの顔カッコイイな」とか思うわけがない。例えどんな顔だとしてもそれは変わらないと思うぞ? それは俺(みたいな「アレ」な顔の親父を持つ息子)に限らず全息子に言えることじゃないか? 気持ち悪いじゃないか。
女子は、別に‥そういうの無いよな。
「誰それのお父様カッコイイね」
も
「誰それのお母様美人ね」
も言うし、それが別に変じゃないし、
「あたしのお父様はダンディーで紳士。男前だから、小さい頃は「大きくなったらお父様と結婚する! 」って普通に思ってた」
とか
「お母様は娘のあたしからみても、可愛い」
とかも言うし、別にそれが変でも異常でもない。
逆に男がこれ言うと‥ヤバい。男女差別とかそういうのじゃないけど‥やっぱさ、何かそういう感じはある‥気がする。「誰それの親父男前だな」も「誰それの母親美人だな」も子どもの頃ならいいだろうけど、ある程度成長したら‥なんかヤバい感じになる。「狙ってんの?? 」「熟女好き?? 」「ってか‥俺の母親を変な目で見るなよ‥」って思われたら嫌じゃない。(考え過ぎ?? )
それだけじゃない。男は、自分の家族に対して「オカン美人なんだ」っていったら「‥マザコン?? 」って感じになる。俺だってそんなこと友達が言ってたら「コイツ、ちょっとアレだな」って思っちゃうだろう。母親もアレだけど‥父親のことを「親父は俺が言うのもなんだけど男前でダンディーなんだ」「男の俺から見てもカッコいと思う」とか言われたら「‥へえ‥」ってちょっと引いちゃうな。いや、これはマジで「親父のことは尊敬している」とは違うわけじゃん。
偏見か? まあ‥俺の独断と偏見かもしれないね。
なんか脱線しまくったが、つまり俺が言いたいことは、男は親父の顔をどうこう言わない。よくも悪くも、だ。なぜって、見苦しいから。
人間顔じゃない。
ニコニコ笑っているシュナイエスがこころの中ではそんなことを考えていることは、誰も知れないだろう。
さっきまで「そんなこと」を考えていたからだろうか‥
「ハヅキさんって、お父さん似? お母さん似? 」
ホントに唐突にそんなことが気になった。この人類とかけ離れたところにいる様な「そうはいない」美人の両親はどんな顔で、彼女は両親のうちどちらに似ているのだろうか? どちらかに似ているのだとしたら、その一族はとんでもない美形一族なのだろうか? と。
自然に全員の視線がハヅキに集まる。
‥そういえば、それ、俺(私)もちょっと気になるかも、って奴だ。
「ん? 」
ハヅキが一瞬首を傾げる。
「え? どちらとも似てませんかね。いや‥どちらとも似ている? う~ん。三人で並んだら「家族だね」って感じはしますが、単品で見たら、どっちにも似てない気もしますね」
ヘラっと苦笑いしたのはハヅキ。ふむ。ここで「どっちとも似てません。言うならば両親のいいとこどり? 」とか言われたらドン引きするゼ~って思ったよ。うん。なんか安心。って思ったのはマルクス。シュナイエスは「そっか~」って別にそれ程興味ないって感じ。この中で唯一ハヅキの両親と会ったことがあるオズワルドだけは「確かにそういう感じかも? 」ってちょっと納得してる。
そんな中、ナガツキだけが
「私もまさに、それ! 」
ってやたらハイテンションで言った。
そのいつもと違うテンションに周りの視線が今度はナガツキに集まる。
「そんなに? (テンション上げること?? )」
怪訝そうに首を傾げるマルクス。シュナイエスも頷き、
「別にそんなに驚くようなことでもないでしょう。俺だってシュナイエスだって、オズワルドだって、三人それぞれで見たら違う顔してるけど、三人で並んでたらやっぱり兄弟だなって顔だ。‥そういうもんじゃない? 」
ってあっさり。でも、オズワルドだけは苦笑い。オズワルドは「そんなこと思ってんの兄貴たちだけだ‥世間はそうは思ってないぞ」って思ってるんだ。「面倒くさいから口には出さないけどさ~」ってこころの中で苦笑い。この兄たちは、そんなこと口にしようもんなら「は!? 誰。誰につまんないこと言われた!? 社会的に抹消してやるから名前言いな。武力行使は出来ないが俺たちにだってしようがあるんだぜ~」っていいかねない。
マルクスは権力で、
‥シュナイエスは魔力で実力行使。シュナイエスの方がえげつなそう。
しかし、何だろ。この母親のハイテンション。
「私も、まさにそれ」?
そして、ふと母方の祖父母の顔を思い出して、もしかして母は周りに散々「家族の誰にも似てないね」って言われてきたのだろうか? ってシュナイエスは思い当たった。
‥有り得る。それか、直接には言われなかったかもしれないが、そう思わせる様な態度を周りの人たちに散々とられてきたのだろう。
それは、他人が思うよりも本人にとって嫌なことだった‥ってことかも知れない。
その一見「なんでもないこと」は、ナガツキのこころに密かにわだかまりとなって残っていたのだろう。
その答えをさっき、あっさりとハヅキが出した。
ちょっとしたことだ。だけど、ナガツキにしてみたら、今までの‥幼少期からのわだかまりを一瞬で溶かされた思いがしたのだろう。
だから、嬉しかった。(あんなにテンション上がるほどだ)
本人だけの問題で、それそのものは他人にはちょっとわからない感覚だ。だけど、だれしも「そういうこと」はあるだろうし、「その感覚」は理解できるだろう。
三人並んで、同んなじ笑顔で笑う。そしたら、「やっぱり家族だね~」ってそういう風に見える。‥やっと。
同じ笑顔なのは、同じ様に暮らして来たからだ。同じ家で同じものを食べて同じようなことで笑って、悩んで。そうして、その結果、同じような顔で笑うようになった。
歴史だ。
この同じ笑顔は、ナガツキの、ハヅキの‥家族の記憶だ。
よく、一緒に暮らしていたら夫婦が似て来るっていうのもそれと同じ原理だろう。
「遺伝だから似てる。それだけじゃなくて、一緒に住むことで家族が似て来る。「似てる」は仲がいいって証拠ってことだよね。つまり」
ふふってシュナイエスが笑う。
「そうね。ホントそれ」
にっこりとナガツキも微笑む。ホントに幸せそうな顔で。
もとは家族じゃなかった男女が出会って、家族になる。やがて、子供が産まれて、家族の形が変わる。血のつながってない男女と、男女と半分ずつ血のつながった子供の家族。血が繋がってるから家族なんじゃなくて、「家族だ」ってそれぞれが思うから家族になる。(じゃないと、いつまでたっても父親と母親は他人のままだ)
シンプルなことなんだな。
シンプルだけど、簡単なことじゃない。
やがてオズワルドとハヅキさんも結婚して家族になるのだろう。
家族になるのって、シンプルだけど、簡単なことじゃないけど、自然に‥。
「深い。うん、深い。シンプルだけど、深い。単純だけど、難しい」
うんうん、といやに納得した感じでナガツキが頷く。
頷いて、チラリと空を見る。
これでいいですか?
誰に言うでもなく、空に話し掛ける。心の中で。
そして、すぐにそのことはナガツキの心から消えていくのだった。
0
あなたにおすすめの小説
十八歳で必ず死ぬ令嬢ですが、今日もまた目を覚ましました【完結】
藤原遊
恋愛
十八歳で、私はいつも死ぬ。
そしてなぜか、また目を覚ましてしまう。
記憶を抱えたまま、幼い頃に――。
どれほど愛されても、どれほど誰かを愛しても、
結末は変わらない。
何度生きても、十八歳のその日が、私の最後になる。
それでも私は今日も微笑む。
過去を知るのは、私だけ。
もう一度、大切な人たちと過ごすために。
もう一度、恋をするために。
「どうせ死ぬのなら、あなたにまた、恋をしたいの」
十一度目の人生。
これは、記憶を繰り返す令嬢が紡ぐ、優しくて、少しだけ残酷な物語。
【完結】ここって天国?いいえBLの世界に転生しました
三園 七詩
恋愛
麻衣子はBL大好きの腐りかけのオタク、ある日道路を渡っていた綺麗な猫が車に引かれそうになっているのを助けるために命を落とした。
助けたその猫はなんと神様で麻衣子を望む異世界へと転生してくれると言う…チートでも溺愛でも悪役令嬢でも望むままに…しかし麻衣子にはどれもピンと来ない…どうせならBLの世界でじっくりと生でそれを拝みたい…
神様はそんな麻衣子の願いを叶えてBLの世界へと転生させてくれた!
しかもその世界は生前、麻衣子が買ったばかりのゲームの世界にそっくりだった!
攻略対象の兄と弟を持ち、王子の婚約者のマリーとして生まれ変わった。
ゲームの世界なら王子と兄、弟やヒロイン(男)がイチャイチャするはずなのになんかおかしい…
知らず知らずのうちに攻略対象達を虜にしていくマリーだがこの世界はBLと疑わないマリーはそんな思いは露知らず…
注)BLとありますが、BL展開はほぼありません。
没落令嬢の子育て記。12世紀ドイツに似た異世界で、拾った子犬がイケメン精霊犬になりまして
ねこまんまる
恋愛
私が転生してしまったのは、ユリウス歴1150年。
赤髭王フリードリヒ1世が在位する、12世紀中世ドイツに酷似した異世界だった。
この世界の中欧は、神聖ローマ帝国の皇帝権とローマ教皇の宗教的権威が激しくぶつかり合う、戦乱のただなかにある。
ボヘミア王国(※現在のチェコあたり)の辺境で、小領主に仕える下級騎士の娘として静かに生きていた16歳の私だったが――
父は皇帝派と教皇派の争いに巻き込まれ、帰らぬ人となった。
こうして私は、領地も保護者も失った「居場所のない没落令嬢」へと転落する。
行き場をなくした私は、帝国の北東の果て、
森と丘陵が連なる寒冷地帯――シレジア地方へ向かい、ボヘミア系とドイツ系移民が入り混じる貧しい開拓村で、新しい生活をはじめることになった。
ところが、村へ到着したその日。
道ばたに置かれた木箱の中で震えていた、四匹の子犬と出会う。
「……かわいいけど、どうしよう。
私だって、明日をどう生きるかも分からないのに……」
没落令嬢の私には、金も身分もない。
けれど放ってはおけず、子犬たちを抱き上げた。
飢えた体を温め、必死に育てているうちに――
ある朝、彼らは犬耳の生えた少年たちに変わっていた。
どうやら彼らは、この異世界に古くから伝わる
“森の精霊犬”の子どもだったらしい。
無邪気で、人懐っこくて、やたらと私に甘えてくる。
それなのに――。
反抗期がまったく来ない。
命がけで守った“子犬たち”は、すくすく育ち、戦闘能力が高い、耳もふわふわなイケメンに成長した。
そして、ますます慕い方が激しくなるばかり。
……いや、育ての親としてはうれしいけど、そろそろ距離感というものを覚えてください。
(※年代、国、地名、物などは史実どうりですが、登場人物は実在してません。
魔法やモンスターなど、史実にはないものもあります)
セーブポイントに設定された幸薄令嬢は、英雄騎士様にいつの間にか執着されています。
待鳥園子
恋愛
オブライエン侯爵令嬢レティシアは城中にある洋服箪笥の中で、悲しみに暮れて隠れるように泣いていた。
箪笥の扉をいきなり開けたのは、冒険者のパーティの三人。彼らはレティシアが自分たちの『セーブポイント』に設定されているため、自分たちがSSランクへ昇級するまでは夜に一度会いに行きたいと頼む。
落ち込むしかない状況の気晴らしにと、戸惑いながらも彼らの要望を受け入れることにしたレティシアは、やがて三人の中の一人で心優しい聖騎士イーサンに惹かれるようになる。
侯爵家の血を繋ぐためには冒険者の彼とは結婚出来ないために遠ざけて諦めようとすると、イーサンはレティシアへの執着心を剥き出しにするようになって!?
幼い頃から幸が薄い人生を歩んできた貴族令嬢が、スパダリ過ぎる聖騎士に溺愛されて幸せになる話。
※完結まで毎日投稿です。
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
異世界で悪役令嬢として生きる事になったけど、前世の記憶を持ったまま、自分らしく過ごして良いらしい
千晶もーこ
恋愛
あの世に行ったら、番人とうずくまる少女に出会った。少女は辛い人生を歩んできて、魂が疲弊していた。それを知った番人は私に言った。
「あの子が繰り返している人生を、あなたの人生に変えてください。」
「………はぁああああ?辛そうな人生と分かってて生きろと?それも、繰り返すかもしれないのに?」
でも、お願いされたら断れない性分の私…。
異世界で自分が悪役令嬢だと知らずに過ごす私と、それによって変わっていく周りの人達の物語。そして、その物語の後の話。
※この話は、小説家になろう様へも掲載しています
悪役令嬢だけど、私としては推しが見れたら十分なんですが?
榎夜
恋愛
私は『花の王子様』という乙女ゲームに転生した
しかも、悪役令嬢に。
いや、私の推しってさ、隠しキャラなのよね。
だから勝手にイチャついてて欲しいんだけど......
※題名変えました。なんか話と合ってないよねってずっと思ってて
【完結】恋につける薬は、なし
ちよのまつこ
恋愛
異世界の田舎の村に転移して五年、十八歳のエマは王都へ行くことに。
着いた王都は春の大祭前、庶民も参加できる城の催しでの出来事がきっかけで出会った青年貴族にエマはいきなり嫌悪を向けられ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる